悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

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第三章 BL小説の存在、世に知られる

067 公爵令嬢、メイドと言い争う

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「う……ケホ、ケホ」

 アルフレッドは気絶したまま、苦しそうに咳き込んでいる。

「アルフレッド、しっかりしろ。おい、アルフレッド」

「お兄様。こういうときは、そのう……人口呼吸をしなければいけないのではないでしょうか?」

「人工呼吸? なんだ、それは?」

「ご存じありませんの? マウス・トゥ・マウスで息を吹き込んで、呼吸を促すのですわ」

 モジモジと人工呼吸の説明をするメリーローズの脳内に去来しているのは、勿論メルヴィンとアルフレッドのキスシーンである。

「マウス・トゥ・マウス……。わかった! お前がやれ!」

 説明を聞いたメルヴィンの脳内に浮かんだのもまた、メリーローズとアルフレッドのキスシーンであった。

「何を仰いますの? ここはお兄様がなさるべきでしょう!」

「いいや、アルフレッドはお前の婚約者だ。お前がやれ!」

「いいえ、お兄様が!」

「いいや、お前が!」

「あのー……」

 ほとんど兄妹ゲンカの様相を帯びてきた、アルフレッドの唇の「奪い合い」ならぬ「押しつけ合い」に、シルヴィアが声をかける。

「アルフレッド殿下は、水を少し飲まれたようですが、ご自分で呼吸もしていますし、脈もしっかりしています」

「ついでにいうと、意識も戻っているよ」

 シルヴィアの後ろから、申し訳なさそうにアルフレッドも声を掛けた。

「その『人工呼吸』? というのは、もう必要……ないから……」

 メリーローズとメルヴィンが人工呼吸をさせようと、互いに押しつけ合っている姿に、大いに心を傷つけられていた。

「メルヴィンはともかく、メリーローズも僕とキスするのがそんなに嫌だなんて……」

「い、いえ。嫌だなんて言っていません! ただこの場合、お兄様の方が適任だと思って」

「だから、なんでアルフレッドの唇を奪うのが、俺の方が適任なんだよ! するなら婚約者のお前の方だろうが!」

 再び言い合いが始まりそうになりそうな場面を、シルヴィアが抑えた。

「メルヴィン様、認識が根本的に間違っています。人工呼吸は医療行為です。呼吸が止まっている人が再び呼吸を始めるように、息を吹き込むのが人工呼吸です。キスするわけではありません」

「あ……そうなのか?」

「そうですわ! お兄様、おわかりいただけたところで、今から是非! アルフレッド様に人工呼吸を施しましょう!」

「お嬢様も! すでにその意味はございませんから!」

 シルヴィアはメリーローズを引きずるように、その場から引き揚げた。
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