13 / 39
楽園増強編
邪竜ゼペス・ハーゼット
しおりを挟む俺の名前はゼペス・ハーゼット。
魔族の中でも稀少の竜種の一種──邪竜として生を受けた。
父と母、それに兄弟たちの顔は覚えていない。俺が成竜になる頃には、皆、戦果の中で命を落としていた。
竜種とは、とにかく狙われやすい。竜種の討伐は、冒険者や勇者にとって名誉として扱われる。
中でも俺たち邪竜は、初代魔王テスラ・ラフレシアが使役し、その背中に乗せた唯一の竜種とされている、言わば魔族を象徴する竜だった。
そんな邪竜の首を持ち帰ったとすれば、名もなき剣士すらたちまち英雄として持て囃れる。
気付いたら、俺は邪竜最後の生き残りとなっていた。
冒険者たちが、俺の命をつけ狙う。
勇者たちが、俺の首を刈り落とさんとする。
俺は、必死で戦った。
結果、俺は孤高の邪竜──【國落とし】として、広く恐れられるようになった。
あの方と出会ったのは、そんな頃だった。
第6代目魔王、アスラ・ソウ・リリス──
リリス様は俺に、『俺の元へ来ないか?』と持ちかけてきた。だがその頃の俺とは、目に映る者全てが敵と思え、それは魔王であれ例外ではなかった。怒り、悲しみ、孤独に溺れ自我を失いつつあった俺に、彼の言葉はなにも届いてはいなかった。
だが彼は、怒り暴走する俺を決して傷つけようとはしなかった。俺の怒りが鎮まるまでの間、彼はずっと耐え続けていた。そんな者と出会ったのは、生まれて初めてのこと。そのうち、怒りすらも失っていた。
その後は成り行きのまま、俺は魔王軍に加わることとなった。
リリス様の元には、ほかに数多くの魔物たちが集まっていた。彼らもまた、俺のように殺戮しか知らないような名もなき魔族たちばかり。従順に従うような者たちでないことは、一目瞭然。そんなにも血の気の多い俺たちであったのだが、次第にリリス様の人徳に触れ、いつしか彼を敬愛するようになっていた。
ただ魔王軍の中には、魔族最強の力を持っておきながら争いを好まぬ魔王リリスを、『ひよりみ魔王』と揶揄する者も少なくなかった。そのうち、魔王軍の中にもいくつもの派閥があることを知った。
無論、俺はリリス様を支持。彼に諭され魔王軍に加わった者たちも皆、リリス様を支持した。そうしてまた一人、一人と、仲間たちは増えていった。
そんな、ある日のことだった。
俺たちを集めたリリス様は、内に秘めていたという真の野望を、ついに俺たちへ語り明かしてくれた──それこそが争いのない平和な楽園づくり、『ディスガイア創造化計画』の始まりだった。
リリス様は、その計画を魔王である自身の命よりも重たいと語った。はじめは理解に苦しむ俺たちであったが、リリス様の本気度に、俺たちは圧倒された。苦言を呈す者は、誰一人としていなかった。
『我の抱いた思いは、いつかきっと理解できるだろう。お前たちなら、きっとな』
そう言って優しく笑っていたリリス様の心中は、理解できない。理解できぬが、俺たちは信じて突き進むことにした。
そして、俺たちはビルマ様と出会う。
リリス様が、『ディスガイア創造化計画』の総責任者として選び抜いた存在。きっと、リリス様のように人徳の溢れた、聡明なお方なのだろう。
しかも、彼女はかの魔装神器すらも容易く創造してみせた。きっと、とてつもない力を秘めた偉大なる人物に違いない。
島へやって来た頃は、そんなことを思っていたのだが──
「うわぁぁあああ! ゼペス、蜂がっ! 蜂がこっちに来てるぅう!」
彼女は、騒々しく、
「なにやってるのゼペス? ねぇねぇねぇ」
彼女は、鬱陶しく、
「のぉぉぉぉ! どうして失敗しちゃうのよぉおお!」
彼女は、涙もろく、
「ねぇ、ゼペスー! あなたもこっちに来なよー!」
彼女は、本当にお節介だった。
ビルマ・マルクレイド。
彼女は実に、不思議な人間だ。
感情のおもむくままに、喜び、怒り、泣き、そして楽しそうに笑う。
訂正しよう。
彼女は、聡明な方ではなかった。
彼女は、力のある偉大な統率者ではなかった。
彼女は、創造魔法なる摩訶不思議な力に恵まれただけの、平凡な人間の少女に過ぎなかった。
だけど──何故か、無性に彼女のことを考えてしまう。
島の整地がようやく完了した、ある日のことだった。
『ねぇゼペス、あなたは本当に竜なの?』
と、ビルマ様が突然そんなことを尋ねてきた。また、「わたし、竜の背中に乗ってみたい!」とも。
正直、かなり迷った。
俺の真の姿を見た人間は、必ず怯え震えてしまう。
普段の俺を知っているビルマ様でさえも、きっと例外ではないだろう。
正直、怖かった。
もしも、ビルマ様を怯えさせてしまった場合、俺はこれからどんな顔をして彼女と接していけばいいのだろうか……。
人間にとって、俺は【國落とし】として恐れられる悪魔のような存在。
たくさんの国を滅ぼし、数え切れない程の人間を殺してきた。
そんな俺の過去など、冒険者だったビルマ様はよく知っているはず。
「ゼペス、どうかしたの?」
「え? ……いや、なんでもございません、ビルマ様」
──結局、俺はビルマ様を背に乗せることを許していた。
「ビルマ様は、俺のこの姿を見て、恐れを抱いたりしないのですか?」
「え? もちろん。むしろ、わたしずっと竜に憧れていたのよ。それこそ昔ね、死んだお婆ちゃんがよく竜の出てくる御伽話を読んでくれてたからさ」
その瞬間、心臓がちくりと痛んだ。
俺の命を狙いにくる冒険者たちと戦いに明け暮れていた当時の嫌な記憶が、走馬灯のように蘇る。
俺の吐き出した炎をあびて死んだ、冒険者たちの焦げる肉の臭い。
俺の牙に貫かれ血を撒き散らしながら死んだ、勇者たちの断末魔。
中には、ビルマ様のような若い女冒険者もいた。無論、殺してやった。
そんな彼らは皆、きっと御伽話に出てくる英雄に憧れて、俺を倒しにきたのだろう。
夢や希望をその胸に抱いて、俺を悪の象徴であると決めつけて、彼らは皆死んだ。俺が皆殺しにしたのだ。
御伽話などという、空想の冒険譚など信じるから、いけないのだ──
「竜って、カッコいいよね!」
「……は?」
「いやだから、竜ってカッコいいと思うの! おばあちゃんもね、竜は賢くて、昔は人間たちに知恵を貸していたんだって、そう言ってたよ。だから人間たちも、竜を神さまとして崇めてたんだって」
「……そう、なのですか?」
「えっと、多分? おばあちゃんの聴かせてくれた御伽話では、いつもそんな感じだったけど」
そんな御伽話、聞いたこともなかった。
「お言葉ですが、竜は人類にとって化け物みたいな存在です。御伽話でも、竜は世界を闇で覆う存在として知られています」
「あー、うん。そういう御伽話も、あるみたいだね」
「御伽話、ではありませんよ」
俺は、ついに打ち明けることにした。
「俺はこれまで、たくさんの人間を殺してきました。そうして、いくつもの国を滅ぼしきた。俺は【國落とし】と呼ばれ、世界から恨まれている。俺は、邪竜神ゼペス・ハーゼット……リリス様の命令がなければ、あなたも殺していたことでしょう」
そのときの俺は、彼女に嫌われていいと思っていた。
そもそも、彼女とこうして共にいること自体、間違っていたのだ。
人間と魔族は、相容れぬ存在。例外などなく、俺たちは敵同士。
いつかきっと、ビルマ様すらも、俺は殺してしまう──
「ゼペスは、絶対そんなことしないよ」
「……え?」
「だから、ゼペスは絶対、わたしを殺したりなんかしない。わたしもゼペスのことが大好きだから、傷つけたりしない。わたしたちは、そういう関係!」
意味が分からなかった。
「本当の俺を知らないから、そんなことが言えるのです……」
「本当のゼペスってなによ。ゼペスはゼペスじゃない。あなたは、ゼペス・ハーゼット。無口で、シャイで、一人でいることが多いけど、でも本当は誰よりも仲間思いで、いつも皆の手を汚さないよう汚れ役を買ってでる、そんなにも優しい子」
「違います、俺は……」
「いいや、違わない! おばあちゃんも、言ってたよ。過去があって、今がある。竜の出てくる御伽話も、昔誰かが、竜に助けられたことを感謝してて、その気持ちをどうにかして残したくて、だから御伽話にしたんだって。ほら、繋がってる。わたしもゼペスにいっぱい助けられたから、だから今のあなたを、心の底から信用できるの」
「ビルマ様……」
「ゼペス。わたしは、あなたが大好きよ。それに、わたしにはあなたが必要なの。その気持ちは、これからもきっと変わらない。だから、そんな悲しいこと言わないで。お願いよ」
そのときの俺は、なんと答えていいのか分からず、結局はなにも言えないままだった。
ただどうしてか、妙に心が暖かった。
忌むべき邪竜として、戦火を転々と渡り歩いてきた。俺の近づく者は、邪竜である俺を倒そうとする者か、邪竜としての俺の力を利用しようと考える者しかいなかった。それこそリリス様が現れるまでは、俺はずっと一人だった。
それなのにビルマ様は、こんな俺なんかを『必要』だと言ってくれた。
こんなにも平和な土地では、なにもできないのに。そんな邪竜の俺から戦いを奪ってしまえば、価値なんてないのに。
俺は果たして、本当にこの場所にいてもいいのだろうか──
「ねぇゼペス、あなたはなにか、創りたいものとかないの?」
またとある日、ビルマ様がそんなことを聞いてきた。島がほどほどに発展した。島の中央には、この大陸全土を見渡せる立派な城がそびえたっている。
島を豊かにするため、これからどうしていこうか模索している段階だった。
「俺の、創りたいもの、ですか?」
「そうよ。みんなにも聞いて回ってるから、ゼペスにも聞いてみたの」
「……ございません」
「えー、うそ。なにか一つくらいあるでしょ? 別に遠慮してなくてもいいのよ」
遠慮などではなく、本当になにもなかった。
欲しいものも、手に入れたいものも、なにもない。むしろ俺は、誰かの大切なものを奪ってきた。
そういう生き方しか、俺は知らない──
「んーと、じゃあ分かった。思い出よ」
「思い出?」
「そう。ゼペスの思い出の中から、なにか創りましょう!」
「そうは言われても、俺に思い出など……」
「なにか一個くらいはあるでしょう? ほら、いいから思い出してみて!」
ビルマ様が目を見開き、俺に詰め寄ってくる。その鬼気迫る勢いには、つい、たじろいでしまう。今回ばかりは、黙ってやり過ごせそうにないようだ。
でも、俺に思い出なんて──あっ。
「悪魔の、果実……」
「え? なにそれ?」
「昔、あれは俺がまだ幼竜で、初めて空を飛んだ時のことでした。多分……うる覚えですけれど、俺の姉にあたる人物が、悪魔の果実が実る場所へ、連れて行ってくれたのです」
本当に姉だったのかは、分からない。顔も、名前も、なにも覚えていない。ただ彼女のことを、俺は「お姉ちゃん」と呼んでいた。そんな彼女に、空の飛び方を教えてもらったこともなんとなく覚えている。
『上手に飛べるようになったわね、ゼペス。特別に、わたしの秘密の場所を教えてあげるわ。そこにはね、真っ青おでブツブツな実がたくさんついている、悪魔の果実がたくさんなっているのよ。さあ、行くわよゼペス』
そう言って、黒い翼を広げた彼女の背中を、俺は必死で追いかけた。
おっきくて立派な、竜の翼。
俺もいつか、あんな風に飛べたらいいのになと、そんなことを思いながら。
「それはきっと、『ブドウ』ね」
「ぶ、ブドウ?」
「うん、紫色の皮の実でね、一房に実が何個もついてるの。でも困ったなぁ、わたし、ブドウなんて見たことも食べたこともないのよね……あっ、そうだ!」
ビルマ様は、「閃めきました!」と、そうも言った。
「ないなら、これからわたしたちで創ればいいのよ、一から! 悪魔の果実を!」
「び、ビルマ様?」
「そうね、思えば果樹園がなかったわ……なんで今まで気付かなかったんだろう! お手柄よ、ゼペス!」
そう言って、ビルマ様が俺の手を引っ張る。ニコニコと笑いながら、楽しそうに。
「さあ、行きましょうゼペス! 一緒に、悪魔の果実を創るのよ!」
それから、俺はビルマ様の『悪魔の果樹園づくり』は始まった。
とは言え、俺もビルマ様もなんの知識もない。それこそはじめは、失敗の連続だった。
それでも、ビルマ様は決して諦めようとはしなかった。だから俺も、諦めようなんて思ったことは一度もなかった。
「今日も頑張りましょ。ゼペス」
晴れの日も、雨の日も、嵐の日も、俺はビルマ様を背に乗せて悪魔の果樹園づくりへと向かう。
泥まみれとなったビルマ様の背中を、ずっと追いかけ続けた。
いつかの、空飛ぶ「お姉ちゃん」の黒い翼をがむしゃらで追いかけていた、あの頃のように……。
そして──
「ほらゼペス、見なさい! これ全て、わたしたちが創造したのよ!」
俺の背中で、彼女が嬉しそうに笑う。遥か地上の、広大な果樹園を眺めながら。
俺たちは、ついに「悪魔の果樹園づくり」を成功させた。
「ふっ、長い戦いであった……なあ、邪竜よ」
その頃、俺も少しは社交的になっていた。ただやっぱり恥ずかしいから、邪竜というもう一人の交えてだが。
「……ねぇゼペス、あなた、もっと普通に喋れないの?」
「普通、ですか。それは無理と言うものですよ、ビルマ様。俺は、そもそもが普通では、ないっ──ああっ、右眼がッ!」
「ゼペス⁉︎」
「はぁ、はぁ、はぁ……ビルマ様、邪竜が、暴れ出そうとしています。こいつの封印を抑え込むには、今すぐ悪魔の果実をっ、うぅッ!」
「も、もう! だったらほら、早く降りて!」
「申し訳、ありません……ふふふ」
「え、なんで嬉しそうなの?」
「⁉︎ あ、あああ、右眼がぁああッ!」
そうして、俺たちは並んで、甘くて酸っぱい悪魔の果実を頬張る。
ビルマ様の言っていたブドウという果実と、同じ味かなんてことは分からない。
だけど、俺からすればこれこそがブドウであり、悪魔の果実であった。
今まで食べたどんな食べ物よりも、ずっと美味しかった。
美味しかった、のだ──
◾️
──そんな当時の記憶を、ふと、思い出した。
翼に強い衝撃を受け、墜落していく最中のことであった。
なにが起こったのかは、分からなかった。
ただ、目の端に映るはずの俺の右翼が見当たらない。そのときにも、悟った。俺は、翼をもがれてしまったのだと。
「邪竜を撃ち落としたぞッ! 今のうちに、首を切り落とせぇ!!」
朦朧とする意識の中で、そんな怒声を耳にする。ボヤけた視界の先に、武器の握り迫る無数の人影が見える。
ああ、そうか……俺は、冒険者たちに撃ち落とされてしまったのか。
体が動かない。どうしてか、全身から力が抜けていく。見えざる巨大な足に、全身を押し潰されているような感覚だった。
マドルフは、ちゃんと逃げ切れただろうか……。
無事だったらよいのだが……あいつのことだ、きっと大丈夫だろう。今だけは、そう願うしかない。
そのうち、草木に潜んでいた冒険者がわらわらと姿を現し始めた。その先頭に、真っ赤な鎧を纏う男が一人──豪華な装飾の施された黄金の剣を掲げ、意気揚々と叫ぶ。
「これは、世紀の一戦なり! 邪竜ゼペス・ハーゼットを討ち取った我々の偉業は、伝説となり、後世にも語り継がれていくだろう。だから、恐れるな戦士たちよ! お前たちの御霊は、この俺、勇者アーノルドと共にあり!」
そう言った奴の手の甲には、青白く光り輝く紋章が見える。マドルフの手の甲に刻まれていたものと同じ『魔族殺しの紋章』だ。なる程、半信半疑ではあったが、リリス様が俺たちを裏切ったというのは、本当らしい。
俺は、気力のみで鉄のように重たい体を起こした。
冒険者たちの悲鳴が上がる。だが、勇者を名乗るアーノルドという男だけは恐れ慄くこともなく、剣を構え俺の前へと出てきた。
「諦めろ、邪竜ゼペス・ハーゼット。貴様の悪行も、ここで終わりだ。貴様に殺された戦士たちに代わり、俺が正義の鉄槌を下す」
「悪行、か……お前タチも俺ノ仲間ヲ、たくさん殺シタ……」
「当たり前だ。貴様ら魔族は、殺されて当然のことをしてきたのだからな」
……殺サレテ、当然?
「……ククク、ああ、ソウ、だったな……」
「なにが、おかしい」
「いや、ナ……タダ、改めて理解シタ……俺は、邪竜ゼペス・ハーゼット……お前たちを殺す、敵だ」
俺と彼らは、決して理解し合えない。そんなことは、もうずっと昔から気付いていた。それでも、俺は心のどこかで願っていたのだろう──戦わずして理解し合える、そんなにも非現実なことを。
よもや、【國落とし】として恐れられてきたこの俺が……可笑しくて、堪らなかった。
その瞬間、黒い感情が全身を支配していく感覚を受けた。かつての、殺戮だけを全てだった自分を、取り戻していく感覚。
冒険者たちが、怯えた表情で俺を見ている。勇者アーノルドの額にも、粒の汗が浮かんできている。
そして、ようやく思い出した。
俺の本来、あるべきだった姿を。
こんな俺の姿を見たら、ビルマ様はどう思ううのだろうか。彼らのように、恐れ慄くだろうか……まあ、もういい。
俺は充分、幸せだった。幸せ過ぎたのだ。
これ以上は、もうない。
ビルマ様、申し訳ありません。
どうやら俺は、ここまでのようです。
ゼペス・ハーゼットは、あなたと過ごしたこの3年間、本当に幸せでした。
俺の背中に初めて乗ってくれたのが、あなたで本当に良かった。
あなたの創造するディスガイアの行く末を、最後まで見たかった。
皆ともう少し、共に過ごしたかった。
だがそれも、叶わぬ願い。
だからせめて、祈らせてください。
ビルマ様と、皆が、これから創造するディスガイアに恒久なる平和が訪れんことを、ここに祈る──
「口程にもなかったな」
そう言ったアーノルドの剣が、俺の心臓に突き立てられる。その瞬間、冒険者の歓声が上がった。
意識が、次第に遠のいていく。
視界の隅で、切り落とされた俺の角を、一人の若い冒険者が嬉々弾んで運んでいる光景だった。
「へへっ! ついに、これで俺も……英雄だっ!」
最後に、そんな言葉を聞く。
彼が英雄になろうがどうだろうが、もう俺には関係ない。
俺はもう、戦わなくていいのだ──
『ゼペス』
朧げな意識下で、なぜかビルマ様の声を聞いた。
『お疲れ様、ゆっくり休みなさい』
そんなビルマ様の、優しい声。
また、空から黒い羽が落ちてくるのを見た。それは、いつか見た『お姉ちゃん』の翼のように見えた。どうやら、お迎えがやってきたらしい。
俺は、ゆっくりと目を閉じた。
1
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています
黒崎隼人
ファンタジー
Sランク勇者パーティのお荷物扱いされ、「ゴミスキル」と罵られて追放された鑑定士のアッシュ。
失意の彼が覚醒させたのは、森羅万象を見通し未来さえも予知する超チートスキル【万物鑑定】だった!
この力を使い、アッシュはエルフの少女や凄腕の鍛冶師、そして伝説の魔獣フェンリル(もふもふ)といった最強の仲間たちを集め、辺境の町を大発展させていく。
一方、彼を追放した勇者たちは、アッシュのサポートを失い、ダンジョンで全滅の危機に瀕していた――。
「今さら戻ってこい? お断りだ。俺はこっちで幸せにやってるから」
底辺から駆け上がる痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!
追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので無双はじめたら、元仲間が落ちぶれていきました〜
里海慧
ファンタジー
「カイト、お前さぁ、もういらないわ」
魔力がほぼない最低ランクの最弱ハンターと罵られ、パーティーから追放されてしまったカイト。
実は、唯一使えた魔法で伝説の魔獣王リュカオンと融合していた。カイトの実力はSSSランクだったが、魔獣王と融合してると言っても信じてもらえなくて、サポートに徹していたのだ。
追放の際のあまりにもひどい仕打ちに吹っ切れたカイトは、これからは誰にも何も奪われないように、最強のハンターになると決意する。
魔獣を討伐しまくり、様々な人たちから認められていくカイト。
途中で追放されたり、裏切られたり、そんな同じ境遇の者が仲間になって、ハンターライフをより満喫していた。
一方、カイトを追放したミリオンたちは、Sランクパーティーの座からあっという間に転げ落ちていき、最後には盛大に自滅してゆくのだった。
※ヒロインの登場は遅めです。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる