157 / 404
第三章 BL小説の存在、世に知られる
077 公爵令嬢、女王陛下を推す
しおりを挟む
すっかり緊張感がなくなった一同に、メリーローズが叫んだ。
「皆様! 今は大事なお話の途中ではございませんの?」
その言葉で、室内に緊張感が戻ってきた。
「そうだったね。メリーローズの言う通りだ。……とにかく、彼らが次の国王に誰を選ぶにしろ、今よりかなりブロムリー公爵の望む政策が多く取り入れられるだろう」
「本来、王位継承権の低い位置にいる方を引っ張ってくるだろうからな。王にしてくれた恩をちらつかせられたら、言うことを聞かざるを得ないだろう」
メルヴィンの言葉を聞いて皆の胸に去来したのは、さっき話題に出た「同性愛禁止法」のことだった。
現女王は前国王の唯一の子で、正当な王家の血を引いている。
それでさえ、周囲の思惑を飲み込まざるを得ないこともあったのだ。
絶対的地位にあっても、必ずしも思った通りにはいかず、彼女は王位に就いてからも、ずっと孤独な戦いを強いられてきたのだろう。
メリーローズはそこまで考えて、体の震えを抑えることが出来なかった。
(推せる……! 女王陛下、わたくしは陛下をどこまでも推しますわ!)
仮にも女王陛下を『推し』にしてしまうのは、いかがなものか……と突っ込む者は誰もいない。
さすがのシルヴィアも、邪気を発しない推し思考を読むことはできなかった。
「そういえば、ヴィンセント殿下は、どうしてご婚約者をお決めにならないのでしょうか?」
ミュリエルがふと小声で漏らす。
「兄上は、伴侶はどうしてもご自分で決めたいという、固い決意があるようで、なかなかお眼鏡にかなう女性と出会えていないらしい」
その会話を聞きながら、シルヴィアは以前「ヴィンセント王太子も、ゲームの隠れ攻略対象なのでは?」と考えたことを思い出した。
(あのときは、ちょっとした思いつき程度で流してしまったが、ここにきて現実味を帯びてきたな)
平民のミュリエルが次期国王のお妃になるなど、荒唐無稽な発想だと思っていたのに、まさか宰相たちがそのようなことを画策していたとは、考えてもみなかったことである。
とはいえ、あの頃と違って今ミュリエルにはフィルバートという恋人がいる。
まだ若い二人が、この先結婚までたどり着けるかはわからないが、それでも今好きあっている相手がいるのに、生木を引き裂くような無粋なマネはして欲しくない。
ブロムリー公爵といい、権力者というのは、どうして人の気持ちを平気で踏みにじるようなことが出来るのだろうか。
そのとき、メリーローズが手をあげた。
「アルフレッド様。うちの父のことですが……」
「なんだい? メリーローズ」
「お父様も、女王陛下を王位に就ける際に、何か力をお貸ししたのでしょうか。というか……そのことを盾に、女王陛下に無理を言ったりしていないですか?」
「皆様! 今は大事なお話の途中ではございませんの?」
その言葉で、室内に緊張感が戻ってきた。
「そうだったね。メリーローズの言う通りだ。……とにかく、彼らが次の国王に誰を選ぶにしろ、今よりかなりブロムリー公爵の望む政策が多く取り入れられるだろう」
「本来、王位継承権の低い位置にいる方を引っ張ってくるだろうからな。王にしてくれた恩をちらつかせられたら、言うことを聞かざるを得ないだろう」
メルヴィンの言葉を聞いて皆の胸に去来したのは、さっき話題に出た「同性愛禁止法」のことだった。
現女王は前国王の唯一の子で、正当な王家の血を引いている。
それでさえ、周囲の思惑を飲み込まざるを得ないこともあったのだ。
絶対的地位にあっても、必ずしも思った通りにはいかず、彼女は王位に就いてからも、ずっと孤独な戦いを強いられてきたのだろう。
メリーローズはそこまで考えて、体の震えを抑えることが出来なかった。
(推せる……! 女王陛下、わたくしは陛下をどこまでも推しますわ!)
仮にも女王陛下を『推し』にしてしまうのは、いかがなものか……と突っ込む者は誰もいない。
さすがのシルヴィアも、邪気を発しない推し思考を読むことはできなかった。
「そういえば、ヴィンセント殿下は、どうしてご婚約者をお決めにならないのでしょうか?」
ミュリエルがふと小声で漏らす。
「兄上は、伴侶はどうしてもご自分で決めたいという、固い決意があるようで、なかなかお眼鏡にかなう女性と出会えていないらしい」
その会話を聞きながら、シルヴィアは以前「ヴィンセント王太子も、ゲームの隠れ攻略対象なのでは?」と考えたことを思い出した。
(あのときは、ちょっとした思いつき程度で流してしまったが、ここにきて現実味を帯びてきたな)
平民のミュリエルが次期国王のお妃になるなど、荒唐無稽な発想だと思っていたのに、まさか宰相たちがそのようなことを画策していたとは、考えてもみなかったことである。
とはいえ、あの頃と違って今ミュリエルにはフィルバートという恋人がいる。
まだ若い二人が、この先結婚までたどり着けるかはわからないが、それでも今好きあっている相手がいるのに、生木を引き裂くような無粋なマネはして欲しくない。
ブロムリー公爵といい、権力者というのは、どうして人の気持ちを平気で踏みにじるようなことが出来るのだろうか。
そのとき、メリーローズが手をあげた。
「アルフレッド様。うちの父のことですが……」
「なんだい? メリーローズ」
「お父様も、女王陛下を王位に就ける際に、何か力をお貸ししたのでしょうか。というか……そのことを盾に、女王陛下に無理を言ったりしていないですか?」
1
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
クズ王子から婚約を盾に迫られ全力で逃げたら、その先には別な婚約の罠が待っていました?
gacchi(がっち)
恋愛
隣国からの留学生のリアージュは、お婆様から婚約者を探すように言われていた。リアージュとしては義妹のいない平和な学園で静かに勉強したかっただけ。それなのに、「おとなしく可愛がられるなら婚約してやろう」って…そんな王子はお断り!なんとか逃げた先で出会ったのは、ものすごい美形の公爵令息で。「俺が守ってやろうか?」1年間の婚約期間で結婚するかどうか決めることになっちゃった?恋愛初心者な令嬢と愛に飢えた令息のあまり隠しもしない攻防。
乙女ゲームの悪役令嬢は前世の推しであるパパを幸せにしたい
藤原遊
ファンタジー
悪役令嬢×婚約者の策略ラブコメディ!
「アイリス・ルクレール、その波乱の乙女ゲーム人生――」
社交界の華として名を馳せた公爵令嬢アイリスは、気がつくと自分が“乙女ゲーム”の悪役令嬢に転生していることに気づく。しかし破滅フラグなんて大した問題ではない。なぜなら――彼女には全力で溺愛してくれる最強の味方、「お父様」がいるのだから!
婚約者である王太子レオナードとともに、盗賊団の陰謀や宮廷の策略を華麗に乗り越える一方で、かつて傲慢だと思われた行動が実は周囲を守るためだったことが明らかに……?その冷静さと知恵に、王太子も惹かれていき、次第にアイリスを「婚約者以上の存在」として意識し始める。
しかし、アイリスにはまだ知らない事実が。前世で推しだった“お父様”が、実は娘の危機に備えて影で私兵を動かしていた――なんて話、聞いていませんけど!?
さらに、無邪気な辺境伯の従兄弟や王宮の騎士たちが彼女に振り回される日々が続く中、悪役令嬢としての名を返上し、「新たな人生」を掴むための物語が進んでいく。
「悪役令嬢の未来は破滅しかない」そんな言葉を真っ向から覆す、策略と愛の物語。痛快で心温まる新しい悪役令嬢ストーリーをお楽しみください。
「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている
歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が
ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が
一人分減るな、と思っただけ。
ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。
しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、
イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。
3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された
ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。
「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」
「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
【完結】ヒロインであれば何をしても許される……わけがないでしょう
凛 伊緒
恋愛
シルディンス王国・王太子の婚約者である侯爵令嬢のセスアは、伯爵令嬢であるルーシアにとある名で呼ばれていた。
『悪役令嬢』……と。
セスアの婚約者である王太子に擦り寄り、次々と無礼を働くルーシア。
セスアはついに我慢出来なくなり、反撃に出る。
しかし予想外の事態が…?
ざまぁ&ハッピーエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる