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第二章 ゲーム開始
056 公爵令嬢、雨降って地固まる
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メリーローズとシルヴィアの会話が、思わぬところに飛び火していた。
「アーネストがヘザーに恋をして、なぜメリーローズがそれを悲しむんだ?」
あまり積極的に祝福出来ない組み合わせだったとしても、別に悲しむ必要はない。
アーネストが他の女性に恋をして、メリーローズがそれを悲しむということは……
(答えはただ一つ、メリーローズはアーネストに恋していたということだ)
アルフレッドは真っ当な思考の持ち主ゆえに、真っ当な答えにたどり着いてしまった。
確かに、アルフレッドの常識の範囲で考えるなら、それが一番妥当だろう。
彼は愛する婚約者が腐女子であるなどと、ゆめにも思わなかったのだから。
というか、そもそも「腐女子」という言葉すら、彼は知らない。
(メリーローズ……そうだったのか……君は、アーネストを……)
ほんの数時間前に、メルヴィンの「妹は君ともっと『お近づきになりたい』と思っていることは間違いない!」などという言葉を真に受けて、浮かれていた自分が道化に思える。
今のいままで、彼女がアーネストに恋をしているとわかるような態度は、一度だってとったことはない。
その理由を考えると、自分のせいだったのでは? という疑惑が浮かんだ。
「メリーローズは僕という婚約者がいたために、自分の本当の心を隠し続けていたのではないか?」
彼女にとって自分の存在が、恋の障害となってしまっていたのだろうか……!
自分との婚約のために、メリーローズは本当に好きな相手に好きだと言うことすらかなわず、失恋してしまったということか……!
アルフレッドの優しさや思慮深さといった美徳は、腐女子・メリーローズという婚約者を前にして、ことごとく意味をなさなかった。
まさか自分の存在が、彼女の兄や友人たちとの「あんなこと」や「こんなこと」の妄想のタネになっているとはつゆ知らず、メリーローズへの罪悪感に苛まれる。
罪悪感に苛まれなければいけないのはメリーローズの方なのに、ひどい話だ。
ともあれ、そんな調子で一人悩み苦しんでいると、親友であるメルヴィンがアルフレッドの異変に気づくことになる。
「どうした? アルフレッド。最近顔色が悪いな」
「メルヴィン……」
自分が元気のない原因が、当のメルヴィンの妹だとはすぐに言えなかったものの、何度も理由を尋ねられれば隠し通すことは出来ない。
ついには「メリーローズの隠れた恋心」について悩んでいたことを、告白することになった。
「なんだって、メリーがアーネストに恋……?」
「しっ、声が大きい」
二人がいるのはランズダウン邸の応接室、つまりランズダウン家のメイドや家人が出入して、話の内容が聞かれてしまう可能性がある場所だ。
メルヴィンもアルフレッドの告白の内容を知らなかったため、自室に連れて行って質問しなかったのだが、それを後悔する。
アルフレッドの悩みごとが、メリーリーズの不貞――まだ結婚こそしていないし体の関係があるわけでもないのだが、王族と婚約している身で他の男に現を抜かしているとなると、不貞と言われても仕方がないことだ――とはゆめにも思わなかったのだ。
今更ながら、自分の部屋に移動しようと提案しかけたが、当のアルフレッドが心の中で葛藤し続けた思いを告白した緩みからか、目に涙を浮かべているのを見て、しばらく落ち着くまで応接室にいることにする。
「それが本当なら、兄として君に謝罪する。……しかし、メリーがアーネストに懸想しているなんて、まったく感じられなかったんだが」
「そりゃあ態度に出すわけにいかなかったのだから、兄である君が気づかなかったとしても無理はないよ。……それだけメリーローズも苦しかったと思うんだ」
そこまで胸の奥底に秘めていたはずの恋ならば、道端を歩きながらシルヴィアに泣き言を繰り出すはずはないのだが、アルフレッドは婚約者可愛さのあまり、そのことに気づいていない。
「アーネストがヘザーに恋をして、なぜメリーローズがそれを悲しむんだ?」
あまり積極的に祝福出来ない組み合わせだったとしても、別に悲しむ必要はない。
アーネストが他の女性に恋をして、メリーローズがそれを悲しむということは……
(答えはただ一つ、メリーローズはアーネストに恋していたということだ)
アルフレッドは真っ当な思考の持ち主ゆえに、真っ当な答えにたどり着いてしまった。
確かに、アルフレッドの常識の範囲で考えるなら、それが一番妥当だろう。
彼は愛する婚約者が腐女子であるなどと、ゆめにも思わなかったのだから。
というか、そもそも「腐女子」という言葉すら、彼は知らない。
(メリーローズ……そうだったのか……君は、アーネストを……)
ほんの数時間前に、メルヴィンの「妹は君ともっと『お近づきになりたい』と思っていることは間違いない!」などという言葉を真に受けて、浮かれていた自分が道化に思える。
今のいままで、彼女がアーネストに恋をしているとわかるような態度は、一度だってとったことはない。
その理由を考えると、自分のせいだったのでは? という疑惑が浮かんだ。
「メリーローズは僕という婚約者がいたために、自分の本当の心を隠し続けていたのではないか?」
彼女にとって自分の存在が、恋の障害となってしまっていたのだろうか……!
自分との婚約のために、メリーローズは本当に好きな相手に好きだと言うことすらかなわず、失恋してしまったということか……!
アルフレッドの優しさや思慮深さといった美徳は、腐女子・メリーローズという婚約者を前にして、ことごとく意味をなさなかった。
まさか自分の存在が、彼女の兄や友人たちとの「あんなこと」や「こんなこと」の妄想のタネになっているとはつゆ知らず、メリーローズへの罪悪感に苛まれる。
罪悪感に苛まれなければいけないのはメリーローズの方なのに、ひどい話だ。
ともあれ、そんな調子で一人悩み苦しんでいると、親友であるメルヴィンがアルフレッドの異変に気づくことになる。
「どうした? アルフレッド。最近顔色が悪いな」
「メルヴィン……」
自分が元気のない原因が、当のメルヴィンの妹だとはすぐに言えなかったものの、何度も理由を尋ねられれば隠し通すことは出来ない。
ついには「メリーローズの隠れた恋心」について悩んでいたことを、告白することになった。
「なんだって、メリーがアーネストに恋……?」
「しっ、声が大きい」
二人がいるのはランズダウン邸の応接室、つまりランズダウン家のメイドや家人が出入して、話の内容が聞かれてしまう可能性がある場所だ。
メルヴィンもアルフレッドの告白の内容を知らなかったため、自室に連れて行って質問しなかったのだが、それを後悔する。
アルフレッドの悩みごとが、メリーリーズの不貞――まだ結婚こそしていないし体の関係があるわけでもないのだが、王族と婚約している身で他の男に現を抜かしているとなると、不貞と言われても仕方がないことだ――とはゆめにも思わなかったのだ。
今更ながら、自分の部屋に移動しようと提案しかけたが、当のアルフレッドが心の中で葛藤し続けた思いを告白した緩みからか、目に涙を浮かべているのを見て、しばらく落ち着くまで応接室にいることにする。
「それが本当なら、兄として君に謝罪する。……しかし、メリーがアーネストに懸想しているなんて、まったく感じられなかったんだが」
「そりゃあ態度に出すわけにいかなかったのだから、兄である君が気づかなかったとしても無理はないよ。……それだけメリーローズも苦しかったと思うんだ」
そこまで胸の奥底に秘めていたはずの恋ならば、道端を歩きながらシルヴィアに泣き言を繰り出すはずはないのだが、アルフレッドは婚約者可愛さのあまり、そのことに気づいていない。
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