異世界一の牛丼屋

たろたろぬ

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一章

特製唐揚げ

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「じゃあちょっくら作ってくっから、これを外してくれねえか」


 俺はくいくい、と後ろで両手を縛っている縄を上下させる。


「それはならん! お前は仮にも罪人。一時的とはいえ拘束を解除するなどできん」
「そうじゃの。罪人を自由にするなどできんの」
「なら別の人が作るというならどうです?それもドワーフが作るというなら」
「ほう、それはどんな冗談かの。ドワーフが料理とは笑わせる」
「きっとあいつの腕前を知ったら驚きまっせ」


 長崎の勝ち誇った表情。
 誰もが長崎を疑った。手先の不器用なドワーフが料理などできるはずない、と。


「よろしいならばみせてもらおうか。ドワーフの料理というやつを」




「帰ってきたっすよ!!」
「おっ、本当かい?」


 ノスの声を聞き、遠山はフロアに出る。
 しかし馬車から長崎が降りてくることはなかった。
 降りてきたのはユステルと二人の騎士。


「おい、ノスとかいうドワーフはどいつだ」
「ぼ、僕ですが」


 ユステルの態度に完全萎縮しているノス。


「これを長崎から預かってきている。早急に読み、料理を作るがよい。なおそこの小僧以外が調理することは許さんからな」


 ユステルは遠山をにらみつける。
 遠山はへらへらと笑うだけである。


「ちょ、ちょっと遠山さんこれを見てほしいっす!!」
「ん? どれどれ。唐揚げ作ってくんねえか? ノス一人でな。やり方は簡単。冷凍唐揚げ機械に入れてスタート押すだけだから。後は特製ダレ③を半周くらいかけてくれ。それだけでうまい料理ができっから。あとはふたを閉めてきてくれな。PS頑張れよ。か」



 僕はどうすればいいっすかね? と戸惑いの表情を隠せないノス。それにあまりの長崎らしい文面を見て苦笑いをしている遠山。まったくどうなることやら、ととりあえずポケットに入っている胃薬をそのまま口に放り込む。


「よし、店の中にはお前たちだけのようだな。おい、そこのひょろひょろしたお前。店の外に出てもらおう。調理をするのはそこのノスとかいうドワーフのみだ」


 ユステルは遠山に槍を突き立てる。
 遠山はへらへらと笑いながら、店を出る。
 一応何かあった場合責任を取らされる立場の遠山。下手なことはできないし、今回の一件で一番緊張感を覚えている人物である。


「これで邪魔者は消えた。さあ調理を開始するがよい。これは王女様に出される料理であるぞ。光栄に思うがよい」


 最後の一言にわなわなと震えだすノス。
 まずいっすよ長崎さん。僕料理なんてしたことないっすから。
 そんな僕が王女様に出す料理を作るっすか? 無理っす。無理っす。絶対無理っす。
今からでも遅くない。遠山さんに助けを求めようかそう思った時ノスだったが、思いとどまる。


 長崎さんはおいらを頼ってくれたっす。きっとおいらならできるって思ってくれたっす。そんな長崎さんの思いを、おいらは無駄にしてもいいっすか?


 いや、ダメっす!! 
 ほかの誰でもない。おいらが頑張るっす。


 難しいことはないっす。メモ通りに動くだけの簡単な仕事っす!



                  ~王前~


「王女様。ただいま参上いたしました。お待たせしてしまい、大変申し訳ありません」
「よい。それでトクセイカラアゲとやらはもってきたのかの」
「はっ、では王女様に献上せよ」

 
 震える手、震える足でノスがゆっくりと王女の前に歩いていく。
 その手に持っている唐揚げの入った器が今にも落ちそうである。


「ちょっと待て! おい、長崎といったか、お前これを食べてみろ?」
「どうしてだい?」
「これに毒が入っていないとは限らん」


 ユステルは器に入った唐揚げを四つ指定する。ちなみに器に入ってる唐揚げは六個だ。



「待ってくれ、俺は手がふさがっているだろ? 罪人の縄をほどくのはよくないだろ。ユステルとか言ったか? 食べさせてくれよ」
「な、なにをふざけたことをっ! ここにいるドワーフに食べさせてもらえばよかろう」
「見てみろよ、ノスの手。これで食べさせてもらうなんて無理だろ」


 まるでノスにだけ地震がきているかのような手の揺れ。さすがにこんな状態では食べさせてもらうなど至難の業だ。


「くっ、なんという屈辱。よかろう、私がたべさせてやる」



 まるでゴキ○リとキスをさせられるかのような屈辱的なユステルな表情。
 


「こ、これがトクセイカラアゲとやらか」


 ユステルは器から一つ唐揚げをとり、長崎の口の中に入れる。



「ん、うまい。この特製ダレがなんとも言えんな」


 それから三つ口の中に入れたが、当然毒が入っているということはない。



「これで証明されたろ? さあ次は王女様のばんだぜ」
「うむ、わらわの前へその品を献上せよ」



 ノスが王女の前まで歩み寄り、右ひざを地面につけゆっくりと器をかかげる。
 そして王女はそこから一つ唐揚げをつかみ、口の中へと………………。


「むううぅぅぅぅぅぅぅぅーー」



 なんじゃこれは!? 
 噛んだ瞬間口の中にあふれ出るジューシな肉汁。噛んだ感触を与えてはくれるが、とても柔らかい肉。それにこの甘辛いタレが口のなかにあふれてきて忘れることのできないセレナーデを―――



「はっ!」


 意識が戻る王女。
 周りのものの心配そうな態度に恥ずかしそうな表情である。



「こ、これは大変おいしい」



 当たり前だろ、とどや顔の長崎。
 それにほっとしたのかその場に倒れこむノス。


「この肉は大変というレベルで表せぬほどおいしい。それにこのタレが絶品であるぞ。長崎といったか、このような絶品な品物を――――おい! 大丈夫か」



 ばたっ、とその場で倒れる長崎。



「おい、誰か! 医療班を連れてまいれ! 早く!!」
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