上 下
18 / 19

第19話 決別

しおりを挟む

 俺はリリーナの亡骸を、里から離れた、見渡しのいい丘の上に埋めてあげた。
 一丁前に、木の棒を突っ立てたりして、お墓らしく。
 
 本当は、花でも飾ってあげたかったけど、もうこの森には、枯れた木々しかない。

「だったらせめて、な…」

 俺はポケットから、現実にいた頃に使っていた、スマホを取り出した。
 電源はまだ入る。データも残ってる。だが、電波はない。つまり、全く使い物にならないということだ。

 ただ、それでも、何もないよりマシだと思い、スマホを、リリーナのお墓に置いていくことにした。

 雨が降っても、一応、防水だし、大丈夫だよな?

「リリーナ、もしも…もしもだぞ?なんかの奇跡でさ、俺みたいに生き返って、そして、スマホの電源が生きてて、電波があって、連絡できるんだったら、俺を、呼んでくれって…ダメか、それじゃあ俺もスマホ持ってないと駄目じゃん!?」

 やっぱりアホだ、俺は。

「でも、奇跡って、そういうもんだろ?だったら、願うことぐらいだったら、別にいいよな…神に祈ることだけは、絶対に嫌だけど」

 俺はブツブツと独り言を呟き続けた。
 そして、一頻(ひとしき)り喋って、いよいよ話す事もなくなった頃、この森を旅立つことにした。

 丘の上からは、やっぱり枯れた木々しか見えない。どこまで続いているのか、分からないぐらいには永遠と広がっている。

 でも、終わりがないわけじゃない筈だ。
 出口はある。必ず。分かんないけど…

 でも、出口のない迷路とかあったら嫌だろ?
 迷路は、出口があるからこそ、進もうって思えるんだ。だから、達成感も生まれるんだ。

 だったら、出口は必ずあると、そう願うしかあるまい。
 その先に、魔王がいるというのであれば、必然的に。

 俺は一歩、また一歩、見知らぬ大地へ向け、歩き出した。

 振り返ったりしない。過去は、ここに置いていく。

 でも記憶だけはーーー俺はリリーナの事も忘れてないし、タケヒコも、それにヒナコだって、ちゃんと俺の記憶中にはいるから、それだけ、連れていくことにしよう。

 あいつらが記憶の中にいる限り、俺は、決して一人じゃない。

「さぁ、行こう。俺!いや、スバル!」

 俺の異世界冒険は、まだまだ先が長い。


 おわり。

しおりを挟む

処理中です...