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第19話 決別
しおりを挟む俺はリリーナの亡骸を、里から離れた、見渡しのいい丘の上に埋めてあげた。
一丁前に、木の棒を突っ立てたりして、お墓らしく。
本当は、花でも飾ってあげたかったけど、もうこの森には、枯れた木々しかない。
「だったらせめて、な…」
俺はポケットから、現実にいた頃に使っていた、スマホを取り出した。
電源はまだ入る。データも残ってる。だが、電波はない。つまり、全く使い物にならないということだ。
ただ、それでも、何もないよりマシだと思い、スマホを、リリーナのお墓に置いていくことにした。
雨が降っても、一応、防水だし、大丈夫だよな?
「リリーナ、もしも…もしもだぞ?なんかの奇跡でさ、俺みたいに生き返って、そして、スマホの電源が生きてて、電波があって、連絡できるんだったら、俺を、呼んでくれって…ダメか、それじゃあ俺もスマホ持ってないと駄目じゃん!?」
やっぱりアホだ、俺は。
「でも、奇跡って、そういうもんだろ?だったら、願うことぐらいだったら、別にいいよな…神に祈ることだけは、絶対に嫌だけど」
俺はブツブツと独り言を呟き続けた。
そして、一頻(ひとしき)り喋って、いよいよ話す事もなくなった頃、この森を旅立つことにした。
丘の上からは、やっぱり枯れた木々しか見えない。どこまで続いているのか、分からないぐらいには永遠と広がっている。
でも、終わりがないわけじゃない筈だ。
出口はある。必ず。分かんないけど…
でも、出口のない迷路とかあったら嫌だろ?
迷路は、出口があるからこそ、進もうって思えるんだ。だから、達成感も生まれるんだ。
だったら、出口は必ずあると、そう願うしかあるまい。
その先に、魔王がいるというのであれば、必然的に。
俺は一歩、また一歩、見知らぬ大地へ向け、歩き出した。
振り返ったりしない。過去は、ここに置いていく。
でも記憶だけはーーー俺はリリーナの事も忘れてないし、タケヒコも、それにヒナコだって、ちゃんと俺の記憶中にはいるから、それだけ、連れていくことにしよう。
あいつらが記憶の中にいる限り、俺は、決して一人じゃない。
「さぁ、行こう。俺!いや、スバル!」
俺の異世界冒険は、まだまだ先が長い。
おわり。
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