え、わたしが魔王ですか?〜無能だからと追放された創造魔法士だけど、魔族のみんなと楽しく国を創っていたら最強の魔王に覚醒していた!

泥水すする

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楽園増強編

マドルフの初任務

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「「「ひゅーひゅー! おーいマドルフちゃん、今日は真っ赤なパンツなんか履いてどこへお出掛けですかぁ⁉︎」」」

「み、見るなぁこのぉッ!」

 遥か地上から、魔族たちがあたしのスカートの中を覗き込もうとしてくる。本当、魔族はエッチな奴ばかりだ。

「全く、これだから魔族は嫌いなのだ、全く……」
「ふっ、なんだか楽しそうだな、マドルフ」
「はぁ⁉︎ べ、別に、楽しくなんかない! そんなこと言いから、もっと急いで飛べ」
 
 今現在、あたしは四魔皇グレゴリウスの一人── 邪龍ゼペス・ハーゼットの背中に跨り、ディスガイア周辺にある小島へと向かっていた。

 ちなみに普段は人型をしているゼペスだが、空を飛ぶ時は竜形態となる。

 『ディスガイア要塞化計画』に於けるあたしの初任務──それは、近隣の島に建造された基地の鹵獲ろかく任務であった。

 冒険者たちが築いた基地は、全部で8つ。
 この基地がある限り、いくら防御設備を整えようが次から次へと攻めてこられることだろう。だからまず、ここを叩く必要があった。

 また、この基地を鹵獲してしまえば一石二鳥。魔族たちの侵攻に備え、どの基地も巨額な資金を投じて建造された基地だからな。

 そして本日、やっと半分の制圧が完了するといったところだ。
 
「それにしても、やけに基地が多い」
「本土からディスガイアまでは結構離れているからな。あんたたちを本気で攻め落とすつもりだったんだ、中継基地くらい作って当然だ。

 ディスガイアの情報が知れ渡ったのは、今から2年前。冒険者たちと勇者たちが総力を挙げてのぞんだ魔族殲滅作戦にて、魔王リリスが全面降伏を表明した時にもだ。遙か東の島に魔王軍の精鋭たちはいると、魔王自らが打ち明けたとされている。

「直ぐにディスガイアへ攻め込めなかったのは、一重に距離の問題でもある」
「なるほど、な……だから中継基地を設け、各所に大規模な転移魔法陣テレポートゲートを展開した、と」
「その通り。でもまさか、大魔法士たちが命を削って展開した転移魔法陣テレポートゲートの破壊に、このあたしが加担するなるなんてな……」

 もしもこの情報が本土に知れ渡れば、あたしはもう二度と冒険者には戻れないだろう。魔族側に寝返ったとして、人々に蔑まれるに違いない。

 それこそ、ビルマ・マルクレイドのように──

「……リリス様は、」
「ん、なんだ」
「いや、リリス様は、本当に我々を売ったのだろうかと、そう思って……な」
「ああ、売った。おまけに、あたしを含めた選ばれた冒険者や勇者たちに、あんたたちの討ち滅ぼすの刻印まで教えてくれた」

 と、俺は手の甲に刻まれた【魔族殺しの紋章ディスペリア】をゼペスへと見せる。

「ビルマの邪魔さえ入らなければ、あたしはあのザラト・リッチすら討ち取っていただろうな。そのくらい、強い刻印だ。リリスは、本気であんたたちを殺しにかかっている」
「そう、か……」
「どうした。リリスに裏切られたことが、そんなにショックか?」
「ああ、そうだな。リリス様は、俺に力の扱い方を教えてくれた偉大なる師であり、唯一の理解者でもあった。あの方の命令でなければ、俺は、ディスガイアに来ることもなかっただろう、な」
「だったら、今からでも遅くない。あたしとともに、このまま本土にいる行ってみないか?」

 半ば冗談、もう半分は本気であった。ゼペスがどういった反応をするのか、興味があったのだ。

 かつて絶対の忠誠を誓った魔王リリスと、元冒険者でありながら成り行きで魔族側に就いた魔王ビルマ。

 彼は、一体どっちを選ぶのだろうか、と──

「……ふっ、愚問だな。なぁ、邪竜ダークネスドラゴンよ」

 そう言って笑うゼペスの声に、躊躇いは一切なかった。

「俺たちが仕えるべきは、ビルマ様以外あり得ない。あの方の矛となり、盾となる。それこそが俺と邪竜ダークネスドラゴンの使命、だ。例え相手があのリリス様であろうと、な」

◾️

「gyaaaaaッ!」

 大翼を広げた邪竜の咆哮が、大陸全土に響き渡る──

 対するは、基地に駐屯していた冒険者たちの軍勢だ。
 
「じ、邪竜ゼペス・ハーゼットだぁあ! であえ、であえーッ!」
「魔族の畜生がっ! ブッ殺してやる!」
「この数だ! いくら邪竜であっても、さすがに──」

 そこで、冒険者たちの声は止まった。
 次の瞬間には、ゼペスの発した咆哮に掻き消されたのだ。

 間近で見ているから、よく分かる。

 例え彼ら冒険者がさらに100、200増えようが、ゼペスには絶対に敵わない。

 あたしと同様のことを思ったのだろうか、次の瞬間には、冒険者たちも武器を捨ててその場から逃げ出していった。

 まさに、圧倒的だった。

 築かれた基地の中でも、優秀な冒険者たちが集っていた基地を、ゼペスはで攻略してみせたのだ。

 でもいいのだろうか、それで?

 ゼペスは何故か、転移魔法陣テレポートゲートで逃げ帰る冒険者たちを殺さず、見守るだけだった。

 なんだか、府に落ちない。

◾️

「なあ、ゼペス。あんたは、なんでいつも冒険者たちをわざわざ逃がすんだ?」

 その夜。あたしは城のテラスで一人夜風に当たっていたゼペスへ、そんなことを尋ねていた。

 ゼペスは、ワイングラスを揺らしながら言った。

「逃した、のではない。逃げられた、ただそれだけだ」
「嘘つけ。あんたがその気になれば、あいつらに逃げる間もなく死んでいるはずだ。もしかして、実は平和主義だったりするのか?」
「平和主義? この、俺が?」

 ゼペスは、「くくく」と声を押し殺すように笑う。

「……ふっ。マドルフよ、お前は俺をそういう風に見ていたのか?」
「いいや、全く。むしろ、殺戮を好むようなタイプだと思っていたよ。もしかして、ビルマに『冒険者を逃せ』って命令でも受けてんのか?」
「ビルマ様は、関係ない」

 やっぱり、なんだか変だ。

 冒険者界隈で噂されていた邪竜ゼペス・ハーゼットとは、敵を容赦なく燃やし尽くす残虐な魔族として恐れられていた。

 國落とし──そんな異名は、なにも伊達ではない。実際、ゼペスはいくつもの国をその手で滅ぼし、これまで無数の屍の山を築いてきたのだ。

 そんなにも生粋の戦闘狂がある日、忽然とその消息を経った。

 一体どこでなにをしているのか、まさか大掛かりな殺戮の準備に取り掛かっているのではと、黒い噂が耐えなかったゼペスなのだが──まさか、こんなところディスガイアで隠居生活を送っていようとは、誰が想像できただろうか。

 全ては、ビルマ・マルクレイドという存在を中心にして。

 彼女には、きっとなにかあるのだろう。

 魔族たちの心を突き動かすような、なにかが──

「ゼペス。あんたはどうして、リリスではなくビルマを選んだ?」
「選んだわけではない。ただ、強いて言うならば……」

 と、ゼペスはたっぷりと間を開けた後にも、真剣な表情で言った。


「ビルマ様を背中に乗せて、空を飛びたいからだ」

 ……は?

「ビルマ様を背中に乗せていると、なんだか落ち着くのだ」
「……な、なんだそれ。冗談きついぜ」
「俺はいつだって本気だ」

 ……はぁ。真剣に話し合おうと思っていたあたしがバカだったようだ。

「やれやれ、よく理解したよ……あんたたち魔族は、ここ3年ですっかりビルマのとりこになってしまったみたいだな」
「なんだ、嫉妬してるのか?」
「……帰る」
「まあ待て。どうだマドルフ、お前も一緒にやらないか?」

 ゼペスが、手にしてワイングラスを掲げる。

「これは、俺とビルマ様とで共に作り上げた『悪魔の果実』を搾った味わい深い飲み物でな、きっとお前も気にいるだろう、な」
「悪魔の果実って、単なるブトウだろうが」

 牢屋に入れられていたとき、オークが食後のデザートだとそのブドウを持ってきた折にもその話を聞かせてくれた。またその味も、たらふく食べたから細胞レベルで覚えている自信がある。甘酸っぱい味が、なんとも病みつきになるんだよな。

「ブドウ、ではない。悪魔の果実だ」
「ああ、そうかい。とにかく、あたしは遠慮しとく。ゼペス、あんたもあんまし夜更かし過ぎるなよ?」
「ふっ、分かっている。これで最後にする。ただ、なぁ……」

 と、ゼペスはグラスを掲げて、アンニュイな表情で言った。

「今宵は、何故か無性に胸騒ぎがして、な……喉が、よく乾く」
「縁起でもないな。じゃあ、それが最後の一杯とならないよう、神にでも祈っとくことだ」

 最後の一杯──その不吉な発言は、実際現実のものとなる。

 後日、事件は起こった。

 最後の基地へと向かい、ゼペスが大地へ降りようとした直後のことだった。
 
 竜形態だったゼペスの右翼に、基地から発射された火球が直撃。正確無比の、狙い済まされた攻撃に、ゼペスもあたしも、全く反応はできていなかった。

 最後の最後で、ゼペスは敵に撃ち落とされてしまったのだった。
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