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一章
異世界へようこそ
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「ああ、ここは」
長崎は目を覚ますと見知らぬ場所にいた。
「いたた」
立ち上がろうとしたときに少し腰に痛みが来る。
それも当然のはず。長崎が寝ていたのは布団も引かれていないただの床であったのだから。
ここはどこだろう? そして自分はなぜこんなところにいるのだろうか。
長崎の頭からもやもやがなかなか晴れない。
とりあえずゆっくりではあるが長崎は周りを見渡す。
まるで事務所の休憩室であるかのような机といす。そして机の上には見覚えのある型のノートパソコンが置かれている。おそらくいつも打刻するとき見ているものだろう。
そして部屋に配置されている引き出しやら器具にはかなり見覚えがあった。
唯一見覚えがないものといったら、部屋の角に置かれている見たことのないような色の花だろう。なんだかジャングルの奥地に生息しているような感じのものだ。
「んー、別の店舗に応援にきてて、ねちったかな」
頭を掻きむしりながら、思わずあくびが出る。
「はは、そういえばお腹空いたな」
ぐっと背伸びをしている最中、ぐぅ~とお腹の音が室内に響き渡った。
そして長崎が何か食料を求めてドアノブに手をかけた時であった。
「のわっ!」
先に扉が開き態勢が崩れる。
「おっとこれは失礼」
申し訳なさそうに男が頭を下げる。
「いえ、俺の方こそ」
長崎もつられて頭を下げる。
「ええっと、長崎武君だよね」
男は手に持っている紙に書いてある名前を読み上げ、そこに貼られている写真と実物を見比べて確信する。
「そうだけど、あんたは?」
「僕は防衛省の遠山和樹。僕の仕事は君の身の回りの管理だね」
「防衛省? 防衛省がどうして俺の管理を?」
「ん?覚えていないのかい?」
不思議そうな顔で長崎を見つめる遠山。
そうな様子を目の当たりにしたからか、長崎は必死に記憶の足跡をたどる。
そうだ確か俺は数日前に進藤さんと会って………………………。
「まさか異世界!?」
「正解」
まだ自分が異世界にいることに納得のいかないといった感じの長崎。
当然と言えば当然である。目覚めていきなり異世界にいるなんて到底信じがたいことだ。
「納得がいかないといった表情だね。よしついておいで」
すっと振り返りゆっくりと歩きだす遠山。
長崎は何も言わず遠山のあとを追う。
「こ、これは」
長崎の目の前によく知る光景が広がる。
そう牛食の厨房がそこにはあった。
「驚いたかい? ここは異世界一号店の牛食!! 君がプロデュースする店さ!」
「ここが異世界の…………」
長崎はぴかぴかに輝く肉鍋を軽くさする。
そして真新しい機材に興奮したのか、長崎は無邪気な子供のように厨房を歩き回る。
「はは、まだ何にも入ってねえ」
冷蔵庫を開けぽつりと長崎は呟く。
「長崎君。興奮するのはまだ早いよ。さあこっちへおいで」
二人はフロアーを抜けて、普段お客さんが出入りするための出入り口を抜けて外に出る。
「さあ! これが異世界だ」
「…………………う、うそだろ!?」
出入り口を抜けた先。そこは多くの人々が行き来する大通りだった。
そこを歩いていた人たちは、進藤さんに見せてもらった写真に載っていた人と同じようだ。
耳の長いエルフ。斧を持ち茶色い毛皮をまとったドワーフ。そして猫耳の生えた猫族。
そこには現代社会に見られない光景が広がっていたのだ。
「彼らが君の店の顧客だよ。彼らの特徴や生態については後で資料を渡すから、しっかりと叩き込む………………聞いてないか」
完全に無心状態と化している長崎を見て、やれやれと遠山は首を振る。
「すごいすごい。こんなところで俺は店を構えることができるのか」
「そうだよ。君はこれからクルーの育成。味付け。人がいなければ店もまわさなければならない。とにかく忙しい毎日が待っている。それでも君はこの状況を楽しめるかい?」
遠山はにやりと笑いながら問う。まるで答えがわかりきっているかのようだ。
そして遠山の予想した通りの答えを長崎は口にする。
「楽しめなきゃ俺はここにいないよ」
「そうか。安心したよ。これから一緒に頑張ろう」
遠山は右手を差し出す。
そしてその手をがっしりとつかみ、
「こちらこそ」
「異世界へようこそ。長崎武くん」
長崎は目を覚ますと見知らぬ場所にいた。
「いたた」
立ち上がろうとしたときに少し腰に痛みが来る。
それも当然のはず。長崎が寝ていたのは布団も引かれていないただの床であったのだから。
ここはどこだろう? そして自分はなぜこんなところにいるのだろうか。
長崎の頭からもやもやがなかなか晴れない。
とりあえずゆっくりではあるが長崎は周りを見渡す。
まるで事務所の休憩室であるかのような机といす。そして机の上には見覚えのある型のノートパソコンが置かれている。おそらくいつも打刻するとき見ているものだろう。
そして部屋に配置されている引き出しやら器具にはかなり見覚えがあった。
唯一見覚えがないものといったら、部屋の角に置かれている見たことのないような色の花だろう。なんだかジャングルの奥地に生息しているような感じのものだ。
「んー、別の店舗に応援にきてて、ねちったかな」
頭を掻きむしりながら、思わずあくびが出る。
「はは、そういえばお腹空いたな」
ぐっと背伸びをしている最中、ぐぅ~とお腹の音が室内に響き渡った。
そして長崎が何か食料を求めてドアノブに手をかけた時であった。
「のわっ!」
先に扉が開き態勢が崩れる。
「おっとこれは失礼」
申し訳なさそうに男が頭を下げる。
「いえ、俺の方こそ」
長崎もつられて頭を下げる。
「ええっと、長崎武君だよね」
男は手に持っている紙に書いてある名前を読み上げ、そこに貼られている写真と実物を見比べて確信する。
「そうだけど、あんたは?」
「僕は防衛省の遠山和樹。僕の仕事は君の身の回りの管理だね」
「防衛省? 防衛省がどうして俺の管理を?」
「ん?覚えていないのかい?」
不思議そうな顔で長崎を見つめる遠山。
そうな様子を目の当たりにしたからか、長崎は必死に記憶の足跡をたどる。
そうだ確か俺は数日前に進藤さんと会って………………………。
「まさか異世界!?」
「正解」
まだ自分が異世界にいることに納得のいかないといった感じの長崎。
当然と言えば当然である。目覚めていきなり異世界にいるなんて到底信じがたいことだ。
「納得がいかないといった表情だね。よしついておいで」
すっと振り返りゆっくりと歩きだす遠山。
長崎は何も言わず遠山のあとを追う。
「こ、これは」
長崎の目の前によく知る光景が広がる。
そう牛食の厨房がそこにはあった。
「驚いたかい? ここは異世界一号店の牛食!! 君がプロデュースする店さ!」
「ここが異世界の…………」
長崎はぴかぴかに輝く肉鍋を軽くさする。
そして真新しい機材に興奮したのか、長崎は無邪気な子供のように厨房を歩き回る。
「はは、まだ何にも入ってねえ」
冷蔵庫を開けぽつりと長崎は呟く。
「長崎君。興奮するのはまだ早いよ。さあこっちへおいで」
二人はフロアーを抜けて、普段お客さんが出入りするための出入り口を抜けて外に出る。
「さあ! これが異世界だ」
「…………………う、うそだろ!?」
出入り口を抜けた先。そこは多くの人々が行き来する大通りだった。
そこを歩いていた人たちは、進藤さんに見せてもらった写真に載っていた人と同じようだ。
耳の長いエルフ。斧を持ち茶色い毛皮をまとったドワーフ。そして猫耳の生えた猫族。
そこには現代社会に見られない光景が広がっていたのだ。
「彼らが君の店の顧客だよ。彼らの特徴や生態については後で資料を渡すから、しっかりと叩き込む………………聞いてないか」
完全に無心状態と化している長崎を見て、やれやれと遠山は首を振る。
「すごいすごい。こんなところで俺は店を構えることができるのか」
「そうだよ。君はこれからクルーの育成。味付け。人がいなければ店もまわさなければならない。とにかく忙しい毎日が待っている。それでも君はこの状況を楽しめるかい?」
遠山はにやりと笑いながら問う。まるで答えがわかりきっているかのようだ。
そして遠山の予想した通りの答えを長崎は口にする。
「楽しめなきゃ俺はここにいないよ」
「そうか。安心したよ。これから一緒に頑張ろう」
遠山は右手を差し出す。
そしてその手をがっしりとつかみ、
「こちらこそ」
「異世界へようこそ。長崎武くん」
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