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第4章 騒乱と死闘
4話 敵の影
しおりを挟むそうだ、結局はこの問題は俺の問題。
誰かに頼ろうだなんて虫が良すぎるわけだ。
ましてや相手が人間でもない使い魔とあれば当然のこと、人間の事情なんて彼女には関係ない。
『これまでたくさんの裏切りを重ねておいて、そのくせいざとなれば誰かを頼ろうとするだなんてな…はは、俺は本当に大馬鹿野郎だ』
大体だ、これぐらい一人で乗り越えることが出来ないでどうする?
これから俺が相手にするのはラクスマリア王国を破壊しようとする奴らだ。それがどれ程な規模かは定かではないが、少なくともこのスラム街にいる人数分は数に入れていい。俺が今日見た中でも30数名、実際はもっといるだろうから…やばい、結構な数じゃねーか、おい。
「どうした、何もしないのか?」
バホメット催促するようには言って、大きな欠伸をかました。それは言動一切には「早くしろ」という暗喩が込められているのだろう。
「…分かってるっての。やりゃあいいんだろ」
あー、もういいや!
何をどう考えたって事態が好転するわけでもないし、相手がどんな奴だろうが潰してしまえばそれで結果オーライだろうに。
俺は意を決して、階段の影から姿を出した。
出して、一歩ずつは慎重に階段を登っていった。
バホメットは未だ階段の影に身を潜めており、全くといって動くつもりはないようだ。その様子は飽くまでも傍観者を貫こうとするバホメットの心情を表している。
『いいぜ、よく見てろよバホメット…俺はな、一人でも全然やれるんだからな』
そうして俺はゆったりとしたペースではあるが徐々に階段の段差を詰めていった。
ただ、そろそろ階段の段差が終わろうとしている場面であっても、二階の物陰に潜む何者かに動きはなかった。
エリアドロップで判明した限りじゃ相手は子供か、はたまたそれ程に体の小さな大人か。
階段を登り終えて、俺は足をピタリと止めた。ある程度距離を縮まって、物陰に潜む何者かとの距離が3メートル程と言ったところで、俺は静かに口を開いた。
「おい、そこに居るのは分かってんだ…出てこい」
威嚇するような唸るようにはそう言った俺、腰を落として中腰の姿勢へ移ると、腰に下げた剣の鍔に指をかけた。
いつでも抜刀できる状態では、今か今かと物陰に潜む何者かの動きを待つ。反応はない、もしかしたら俺の様子を伺っているのだろうか?
『…成る程、シカト決め込むってわけな』
そんな状態が一秒、二秒、三秒と過ぎて…そのまま十秒程過ぎた辺りで、流石に俺も痺れを切らした。
来ないってんなら別にそれでもいい。こっちから仕掛ければいいっていう、ただそれだけの話だよなぁ?
俺は鞘から剣をスルスルと脱ぎだすと、中段の姿勢のままには剣を構えた。
構えて、脳内にイメージを沸かせる。
沸かせて、[スキル]の発動を試みた。
---------------------------
【通常スキル】
・火剣
[概要]
剣に火を纏わせる剣技専用スキル。その火率はレベルによって比例する。
----------------------------
レベルは2。
[スキル]火剣を発動した次の瞬間にも、剣に切っ先から、メラメラと、刀身を覆うようには火炎が渦巻き始めていた。
渦巻いた火炎はそのまま剣の鍔上まで到達して、火剣は完成する。
薄暗い室内を照らす様には燃え盛り、激しく照りつける熱射を浴びているいるようには熱い。扱い次第では自身にまで被害が及びそうなその火剣を、俺は物陰に向けた。
相手の正体は分からない。
分からないが、別に何者であろうが関係ねぇ。
物陰に隠れるってんなら、その物陰ごと叩き切ればいいってだけの話だろ?
「火達磨になった後で恨むなよ?」
一応忠告はしておいた。
切った後でゴチャゴチャ言われるのも嫌だしな、うん。
そうして俺は火剣を物陰へと振りかぶるべく、剣を大きく振り翳した。
翳して、意識を集中。
今はただ、敵を葬ることだけを考えればいい。
考えればいい、筈なのだがーー
『…これでもし、このまま火剣でブッタ斬ってしまえば、また俺は殺人を犯してしまうってことか…』
そんな迷いが、一瞬だけ脳裏をチラついた。
ただそれは一瞬の迷いにして、俺は次の瞬間にも殺意を固く強固なものへと昇華。
揺るぎない殺意を持って、敵を葬る。
そして、俺は心を鬼にする。
今だ!
そう思って、剣を叩き込もうとした、その時だった。
「ま、待って!!!」
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