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第二章 ゲーム開始
035 公爵令嬢のメイド、頭が正常に働く
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部屋に戻り一息ついたメリーローズであったが、周囲が敵だらけという今の状況に、改めて頭を抱えていた。
まず、ちょっとでもミュリエルと不仲な様子を見せたら、命を狙われかねないフェリクスがいる。
更に、ミュリエルをアルフレッドの恋人にするため、ドラッグの罠を仕掛けようとするヘザーがいる。
そして、ランズダウン公爵の宿敵ブロムリー公爵が、自分の娘をアルフレッドの婚約者に差し替えようとして、ヘザーと手を組んでいる。
もう一つ言うならば、これは自分で蒔いた種ではあるが、もしバレたら死刑になりかねないBL小説を書いていて、この秘密を暴かれないよう、立ち回る必要がある。
「無理ー、こんなの無理―、ストレス半端ないー。アル受けでも書かなきゃ、やっていられないわ!」
「…………タフですね」
ストレスの要因の一つであるBL小説を、ことここにいたっても書こうとするメリーローズの姿に、畏敬の念を抱かずにいられないシルヴィアであった。
「明日の授業はお休みしますか?」
明日は一時間目から、ミュリエルとその仲間、アデレイド、フェリクスと一緒の授業である。
メリーローズ包囲網のオールスターが、勢ぞろいだ。
「そうしたいのはヤマヤマだけど、そんなこと言っていたら、休学しないといけなくなるからなあ」
「いっそのこと、体調を崩したということにして、一年休学するという手もございますよ。そうすれば彼らとは一学年離れますし、同じ授業を受けることも少なくなるでしょう」
「でも体を壊したなんて言ったら、お兄様をはじめ家族が総出で心配して、わたくしを病院に放り込んで検査漬けにしかねないわ」
「……確かに」
そうなれば、仮病なんて簡単にバレる。
「いいわ、とりあえず今日は、授業が終わったらアルたん受の小説を書きまくって、発散するのを楽しみに乗り切るから!」
というわけで、緊迫の一時間目の教室でのこと――
生徒会室で毎日のように顔を突き合わせていたせいか、気づけばメリーローズは、シルヴィアやアデレイドだけでなく、ミュリエルにその友人たち、更にフェリクスと、なるべく顔を合わせたくない面々と一緒に、机を並べて受講する羽目になっていた。
なにしろ教室に入るや否や、「こっちだよ」とフェリクスから声がかかり、右隣には彼が、左隣にはミュリエルたちが座っている中に、半強制的に誘導されてしまったのである。
(まわり中を敵に囲まれながら、仲良しこよしの顔をしなければいけないなんて……!)
歯ぎしりしたい気持ちを隠しながら、笑顔を振りまく。
「まあ、わざわざお席を用意していただくなんて、恐縮でございますわ」
横を見ると、シルヴィアも笑顔を作りつつも、警戒している様子である。
そして、ああ、アデレイド。
純粋無垢ゆえにドラッグの罠に落ちてしまった古い友人。
彼女もまた、クスリ漬けになっていることをつゆ伺わせない笑顔で、「メリーローズ様ぁ」と手を振ってくる。
将を射んとすれば先ず馬を射よ、の諺のごとく、メリーローズを射んとするために、先ずアデレイドが射られてしまったのだ。
だからアデレイドがヤク中になったのは、メリーローズにも責任がある。ちょっとだけある。
しかし、今や彼女もまた、自分をアルフレッドの婚約者の座から引きずり落そうとする勢力の一員なのだ。
「メリーローズ様ぁ、今ミュリエルさんたちともお話していたんですけど、今日の午後、皆さんでお茶をいただきませんかあ?」
「き、昨日のリベンジ、ということかしら?」
「ええ」
相槌を打ったのは、アデレイドではなくミュリエルだ。隣のエルシーと、そしてあのヘザーもまた頷いている。
断れない……。メリーローズは、腹をくくった。
「まあ……、楽しみですわ」
引きつる頬の筋肉を、意志の力で押さえつつ笑顔を見せると、なぜか右隣のフェリクスがこう言った。
「僕も、とても楽しみです」
(え? 待って。この黒ひつじ坊ちゃんも、お茶会に参加するの? 女子ばっかりの席に?)
しかし既にお茶会メンバーが揃っているこの教室において、女子の中にいてもまったく違和感が仕事をしていないフェリクス第三王子殿下。
たぶんカフェテラスで一緒にお茶をしていても、よく観察しなければ少女たちの群れにしか、見えないだろう。
まず、ちょっとでもミュリエルと不仲な様子を見せたら、命を狙われかねないフェリクスがいる。
更に、ミュリエルをアルフレッドの恋人にするため、ドラッグの罠を仕掛けようとするヘザーがいる。
そして、ランズダウン公爵の宿敵ブロムリー公爵が、自分の娘をアルフレッドの婚約者に差し替えようとして、ヘザーと手を組んでいる。
もう一つ言うならば、これは自分で蒔いた種ではあるが、もしバレたら死刑になりかねないBL小説を書いていて、この秘密を暴かれないよう、立ち回る必要がある。
「無理ー、こんなの無理―、ストレス半端ないー。アル受けでも書かなきゃ、やっていられないわ!」
「…………タフですね」
ストレスの要因の一つであるBL小説を、ことここにいたっても書こうとするメリーローズの姿に、畏敬の念を抱かずにいられないシルヴィアであった。
「明日の授業はお休みしますか?」
明日は一時間目から、ミュリエルとその仲間、アデレイド、フェリクスと一緒の授業である。
メリーローズ包囲網のオールスターが、勢ぞろいだ。
「そうしたいのはヤマヤマだけど、そんなこと言っていたら、休学しないといけなくなるからなあ」
「いっそのこと、体調を崩したということにして、一年休学するという手もございますよ。そうすれば彼らとは一学年離れますし、同じ授業を受けることも少なくなるでしょう」
「でも体を壊したなんて言ったら、お兄様をはじめ家族が総出で心配して、わたくしを病院に放り込んで検査漬けにしかねないわ」
「……確かに」
そうなれば、仮病なんて簡単にバレる。
「いいわ、とりあえず今日は、授業が終わったらアルたん受の小説を書きまくって、発散するのを楽しみに乗り切るから!」
というわけで、緊迫の一時間目の教室でのこと――
生徒会室で毎日のように顔を突き合わせていたせいか、気づけばメリーローズは、シルヴィアやアデレイドだけでなく、ミュリエルにその友人たち、更にフェリクスと、なるべく顔を合わせたくない面々と一緒に、机を並べて受講する羽目になっていた。
なにしろ教室に入るや否や、「こっちだよ」とフェリクスから声がかかり、右隣には彼が、左隣にはミュリエルたちが座っている中に、半強制的に誘導されてしまったのである。
(まわり中を敵に囲まれながら、仲良しこよしの顔をしなければいけないなんて……!)
歯ぎしりしたい気持ちを隠しながら、笑顔を振りまく。
「まあ、わざわざお席を用意していただくなんて、恐縮でございますわ」
横を見ると、シルヴィアも笑顔を作りつつも、警戒している様子である。
そして、ああ、アデレイド。
純粋無垢ゆえにドラッグの罠に落ちてしまった古い友人。
彼女もまた、クスリ漬けになっていることをつゆ伺わせない笑顔で、「メリーローズ様ぁ」と手を振ってくる。
将を射んとすれば先ず馬を射よ、の諺のごとく、メリーローズを射んとするために、先ずアデレイドが射られてしまったのだ。
だからアデレイドがヤク中になったのは、メリーローズにも責任がある。ちょっとだけある。
しかし、今や彼女もまた、自分をアルフレッドの婚約者の座から引きずり落そうとする勢力の一員なのだ。
「メリーローズ様ぁ、今ミュリエルさんたちともお話していたんですけど、今日の午後、皆さんでお茶をいただきませんかあ?」
「き、昨日のリベンジ、ということかしら?」
「ええ」
相槌を打ったのは、アデレイドではなくミュリエルだ。隣のエルシーと、そしてあのヘザーもまた頷いている。
断れない……。メリーローズは、腹をくくった。
「まあ……、楽しみですわ」
引きつる頬の筋肉を、意志の力で押さえつつ笑顔を見せると、なぜか右隣のフェリクスがこう言った。
「僕も、とても楽しみです」
(え? 待って。この黒ひつじ坊ちゃんも、お茶会に参加するの? 女子ばっかりの席に?)
しかし既にお茶会メンバーが揃っているこの教室において、女子の中にいてもまったく違和感が仕事をしていないフェリクス第三王子殿下。
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