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第一章 異世界でBL作家誕生
018 公爵令嬢、落ち込む
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入学式前にも、調べられそうなことがあれば探ってみようと、二人は動き出した。
情報は集めるだけ集めておくに越したことはない。
まずシルヴィアが実家へ挨拶に行くという名目で、数日の休暇を取る。
実家から帰る途中、ミュリエルが住む村に立ち寄り、彼女について調査する予定だ。
両親や兄弟と顔を合わせるのは気が進まなかったが、腹を括る。
実家に着いて、メリーローズと共に高等学院に入ることになったと伝えると、案の定、父の眉間のシワが深くなったが、将来的にメリーローズについて王宮で働くことになりそうだと伝え、「わたくしが王宮で王族や高位貴族と接する機会が増えれば、父上や兄上たちにも何かと有利になるかと存じます」と言ったところ、シワが緩み、承諾してくれた。
「現金なものだ」
確かに自分がメリーローズにつくことで、ランズダウン公爵が実家のマコーリー男爵家に、便宜を図ってくれることも、もしかしたらあるかも知れない。
しかしそのチャンスを活かせるかどうかは、父や兄弟たちの技量にかかってくる。
「あまり期待はできないけど」
実家を後にして、馬車に揺られながらシルヴィアは独り言ちた。
* * *
一方メリーローズも、入学直前時点でのアルフレッドやメルヴィンの精神状態(ゲームの強制力の状態)を確認し、フェリクスの様子を聞き出したり、新しく入ってくるという平民の少女――ミュリエル――の噂などをして、反応を確かめることにした。
シルヴィアが実家に出発した日の午後、さっそく兄メルヴィンに頼みこむ。
「アルフレッド様にお会いしたいの。お茶会を開きたいのだけど、ご招待できないかしら?」
妹に甘いメルヴィンは一も二もなく賛成して、翌々日にはランズダウン邸の中庭にアルフレッドを迎えていた。
「ようこそお越しくださいました、アルフレッド様」
メリーローズの蕩けるような笑顔に迎えられ、アルフレッドの顔も笑みが零れる。
「お招きありがとう、婚約者どの」
二人を見守るメルヴィンも、嬉しそうだ。
和やかな雰囲気の中、メリーローズはお茶会を始めた。
シルヴィアがいないため、メルヴィン付きのメイドたちがお茶やお菓子を運んでくる。
「あれ? 今日はいつものメイドが見当たらないね」
アルフレッドがすぐに気づいた。
「ええ、高等学院入学前に、ご両親に挨拶をしに行っているの」
「彼女、メリーと一緒に授業を聴講することになったんだよ」
メリーローズの話を、メルヴィンが補足する。
おかげで自然と高等学院の話題へと流れを作ることができた。
「ところで、わたくし高等学院に入ってから、上手くやっていけるかしら……と、少し不安なんですの」
持っていたティーカップを下におろし、両手で包む。
目線もお茶を追うように下げると自然に伏し目になり、不安げな様子の演出を助けた。
「大丈夫だよ! メリーローズなら」
演技とも知らず、アルフレッドがフォローする。
「中等院時代のクラスメイトも、何人か一緒に進学するんだろう?」
「ええ、でも初等院から中等院に上がるときは、クラスのほぼ全員が一緒に進学したのに対し、今回は半分以上がご一緒しないことになるんです。心細いですわ」
兄の励ましにも、むしろそれが不安要素だと訴えてみる。
貴族の中にはマコーリー男爵のように「女性に高い教養は必要ない」と考える者も多く、そういった親を持つ貴族の娘は、最高学府である高等学院への進学はしない。
半分以上が進学しない、とはそういう意味だ。
つまりはその分、新しい学生が半分やってくるということで、その中に当然ミュリエルが含まれる。
「外部から受験してくる子たちが、多くいるよね。……そういえば、今年の新入生に平民の女の子がいると聞いたよ」
なんとアルフレッドからミュリエルの話題を振ってきた。
「ま、まあ……そうですのね。平民の方とは接したことがないから、ますます不安ですわ」
どうやってミュリエルの話にもっていこうかと考えていたところで、早くも、そしてアルフレッドの方から出してくると思わず、メリーローズは少々驚いた。
とはいえ、チャンスだ。
「そう構えなくても大丈夫だよ。僕らの一学年下、メリーからみたら一年先輩にも、平民出身の学生がいるし」
「ああ、フィルバート・エンフィールドだね」
メルヴィンとアルフレッドの会話の中に、聞き覚えのある名前が出てピクリと指が動く。
(フィルバート……。「攻略対象」の一人ね)
「攻略対象」ということは、メリーローズからみれば、アルフレッドのダーリン候補に位置づけられる。
「ちょっとクセはあるけど、根はいい奴なんだよね」
「そうそう」
アルフレッドとメルヴィンのフィルバート評を聞きながら、メリーローズも前世でプレイしたフィルバートのことを思い出していた。
(平民といっても、大富豪の御曹司なのよね。父親が少々強引な手を使って商売を広げていて、気性の真っ直ぐなフィルフィル《※メリーローズが勝手につけたあだ名》は反抗してしまう……)
情報は集めるだけ集めておくに越したことはない。
まずシルヴィアが実家へ挨拶に行くという名目で、数日の休暇を取る。
実家から帰る途中、ミュリエルが住む村に立ち寄り、彼女について調査する予定だ。
両親や兄弟と顔を合わせるのは気が進まなかったが、腹を括る。
実家に着いて、メリーローズと共に高等学院に入ることになったと伝えると、案の定、父の眉間のシワが深くなったが、将来的にメリーローズについて王宮で働くことになりそうだと伝え、「わたくしが王宮で王族や高位貴族と接する機会が増えれば、父上や兄上たちにも何かと有利になるかと存じます」と言ったところ、シワが緩み、承諾してくれた。
「現金なものだ」
確かに自分がメリーローズにつくことで、ランズダウン公爵が実家のマコーリー男爵家に、便宜を図ってくれることも、もしかしたらあるかも知れない。
しかしそのチャンスを活かせるかどうかは、父や兄弟たちの技量にかかってくる。
「あまり期待はできないけど」
実家を後にして、馬車に揺られながらシルヴィアは独り言ちた。
* * *
一方メリーローズも、入学直前時点でのアルフレッドやメルヴィンの精神状態(ゲームの強制力の状態)を確認し、フェリクスの様子を聞き出したり、新しく入ってくるという平民の少女――ミュリエル――の噂などをして、反応を確かめることにした。
シルヴィアが実家に出発した日の午後、さっそく兄メルヴィンに頼みこむ。
「アルフレッド様にお会いしたいの。お茶会を開きたいのだけど、ご招待できないかしら?」
妹に甘いメルヴィンは一も二もなく賛成して、翌々日にはランズダウン邸の中庭にアルフレッドを迎えていた。
「ようこそお越しくださいました、アルフレッド様」
メリーローズの蕩けるような笑顔に迎えられ、アルフレッドの顔も笑みが零れる。
「お招きありがとう、婚約者どの」
二人を見守るメルヴィンも、嬉しそうだ。
和やかな雰囲気の中、メリーローズはお茶会を始めた。
シルヴィアがいないため、メルヴィン付きのメイドたちがお茶やお菓子を運んでくる。
「あれ? 今日はいつものメイドが見当たらないね」
アルフレッドがすぐに気づいた。
「ええ、高等学院入学前に、ご両親に挨拶をしに行っているの」
「彼女、メリーと一緒に授業を聴講することになったんだよ」
メリーローズの話を、メルヴィンが補足する。
おかげで自然と高等学院の話題へと流れを作ることができた。
「ところで、わたくし高等学院に入ってから、上手くやっていけるかしら……と、少し不安なんですの」
持っていたティーカップを下におろし、両手で包む。
目線もお茶を追うように下げると自然に伏し目になり、不安げな様子の演出を助けた。
「大丈夫だよ! メリーローズなら」
演技とも知らず、アルフレッドがフォローする。
「中等院時代のクラスメイトも、何人か一緒に進学するんだろう?」
「ええ、でも初等院から中等院に上がるときは、クラスのほぼ全員が一緒に進学したのに対し、今回は半分以上がご一緒しないことになるんです。心細いですわ」
兄の励ましにも、むしろそれが不安要素だと訴えてみる。
貴族の中にはマコーリー男爵のように「女性に高い教養は必要ない」と考える者も多く、そういった親を持つ貴族の娘は、最高学府である高等学院への進学はしない。
半分以上が進学しない、とはそういう意味だ。
つまりはその分、新しい学生が半分やってくるということで、その中に当然ミュリエルが含まれる。
「外部から受験してくる子たちが、多くいるよね。……そういえば、今年の新入生に平民の女の子がいると聞いたよ」
なんとアルフレッドからミュリエルの話題を振ってきた。
「ま、まあ……そうですのね。平民の方とは接したことがないから、ますます不安ですわ」
どうやってミュリエルの話にもっていこうかと考えていたところで、早くも、そしてアルフレッドの方から出してくると思わず、メリーローズは少々驚いた。
とはいえ、チャンスだ。
「そう構えなくても大丈夫だよ。僕らの一学年下、メリーからみたら一年先輩にも、平民出身の学生がいるし」
「ああ、フィルバート・エンフィールドだね」
メルヴィンとアルフレッドの会話の中に、聞き覚えのある名前が出てピクリと指が動く。
(フィルバート……。「攻略対象」の一人ね)
「攻略対象」ということは、メリーローズからみれば、アルフレッドのダーリン候補に位置づけられる。
「ちょっとクセはあるけど、根はいい奴なんだよね」
「そうそう」
アルフレッドとメルヴィンのフィルバート評を聞きながら、メリーローズも前世でプレイしたフィルバートのことを思い出していた。
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