悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

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第三章 BL小説の存在、世に知られる

101 公爵令嬢のメイド、準備にいそしむ

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 八時四十五分になり、ミュリエルが学長室に向かった。
 生徒会室から学長室まで、女子の足なら十分弱かかる。

 ミュリエルが出発する前、シルヴィアは式神を一つ渡した。

「これは特殊な術を掛けており、ミュリエル嬢が見聞きしたものが、こちらにも伝わるようになっています。多分何かしらの動きが出るのは、広場に行ったときでしょうが、それまでにあなたの身に何かあった場合、すぐにこちらから対処できるよう、これを持っていただきます」

「…………はい」

 式神を受け取るミュリエルはノロノロとしており、いかにも「受け取りたくない」といった様子だ。

(参ったなあ)

 いくら自分たちを信用できないからといって、もし途中で式神を捨てられてしまっても困る。
 かといって、疑いの目を向けるほどの強い感情を持つ相手に、それを捻じ曲げるほどの強い精神操作をかけるのは、危険過ぎる。

 少し考えたシルヴィアは、ミュリエルの目を覗き込んで、二、三回瞬きをした。

「この式神、可愛いでしょう?」

『は、はい! すごく可愛いです』

(よし! かかった)

 ミュリエルの目には、式神が愛らしいマスコットのように見えるはずである。
 これで、式神を捨てる心配はなくなった。

「行ってらっしゃい」
「頑張ってね!」
「何かあったら、俺がすぐ駆け付けるからな!」

 他のメンバーに見送られるミュリエルを傍目はために、メリーローズがシルヴィアに囁く。

「さっき、何かしたの?」

「よくおわかりで。式神を捨てられないよう、ごく軽い精神操作術をかけました」

「精神操作? ……ああ、催眠術みたいなやつね」

「なるほど、ナツミ様の世界では『さいみんじゅつ』と呼ばれているのですね」



 シルヴィアはメリーローズとの会話を切り上げると、すぐに別の術に取り掛かった。

「これは少し大きい術なので、今から準備を始めます」

 小さい声で長い呪文をブツブツと唱えた後、フゥーッと鋭く息を吐く。
 すると、今まで晴れていた空に少しずつ雲がかかってきた。

「え、あれ、シルヴィアがやったのか?」

「すごいなあ。天気を操れるのか」

 メルヴィンとアルフレッドの賞賛もそっちのけで、次の術にかかる。

『ソーントン先生、フェリクス殿下、聞こえますか?』

『聞こえまーす。さっきまでブラックバードさんたちが飛んでたんですが、雲がかかってきて、見えにくくなっちゃいました』

 校門の正面に待機していたフェリクスとランドルフに交信を呼びかけたのだが、なぜか呼びかけていないアデレイドが答えた。
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