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第二章 ゲーム開始
056-2
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「お嬢様、いい加減立ち直ってください」
「そんなこと言ったって、シルヴィアぁ」
メリーローズはメリーローズで、あれから一週間も経とうというのに、未だにアーネストショックから抜けきれていない。
そろそろこのジメジメモードを終了してもらわないと、自分にもカビが生えそうな気分になるシルヴィアである。
「あのね、アーネストはツンデレなのよ。プライドが高い分、身分や容姿、能力に生まれながら恵まれているアルたんに、内心反発する心がありながらも惹かれていく……その相反する心がツンデレとなって表れるの!」
「『つんでれ』とは何ぞや?」
「ん、もう! 文字通り『ツン』して『デレ』るの! ツンでデレ! この態度のギャップがいいのよう! ツンデレからしか得られない栄養がそこにはあったの!」
何が文字通りなのか、よくわからない。
それにフィルバートのときにも「下剋上からしか得られない栄養」がどうたらとか言っていた。
BLには、あちこちに栄養が潜んでいるらしい。
「とにかく、もう元気を出してくださ……」
そう言いつつ。シルヴィアが部屋のドアを開けたときである。
「天……国…………?」
二人はメリーローズの実家であるランズダウン邸に帰ってきたところだった。
そしてメイドから「アルフレッド様がおいでです」と聞かされ、挨拶をしようと応接室に立ち寄ったのだ。
はたしてメリーローズの眼に飛び込んできたのは、涙を浮かべ儚げな様子のアルフレッドと、彼にぴたりと寄り添い、肩を抱いて気遣わしげに目を見つめているメルヴィンの姿だった。
「お……おお…………」
乙女ゲーム「レジェンダリー・ローズ」の中でも、最も人気のあるカップリング、メルアル。
つまり「メルヴィン×アルフレッド」。
前世での菜摘も、一押しのカップリングである。
その二人が、イチャイチャしていた。
目の前で。
いやっほう!
先ほどまでのジメジメはどこへやら、メリーローズの脳内にはバラの花が咲き乱れた。
一方のメルヴィンたちも、メリーローズが入室したことに気がつく。
兄として、メリーローズに一言問い質さなければ気が済まない状態になっていたメルヴィンが立ち上がり、妹に詰め寄った。
「おい、メリー、ちょっと聞きたいんだが」
「メルヴィン、落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか。メリー、正直に話して欲しい。……お前、アーネストに恋しているのか?」
「……はあ?」
メリーローズにとっては、まさしく「はあ?」案件である。
アルたんのダーリンとしては愛でているものの、自分の中には恋も鯉もない。
「いいいええ、ぜんっぜん、恋してなんておりませんわ!」
アーネストに対してちょっと失礼なくらいに、全否定してみせた。
「…………え…………、そうなのか?」
「勿論ですわ。ええ、それはもう、これっっぽっっちも」
やっぱり失礼だ。
一方、親友のために憤慨していたメルヴィンは拍子抜けである。
「いや……しかし……」
口ごもりアルフレッドに目線を送る。
アルフレッドもまた、あの日聞いた言葉の意味を確認した。
「先週、テーラーから帰るとき、君はアーネストがヘザーに恋したことを嘆いていたよね?」
「ああ! そのことですの?」
あれを聞かれていたと合点したメリーローズは、心の傷が癒えた今、ペラペラと状況を説明する。
「アーネスト様には、他に恋仲になって欲しい方がいましたもので、がっかりしてしまいましたの。でも、大事なのはご本人たちの気持ちですものね。今はアーネスト様とヘザーの恋を応援していますわ」
(現金なものだ……)
メリーローズを見るシルヴィアの表情は乾ききっていた。
(なるほど、メリーの友人の誰かがアーネストに恋をして、それを応援していたのに、彼がヘザーを好きになったので、がっかりしていたのか)
一方、メルヴィンはまっとう且つ、的外れな判断をした。
ニッコリ微笑むと、再度メリーローズに問いかける。
「確認するけど、アルフレッドよりアーネストを好き、なんてことはないんだよね?」
「勿論ですわ! わたくしには、アルフレッド様のほうがずっと大事ですわ!」
その答えに満足し、アルフレッドに笑顔を向けた。
「……だってさ」
一方のアルフレッドも、この一週間の苦しみから解き放たれて嬉しそうに微笑む。
「ああ。騒がせてしまって、済まない」
照れた表情のアルフレッドの頬を、メルヴィンが指で突いた。
「よかったな」
当人たちにとっては、何気ない友人としての仕草であった。が、
(いやん、イチャイチャ。ごっつぁんです!)
しゅぽーしゅぽーと邪気を放つ主人の手を掴み、シルヴィアが退室を促す。
「さ、お部屋に参りますよ」
「ええー、もうちょっと二人を観察させてー」
駄々をこねるメリーローズを引っ張りながら、シルヴィアは別の考え事をしていた。
(眼鏡を取ったヘザー嬢の顔、誰かに似ている気がしているのだけど、誰だったか……)
「そんなこと言ったって、シルヴィアぁ」
メリーローズはメリーローズで、あれから一週間も経とうというのに、未だにアーネストショックから抜けきれていない。
そろそろこのジメジメモードを終了してもらわないと、自分にもカビが生えそうな気分になるシルヴィアである。
「あのね、アーネストはツンデレなのよ。プライドが高い分、身分や容姿、能力に生まれながら恵まれているアルたんに、内心反発する心がありながらも惹かれていく……その相反する心がツンデレとなって表れるの!」
「『つんでれ』とは何ぞや?」
「ん、もう! 文字通り『ツン』して『デレ』るの! ツンでデレ! この態度のギャップがいいのよう! ツンデレからしか得られない栄養がそこにはあったの!」
何が文字通りなのか、よくわからない。
それにフィルバートのときにも「下剋上からしか得られない栄養」がどうたらとか言っていた。
BLには、あちこちに栄養が潜んでいるらしい。
「とにかく、もう元気を出してくださ……」
そう言いつつ。シルヴィアが部屋のドアを開けたときである。
「天……国…………?」
二人はメリーローズの実家であるランズダウン邸に帰ってきたところだった。
そしてメイドから「アルフレッド様がおいでです」と聞かされ、挨拶をしようと応接室に立ち寄ったのだ。
はたしてメリーローズの眼に飛び込んできたのは、涙を浮かべ儚げな様子のアルフレッドと、彼にぴたりと寄り添い、肩を抱いて気遣わしげに目を見つめているメルヴィンの姿だった。
「お……おお…………」
乙女ゲーム「レジェンダリー・ローズ」の中でも、最も人気のあるカップリング、メルアル。
つまり「メルヴィン×アルフレッド」。
前世での菜摘も、一押しのカップリングである。
その二人が、イチャイチャしていた。
目の前で。
いやっほう!
先ほどまでのジメジメはどこへやら、メリーローズの脳内にはバラの花が咲き乱れた。
一方のメルヴィンたちも、メリーローズが入室したことに気がつく。
兄として、メリーローズに一言問い質さなければ気が済まない状態になっていたメルヴィンが立ち上がり、妹に詰め寄った。
「おい、メリー、ちょっと聞きたいんだが」
「メルヴィン、落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか。メリー、正直に話して欲しい。……お前、アーネストに恋しているのか?」
「……はあ?」
メリーローズにとっては、まさしく「はあ?」案件である。
アルたんのダーリンとしては愛でているものの、自分の中には恋も鯉もない。
「いいいええ、ぜんっぜん、恋してなんておりませんわ!」
アーネストに対してちょっと失礼なくらいに、全否定してみせた。
「…………え…………、そうなのか?」
「勿論ですわ。ええ、それはもう、これっっぽっっちも」
やっぱり失礼だ。
一方、親友のために憤慨していたメルヴィンは拍子抜けである。
「いや……しかし……」
口ごもりアルフレッドに目線を送る。
アルフレッドもまた、あの日聞いた言葉の意味を確認した。
「先週、テーラーから帰るとき、君はアーネストがヘザーに恋したことを嘆いていたよね?」
「ああ! そのことですの?」
あれを聞かれていたと合点したメリーローズは、心の傷が癒えた今、ペラペラと状況を説明する。
「アーネスト様には、他に恋仲になって欲しい方がいましたもので、がっかりしてしまいましたの。でも、大事なのはご本人たちの気持ちですものね。今はアーネスト様とヘザーの恋を応援していますわ」
(現金なものだ……)
メリーローズを見るシルヴィアの表情は乾ききっていた。
(なるほど、メリーの友人の誰かがアーネストに恋をして、それを応援していたのに、彼がヘザーを好きになったので、がっかりしていたのか)
一方、メルヴィンはまっとう且つ、的外れな判断をした。
ニッコリ微笑むと、再度メリーローズに問いかける。
「確認するけど、アルフレッドよりアーネストを好き、なんてことはないんだよね?」
「勿論ですわ! わたくしには、アルフレッド様のほうがずっと大事ですわ!」
その答えに満足し、アルフレッドに笑顔を向けた。
「……だってさ」
一方のアルフレッドも、この一週間の苦しみから解き放たれて嬉しそうに微笑む。
「ああ。騒がせてしまって、済まない」
照れた表情のアルフレッドの頬を、メルヴィンが指で突いた。
「よかったな」
当人たちにとっては、何気ない友人としての仕草であった。が、
(いやん、イチャイチャ。ごっつぁんです!)
しゅぽーしゅぽーと邪気を放つ主人の手を掴み、シルヴィアが退室を促す。
「さ、お部屋に参りますよ」
「ええー、もうちょっと二人を観察させてー」
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