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第1章 『俺この異世界ベルハイムで、第二の人生を送る!』-始まりの異世界とジョーカー
10話 小さな小屋で
しおりを挟む改めまして、俺の名前は【たけし】。
なんで【たけし】かは自分でもよく分からないけど、取り敢えず頭にまず一番初めに浮かんだ名前を付けてみることにした。別に仮の名前だから何だっていいし。
とにかく今は【たけし(仮)】でいいとして、ちゃんとした名前に関してはもう少し身の事情が落ち着いたらゆっくりと考えるとしよう。
そう考えると…やべぇ、どんな名前にしような今から楽しみで仕方がねぇよ…異世界仕様の名前…アルスとか、ロイとか、アルフォンスとか…いかん、思い付く限りが止まらねぇ…へへへ…
「どうした、たけし?」
アルテマは俺の顔を覗いて首を傾げる。
あーいかんいかん、今相当ニヤついてるは俺。
今は今でちゃんとしないと…
「何でもない、すまない」
俺はアルテマに連られて歩く。なんやかんやあって、俺はアルテマに「ついてきて」と言われ、即了承。断る理由もなし、寧ろウェルカム。まるで忠犬ハチ公のようにはその後に続いた。
正直言うと、その足取りを追う最中何度もアルテマの体に触れてしまおうか迷った。そうさえすればスキルドレインの発動条件はクリアできる。
ただ迷って迷って、俺はやはり確実性に欠けるとは思い留まった。
『まだだ…まだその時じゃない。気が熟す瞬間は必ずやってくる…』
そう思っていた矢先、アルテマの足が止まった。
そこは森の中を少し進んだ先にある小さな小屋の前。外観は古めかしいめの木造の建物で、建物…って言うよりはベニヤ板をそんまま組み立てたような、台風が来たら速攻で潰れそうな、そんな建物。
「ここだ。入ろう」
「…ここは?」
「僕の家…というよりはまぁ離れみたいなものかな?」
アルテマはそのまま俺を小屋の中へと通してくれた。
小屋の中は外観から予想できるようにやはりといって狭い。簡素さでいったら俺の住んでいる主屋よりも一段と上をいってやがる。
ただ俺の住んでいる主屋と違って、小屋の中央には囲炉裏?のようなものがあること。そこで食事を取っているだろうことが見て伺えた。
アルテマは囲炉裏の前に胡座をかいて座ると、扉前で棒立ちになっていた俺に向け手招きをした。
「簡単な物しか作れないが、腹の足しにはなると思う」
そう言って、アルテマはそそくさと飯の支度に取り掛かり出した。
といっても、既に飯の土台となる鍋の中身は完成されているようで、あとは火を焚いてかき混ぜるだけ、といった具合の説明を受ける。
別にお腹は空いてないが、まいっか。異世界の料理ってのも少し気になるし。
「朝の残り物なんだ。味は悪くないよ…多分?」
自信があるんだかないんだか、アルテマはどっちにも取れる言葉を口にして囲炉裏に向けて手を翳した。
手を翳して、小さい声で何かを囁く。
その何かをうまくは聞き取れなかったが、そのすぐ後、青年の手から飛び出した石ころ大の火の玉を見て、俺の頭にピンッと刺激が走った。
あれ、もしかしてそれはーーー
「それは…魔法か?」
「そうそう…って、君は魔法を知らないのか?」
「あ、ああ。見るのはこれで初めてかな」
アニメとかゲームじゃよく見たけどな。実物はもちろん初めてだ。
「…そんな人間がまだこの世の中にいたなんて不思議な気分だよ…あ、これは別に馬鹿にしてるとかじゃなくてだよ?魔法は人々の暮らしになくてはならない程に根付いてるものだからさ、でもそうか…魔法を知らない人間もまだこの世界にいたのか…」
余程の驚きだったのだろうか、アルテマは少し考え込むようには下に俯いていた。
ただそれは数秒にして、直ぐさま顔を上げると、アルテマは囲炉裏に向けて火の玉を放り投げた。
ボウッ、と火の玉は一瞬の音を立てて囲炉裏に落ちて、絶妙な火加減の元鍋を炙り始める。
成る程、これが魔法か。
まさか調理に使われる程に手頃なものだとは些か意外であった。
もっとこう、戦闘時にカッコよく発動されるものだとばかり思っていたが。
いやにしてもこれは凄い、どうやって使ったんだ?
結構普通そうにしてたけど…
いや待てよ、何か囁いてたな、確か…
もしかしてさっきのは、魔法提唱?
だったらあれだ、超かっけぇなおい…
「…ちなみに聞くけど、今使った魔法は皆んな使えたりするのかな?」
俺も使いたい、そんな気持ちを一心に聞いてみた。
「うーん、君の言う皆んながどれくらいの規模を指しているのか分からないけれど、一般的な家庭でも普通に使われてるぐらい軽い魔法だからね、大体の者は使えるんじゃないのかな?多分」
そうか、そうか、つまり俺にも使えるかもしれないというわけだな。
よし、何かやる気出てきた。
「ただね、これは飽くまでも低位の魔法に過ぎないから。もっと高位の魔法になってくると行使できるものは一段と限られてくる。それこそ魔導の道にどっぷりと身を染めなければ扱うこと不可能だと思うよ」
高位?
つまりさっきの魔法の強い版か?
「じゃあさっきの魔法が低位だとして、高位の魔法はどれくらいのものになるんだ?」
「…うーん、それも一概に”こうだ!”て言えないんだ。そもそも魔法というものはその術者によってその度合いが大きく変動するものだから…例えば僕と君がさっきと同じ魔法『スモールフレイム』を発動したとして、もちろん僕の方が多少なりとは上手く扱えるわけだろ?だって今の君はそもそも魔法というものの概念すら理解してわけないだし、そうなった場合、例え低位の魔法だとしても術者によってはその度合いが違うわけ」
アルテマを淡々と鍋をかき混ぜながらには、淡々とそう言って退けた。
また俺の方に顔を向けては不思議そうな口ぶりに尋ねる。
「何、魔法に興味があるの?」
もちろんあるに決まっている。
魔法にしろスキルにしろ、これからこのベルハイムで生きてく中でかなり重要な要素だと言えるからな。
知っておいて損はないーーーどころの話ではない。
知っておかなければならないのだ。それは今日を生きる為にも於いても、今後の為にも、俺は成長しなければならないのだから。
「興味がある…というか何も知らないから、知って置きたいんだ、色々と…」
知らなければ俺は死ぬ。
死んだら、死ぬよりも恐ろしい世界が俺を待っている。
嫌だ、そんなの絶対に嫌だ。
死にたくねぇ…死にたくねぇ死にたくねぇ…
「おい、たけし」
「…ん?」
「…大丈夫か、凄い汗だよ?」
「あ、ああ…わりぃ。何ともないから…平気平気」
やべぇ、今すげー嫌な想像してた。
切り替えろ、俺。
パチパチと両手を広げて頬を叩いた。
気合い入れろ、と自分に言い聞かせて。
「たけし、取り敢えず飯にしよう。少し疲れてんだよ…うん」
アルテマはそう言って、鍋の中身を小さなお椀によそってくれた。
それを受け取り、見ると、それは生前で言うところの豚汁(?)に近い見た目をしていた。
美味しそうな匂いが俺の鼻を刺激する。
また、トロトロに煮込まれた具に濃厚な脂の乗った汁が目を虜にしていた。
これは絶対に美味いに違いない。違いないが、それでも食欲は全くといって沸かず、
「ーーーいただきます」
汁を口に通して、俺は衝撃を受けた。
『味が…何も感じない!?』
お椀が空になるまで、俺が味覚を感じることはなかった。
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