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第三章 BL小説の存在、世に知られる
098-2
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「わ、私、初めてマリーゴールド・リックナウ先生の本を読んだときから、BLの虜になってしまって……」
「ええ、ええ、そうでしょうとも」
マリーゴールド・リックナウの中の人ことメリーローズは、にんまりと笑みを浮かべた。
これまでファンレターはもらったことはあるが、こうして目の前で称賛の言葉を浴びるのはどれくらい振りだろう。
長く歩いてきた後で飢えた胃袋の痛みを抱えながら、目の前に温かい食事を用意された旅人のようにメリーローズはがっついた。
「そ、それで、どのカップリングがお好きかしら? ねえねえ、ねえねえ?」
「はい。勿論王道のエド×アルも大好きなんですが、最近はアルブレヒト総攻めシリーズの続きも楽しみにしていて……」
「ガッデム! 敵!」
「えっ! なんで?」
「あらいえ、オホホ……」
思わず本能的に出てしまったアル攻めへの反抗心をひっこめて、胡麻化し笑いをする。
「そ、そうね。わたくしはやはり、王道が好きですが、アルブレヒト総攻めも、わ、悪くない出来ですわ」
「そうなんですぅぅ!」
嬉しそうにメリーローズの両手を掴み返してブンブンと大きく手を上下に振るヴァイオラに、複雑な気持ちを隠し切れない。
(な、なによ。エド×アルより、食いついているじゃないの!)
とりあえず話を先に進めなければいけないことを思い出し、メリーローズは咳払いをしながら、自分の気を静めた。
「オ、オホン。そんなことより、本題に入りますわ。……ヘザーには何を報告しにいらしたの?」
「あ、はいっ!」
まだ少しメリーローズに情報を漏らしてもいいかどうか、一瞬だけ迷った様子のヴァイオラは、意を決したように教えてくれた。
「今日、学院に来た三人は、明日もまた大司教様を連れてやってきます。その際、ミュリエルさんを聖女に仕立てる為の、演出を行うそうです」
(ヴィンセント王太子の婚約者は、わたくしでなくてミュリエルに決めたというわけね)
ある意味、当初の予定通りだ。
しかし「私に王太子妃なんて、無理です」と言って泣いていたミュリエルを思い出すと、奥歯がギリッと音を立てる。
(思い通りには、させませんことよ)
「ええ、ええ、そうでしょうとも」
マリーゴールド・リックナウの中の人ことメリーローズは、にんまりと笑みを浮かべた。
これまでファンレターはもらったことはあるが、こうして目の前で称賛の言葉を浴びるのはどれくらい振りだろう。
長く歩いてきた後で飢えた胃袋の痛みを抱えながら、目の前に温かい食事を用意された旅人のようにメリーローズはがっついた。
「そ、それで、どのカップリングがお好きかしら? ねえねえ、ねえねえ?」
「はい。勿論王道のエド×アルも大好きなんですが、最近はアルブレヒト総攻めシリーズの続きも楽しみにしていて……」
「ガッデム! 敵!」
「えっ! なんで?」
「あらいえ、オホホ……」
思わず本能的に出てしまったアル攻めへの反抗心をひっこめて、胡麻化し笑いをする。
「そ、そうね。わたくしはやはり、王道が好きですが、アルブレヒト総攻めも、わ、悪くない出来ですわ」
「そうなんですぅぅ!」
嬉しそうにメリーローズの両手を掴み返してブンブンと大きく手を上下に振るヴァイオラに、複雑な気持ちを隠し切れない。
(な、なによ。エド×アルより、食いついているじゃないの!)
とりあえず話を先に進めなければいけないことを思い出し、メリーローズは咳払いをしながら、自分の気を静めた。
「オ、オホン。そんなことより、本題に入りますわ。……ヘザーには何を報告しにいらしたの?」
「あ、はいっ!」
まだ少しメリーローズに情報を漏らしてもいいかどうか、一瞬だけ迷った様子のヴァイオラは、意を決したように教えてくれた。
「今日、学院に来た三人は、明日もまた大司教様を連れてやってきます。その際、ミュリエルさんを聖女に仕立てる為の、演出を行うそうです」
(ヴィンセント王太子の婚約者は、わたくしでなくてミュリエルに決めたというわけね)
ある意味、当初の予定通りだ。
しかし「私に王太子妃なんて、無理です」と言って泣いていたミュリエルを思い出すと、奥歯がギリッと音を立てる。
(思い通りには、させませんことよ)
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