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第3章
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しおりを挟むガンスレイブは自身の変化についてを知らない。
ただ言って、アルビダと冒険を始めてからというもの、以前のガンスレイブからは到底想像のつかない表情を見せる事は確かであった。
その事実について、ガンスレイブは気付かないでいたのだろう。
一緒に冒険を続けるアルビダだけが、その変化に気付きつつあった。
冒険を続ける最中にも、アルビダは、ふと思う。
『最近のガンスレイブは、どこか楽しそうだ』
その理由として、ガンスレイブはよく喋るようになった。
地上にいる者達の暮らしぶりを尋ねてきたり、自分から喋りかけてくることも少なくはない。
もしかしたら、ガンスレイブはいつか、本当に変われるかもしれない。
今はまだ無理でも、でもいつかは、ダイスボードではないどこかでこの獣顔と共に過ごせる未来があるのかもしれない。
アルビダは、そんな事を思っていた。
それがいつになるかは分からないが、少なくとも、このダイスボードを攻略仕切った後になるだろうとも、そうも思っていた。
だったら、攻略するしかない。
どこまで続いているかは分からないが、二人なら余裕な筈だ。
実際、ここまで難なく進んでこれたのだから。
私とガンスレイブ、二人で協力し合えば何処へまでも進んでいける。
それにもしかしたら、この地下54階層がダイスボードの最果てかもしれない。
そうだったら、どうしようか?
ガンスレイブは、その後も私と一緒にいてくれるだろうか?
いや、ガンスレイブがどうであろうと、私が彼から離れなければいいんだ。
そして、ガンスレイブと色んなところにいくんだ。
地上に出て、山を登ったり、川を泳いだり、夜空を眺めたり、風に当たってみたり、美味しい料理を食べたり。
何だっていいんだ、このダイスボードでは出来ないことだったら、何だって……
アルビダの未来は、明るかった。
その未来について、ガンスレイブは知らない。
また、知ることもない。
永遠に。
「あれ、何だろう?」
道の途中のこと。アルビダが突然、口を開いた。
そこはまだ地下54階層で、二人の目の前に見たこともない存在が立ち塞がっていた。
一見して、それは闇の霧。
黒々とした霧が、フワフワと宙を浮かんでいて、またギラリと、2つの黄色い閃光を走らせていたのだった。
その2つの黄色い閃光とは、まるで眼光のように、2人へと向けれていた。
「……俺は知らない」
「え、ガンスレイブも知らないの?だったら、新手の魔物かしら?」
アルビダは身構え、黒塗りの長刀を構えた。
「おいアルビダ、少し待て。あいつ、少し様子が変だ」
「大丈夫。だって、たかだか魔物でしょ?」
「だから、待てと、」
そんなガンスレイブの制止を無視して、アルビダは突っ込んでいく。
「ははは、あれは私の手柄ね?」
その時のアルビダに、恐れはなかった。
また危機管理は、酷くお粗末であった。
それはここ最近、危険と危険が皆無に等しかったであろうか。
何かあっても背後にはガンスレイブがいる。
最強の存在、ガンスレイブが。
何者であれ、彼に敵(かな)う存在をアルビダは知らない。
熟練の冒険者が知らないということは、つまりそんな存在はこの世のどこにもいないということ。
少なくとも、このダイスボードには。
アルビダと黒い霧の距離が縮まっていく。
そして、遂にはアルビダの長刀が黒い霧を捉える範囲にまで近づいていた。
「くらいなさい!!」
突き出した刃先が、黒い霧へと埋まる。
それは刺さったというよりは、すり抜けた近い、そんな実感のない感触。
そこまで来て、アルビダはやっとその黒い霧が魔物ではない事を理解していた。
また、体がガチガチに凍るような寒気さを覚えていた。
麻痺に近い、神経の氷結。
アルビダの視界先で、黒い霧がゾワリと、動いた。
そして、
「え……」
次の瞬間、
アルビダの体を、黒い霧が包み込んでいた。
「アルビダッ!!」
ガンスレイブが遅れてやってきた頃には、アルビダの姿はどこにも見えない。
ただ以前として、黒い霧だけがそこには有り、また様子を変化させ、霧が次第に人の形へと変わっていく。
ガンスレイブはすぐにも理解した。
多分この黒い霧とは、実態を保たない魂のようなもので、他者の体に乗り移る怨念のようなものと理解する。
毛が逆立たせ、ガンスレイブは警戒心を全開にしていた。
大剣を構え、黒い霧の動きを待つ。
そのまま、少しばかり様子を見て、黒い霧が完全に人の形へーー
アルビダの姿へと移行した事を、確認する。
「……ギィイイイイッ!!!」
金切り声が上げるアルビダだった何か。
言って、それはアルビダではない。
ある筈はない。
故に、ガンスレイブは模索する。 アルビダと、その正体不明の何かを切り離す万策を。
万策の有無について、ガンスレイブはひたすら考え続けていた……
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