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第18話 顛末
しおりを挟むリリーナ、俺はそんな名前のエルフを、知っている。
知っているが、俺の知っているリリーナは、こんなに老けてなかんかいなかった。
そんな時だ。俺は既視感に、見舞われていた。
既視感の中に、老けたタケヒコの姿はある。
あの時、老けたタケヒコを、俺は魔物と決めつけ、殺した。老けているだけで、「お前はタケヒコじゃない」と決めつけて、殺したんだ。
じゃあ、このリリーナはどうだ?
確かに老けているが、今目の前にいるリリーナは、魔物なのか?
いや、そうじゃないだろう。
多分、リリーナが、老けたわけじゃないんだ。
それは朽ちた森と、寂れた森が証明している。
時間の流れが、以前来た時よりも、かなり進んでいるからに違いないんだ。
俺はリリーナに、尋ねてみた。
「リリーナ、俺が最後に、お前と会ったのは…いつだ?」
「……最後に会ったのは、スバル様が殺人鬼の男を倒しに行くと、アルティメットソードを持って、出て行ったきりでしたので…もう、あれから300年以上は、過ぎたでしょうか?」
「300年!?」
「はい。私達はてっきり、スバル様は死んだものだと、そう思っていました。エルフ族の災厄に、勇敢にも立ち向かい、救ってくれたのだと。あれから、エルフ族を襲っていた者は、現れていません。つまり、スバル様が、見事にも奴を倒し、何も告げずに、去っていったものかと…」
リリーナは、ふぅ、と息を吐いた。
「あれ以来、スバル様は、このエルフ族の里に舞い降りた、伝説の冒険者として、語り継がれていました。今では、見て通り、私しか生き残っていませんが…」
「そ、そうだったのか…」
どうやら俺は、300年以上もこの異世界を離れていた事に、なっているらしい。
「でも、それにしたって、この有り様は何だよ…何で、リリーナしかいないんだよ…」
「…話せば、長くなりますが…スバル様が去ったすぐ後、一体のスライムが、次々に里の者を食らっていったのです」
「ス、スライム!?」
もしかして、ヒナコの事か!?
「スライムは里の者の約半数を、喰らい尽くし、そしてどこかへと去っていきました。あれから、里の暮らしぶりは一転しました。何故か、森の木々が枯れ始め、食料は枯渇、また伝染病が蔓延。長寿であるエルフ族とて、その波に逆らうことは出来ず…気付けば、私一人となっていました」
167年です、とリリーナは続ける。
「私が一人になって、167年の月日が流れました。もう、孤独には慣れました」
「……リ、リリーナ…お前、そんな長い時間をここで…」
理解が、追いつかない。
「何でだリリーナ…お前一人なら、里を出て行く、選択肢もあった筈だ!」
そう叫んだ俺を見て、リリーナが、ふふ、と笑った。
「そんなこと、できませんよ。だって、この場所は、私の全て。それに…」
「…それに?」
「約束しましたよね、スバル様?あの時、スバル様はちゃんと言いました。『戻ってくる』と、そんな事を。だから私は、スバル様が勝手に去っていったとは、どうしても思えませんでした。里の者は、信じてくれませんでしたが、私はスバル様の身に、何かあって、戻ってこれない事情ができたものだと、そう思っていました。だから、いつか必ず、スバル様が再び、この里に戻ってくるとも、そうも思っていました」
リリーナの息が、細くなっていくのが、分かった。
「リ、リリーナ!!」
「あは、はは…私も、もう限界のようです。でも、良かった…最後に、スバル様に会えて、スバル様が…ちゃんと、私との約束を覚えていてくれて…本当に…」
リリーナが、死んでいく。
「ま、待てよリリーナ!?おい、死ぬな!!俺はまだ、お前に会ったばかりじゃないか!?まだ、LINEの連絡先だって交換してない!!リリーナ、俺のいた世界ではな、スマホってのがあって、これでいつでも、どこにいたって、連絡を取り合えるんだ!!だから、これから一杯連絡し合って、仲良くなって、デートに行って、付き合って、それで…これからたくさん、楽しいごとをぉぉ…いぐなぁああああ!!リリーナぁあああああ!!」
「………」
リリーナは、既に、死んでいた。
「うわぁああああああああああああああああああ!!!」
俺は、涙が、止まらなかった。
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