悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

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第三章 BL小説の存在、世に知られる

080 公爵令嬢の父、密かに決意する

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 この話からシルヴィアが推測したのは、それぞれの思惑や利害により、女王の周りの人間も一枚岩ではなさそうということだ。

(宰相はこの国の運営を自分の思い通りにしたいし、大司教は『大精霊教』の力や存在感を示したい、というところか。ベネディクト王婿やうちの旦那様はどうなのだろう……)

 とりあえずランズダウン公爵に関して言えば、自分の娘をこれ以上政治利用されたくはなさそうに感じられて、安心した。

(不安要素といえば、今はうちの旦那様の方がブロムリー公爵より力を持っているが、もし王室の力が弱まったり、ランズダウン家に何かあったとき、果たして宰相や大司教が今のまま、こちらの陣営についているかどうか、わからないことだな……)

 今更ながら、メリーローズがBL本の執筆を中止していて、良かったと思う。

 もし今も原稿を書き続けていて、どこかからその秘密が漏れてしまっていたら……

 シルヴィアは自分が書いたと言い張ってでも、メリーローズとランズダウン家を守るつもりでいたが、そんなことでは守りきれない恐れがある。

(先日、学院の学生宅でBL本が見つかったことが、むしろいい方に転んだかも知れない)


 翌週の休日にも、アルフレッドがやってきた。
 さすがに二度目なので、公爵夫妻も多少落ち着いて迎えたが、この日はランズダウン家全員にとって予想外の人物も乱入した。

「メリーローズ様ー、ごきげんよう」

「あら、アデレイド。ごきげんよう。今日はどうしたの?」

「えー? なんだかメリーローズ様のお顔が見たくなっちゃって……」

 無邪気な笑顔のアデレイドは無敵である。
 一応ロングハースト侯爵家のご令嬢であるアデレイドは、ランズダウン家が認めるメリーローズの友人なので、約束がなくても呼ばれていなくても、思い立ったら突然来てしまうのである。

「今ちょうどお茶の時間だったのよ」

「わあ、お邪魔しまーす」

 シルヴィアとメルヴィンは、内心アデレイドという闖入者ちんにゅうしゃが、下手なことを言い出さないかと身構えたが、結果から言えばむしろこれも良い方に転んだ。

「あー、アルフレッド殿下もいらっしゃいました」

「やあ、アデレイド。君もお茶に呼ばれたのかい?」

「いいえ、勝手に来ちゃったんです。アルフレッド殿下はお呼ばれですかあ? さすがメリーローズ様とあちちですね」

 天真爛漫なアデレイドの言葉に、公爵夫人が反応した。

「アデレイドさん、『あちち』とは、何ですの?」

「はい。アルフレッド殿下とメリーローズ様は仲良しで、手を繋いだりして、あちちなんです!」

「二人が『熱々』という意味だよ。ね? アデレイド」

「はい!」

 すかさず助け舟を出したメルヴィンと、アデレイドの分の茶器を追加で持ってきたシルヴィアも、内心「グッジョブ!」と親指を立てる。

「あらあら、人前で手を繋いだりするなんて、本当に仲がいいのね」

 嬉しそうな公爵夫人にアルフレッドも笑顔で返す。

「とある議題について話し合っていたとき、彼女と僕の意見が一致して、嬉しくなって思わず……。お恥ずかしいです」

「まあ、心が通じ合っているのね」

 コロコロと明るい笑い声を立てる夫人に、メリーローズが恥ずかしがる。

「もう、その辺にして。お母様」

 その様子がむしろ二人のを盛り立てることになった。
 こっそり公爵の様子を窺っていたシルヴィアは、その表情が困ったような顔から何かを決意したような表情に変化したのをみて、ニヤリと笑う。

(お二人の仲を引き離せないとわかってくださったようだ。多分今後は、お嬢様がヴィンセント王太子の婚約者になるという話が出ても、全力で断ってくださるに違いない)
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