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第2章 ラクスマリア城とラクシャータ王女の剣
11話 幸せな奴
しおりを挟むグイン曰く、今の俺に残された汚名返上の方法はただの一つだけ。
グイン曰く、その為に俺にできることとは…
「…え、俺が犯人を捕まえるの!?」
「まぁそれぐらいしか君の名誉を取り戻す手段はないからね」
え、えー…でも、相手は人を殺したりする残虐な奴で…
犯行の痕跡さえ残さないくらい狡猾な奴で…
うーん…………怖いな。
『…なんちゃって!むしろ全く怖くない件について…てかどんな残虐な奴なのか一度この目で見てみたい気もする』
生前に暮らしていた日本という国はとにかく平和で、治安は頗る良かったと言える。今いる異世界ベルハイムとは大違いだった。
この世界では街中を剣を持って歩こうが誰も何も思わないだろうし、てかそれが普通だし、そういう世界だし、うん。
だからなのだろうか、俺はちょっとワクワクしていた。
これはある種、平穏な日常の中に過激なスリルを求めるというやつで、それは実際にその殺人鬼を目にしていないから言えるのだろうし…でも何だろうか、この気持ちは?ちょっとだけ、楽しみだな…
『それにしても殺人鬼か…俺も人のスキルを奪ったり破壊したりと最低最悪な奴だけど、そいつもよっぽどのド屑なんだろうな…』
俺は今後、デスゲームのルールにのっとって否応無しに殺人行為に手を染めなければならないわけだが、別に好きで参加したわけじゃないし、それは仕方なく、できるならそんなことしたくないのが現状で、でも…この異世界には殺人を生業として生きている奴がいるわけなんだよな…
もちろん生前だって殺し屋と呼ばれる裏社会の人間達が沢山いただろうし、またどこかの遠い国では苛烈な戦争によって日々何千何万という人が殺し殺されていたのだろうが、それは全て俺の知らないところで巻き起こっていたことーーつまりは小説や映画といった創作物と何ら変わりない非日常だった。
でも今の俺とはそんな創作物だと敬遠したものにかなり近い位置にいて、今後の展開によってそんな非日常が密になって関わってくる事案なわけで…
『そういう奴等ってのは普段どんな気持ちで人の命を奪って生きているのだろうか?』
知りたくもあるし、知りたくもないような…上手く表現出来ないけど、うん。
「たけし、君には酷な任務だとは思う。それでも…」
グインは俺の事を案じているようには目配せた。
その様子は宛ら恋人の事を心配する乙女の如くって…うわ、何勘違いしてんの俺…きも。
「ま、でも確かにそれしかないのなら仕方ないよな…むしろ汚名挽回のチャンスがあるだけマシ、俺はそう思っているよ」
俺は笑顔でそう答えた。
うん、精一杯の強がりってやつ。
本音言うとどうでも良かった。
でも、グインの反応とは実に面白いもので、
「た、たけし…君という男は…」
と、グインは涙ぐむようには手で目元を押さえていた。
え、何この展開?勝手には同情されちゃってるってやつ?
『もしそうだとしたら、グイン・アルマーニという人間は本当に優しい奴なんだろうな…』
会って初めはキツイ人間なのかなー、とか思ったりもしたけど、言葉を交わして、接して、知れば知る程に、彼女の優しさをシミジミと感じるよ。
もちろんその優しさとは俺ではなく、アルテマに向けられたものだろうけど…
『ほんと、幸せな奴だったんだな…アルテマは』
グイン・アルマーニという理解者がいて、ラクシャータ・ラクスマリアという自身の才能を認めてくれる主人がいて、アルテマ自身も彼等の好意に驕ることはせず、ちゃんとした努力と成果で彼等の気持ちに報いようとは頑張って生きていて…生きていける居場所があって…
『あー、もうやだやだ…これ以上考えるはよそう…』
これ以上考えたら、俺は俺を嫌いになりそうだ。
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