240 / 404
第三章 BL小説の存在、世に知られる
115-2
しおりを挟む
その、高等学院女子寮に隣接している庭では、数人の女子学生が連れだって歩いていた。
メリーローズたち生徒会メンバー女子の面々である。
「あの植え込みで迷路を作ってある一画に、小さい郵便用の箱を隠してあるんです」
ヘザーが指さした先は、迷路の中でも行き止まり近くにある場所である。
慣れない新入生ならまだしも、迷路の構造に慣れた者ならわざわざ行き止まりには行かないので、ほとんど人が来ない場所だ。
(というか……そもそも貴族のお嬢様は、迷路で遊んだりはしないな)
シルヴィアはいつだったか、メリーローズと迷路の中に隠れて相談していたとき、二人を見つけたアデレイドが無理やりやって来ようとしたときのことを思い出し、微苦笑していた。
ヘザーが迷路の中に入り、改めて箱の中を確認したが、やはり手紙は無くなっていない。
「どう考えても、おかしいです。何も報告することがなくても、週に一度は必ず連絡を取るという決まりになっているのです。彼女の身に何かあったとしか、思えない……」
あの騒ぎの直後から、ヴァイオラと接触が出来ていない……
皆の頭の中には、学長や大司祭に、彼女が自分たちの間者であることを気づかれた、という最悪の事態しか思い浮かばなかった。
* * *
その頃、ヴァイオラ――になりすました大司教――とアンガスは、学院の門番と揉めていた。
「ですから、ブラックウェル女史をお通しすることができますが、その後ろにいる男を中に入れることはできません」
「なぜですか。わたくしがいいと言っているのです。早く彼を中に入れなさい」
「学長がご一緒なら、その言葉を聞くこともできますが、ブラックウェル女史のみではその権限はございません。身元を確認できない人物を通すわけには、いかないのです」
この調子でもう十分ほどは言い争っていただろうか。
大司教にとっては、アンガスをすぐ近くに置いておく必要があった。
今現在ヴァイオラの体を乗っ取っているが、それは大司教の声に付与された『憑依』の魔術を行使しているからだ。
その力を発揮するためには、魔力の源であるアンガスが、近くにいなければいけない。
「あの……」
見かねたように、アンガスが大司教に声を掛けた。
「あの、俺が近くでなくても、この中くらいだったら、『目』か『耳』のどちらかは使えて、あとがちょっとニブくなります」
「……よくわからない。もう一度説明してみろ」
どうにか聞き出した話によると、アンガスから離れると五感が弱くなるらしいが、視力か聴力のどちらかだけは、正常に働かせることができる……と言いたかったようである。
メリーローズたち生徒会メンバー女子の面々である。
「あの植え込みで迷路を作ってある一画に、小さい郵便用の箱を隠してあるんです」
ヘザーが指さした先は、迷路の中でも行き止まり近くにある場所である。
慣れない新入生ならまだしも、迷路の構造に慣れた者ならわざわざ行き止まりには行かないので、ほとんど人が来ない場所だ。
(というか……そもそも貴族のお嬢様は、迷路で遊んだりはしないな)
シルヴィアはいつだったか、メリーローズと迷路の中に隠れて相談していたとき、二人を見つけたアデレイドが無理やりやって来ようとしたときのことを思い出し、微苦笑していた。
ヘザーが迷路の中に入り、改めて箱の中を確認したが、やはり手紙は無くなっていない。
「どう考えても、おかしいです。何も報告することがなくても、週に一度は必ず連絡を取るという決まりになっているのです。彼女の身に何かあったとしか、思えない……」
あの騒ぎの直後から、ヴァイオラと接触が出来ていない……
皆の頭の中には、学長や大司祭に、彼女が自分たちの間者であることを気づかれた、という最悪の事態しか思い浮かばなかった。
* * *
その頃、ヴァイオラ――になりすました大司教――とアンガスは、学院の門番と揉めていた。
「ですから、ブラックウェル女史をお通しすることができますが、その後ろにいる男を中に入れることはできません」
「なぜですか。わたくしがいいと言っているのです。早く彼を中に入れなさい」
「学長がご一緒なら、その言葉を聞くこともできますが、ブラックウェル女史のみではその権限はございません。身元を確認できない人物を通すわけには、いかないのです」
この調子でもう十分ほどは言い争っていただろうか。
大司教にとっては、アンガスをすぐ近くに置いておく必要があった。
今現在ヴァイオラの体を乗っ取っているが、それは大司教の声に付与された『憑依』の魔術を行使しているからだ。
その力を発揮するためには、魔力の源であるアンガスが、近くにいなければいけない。
「あの……」
見かねたように、アンガスが大司教に声を掛けた。
「あの、俺が近くでなくても、この中くらいだったら、『目』か『耳』のどちらかは使えて、あとがちょっとニブくなります」
「……よくわからない。もう一度説明してみろ」
どうにか聞き出した話によると、アンガスから離れると五感が弱くなるらしいが、視力か聴力のどちらかだけは、正常に働かせることができる……と言いたかったようである。
0
あなたにおすすめの小説
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
乙女ゲームの悪役令嬢は前世の推しであるパパを幸せにしたい
藤原遊
ファンタジー
悪役令嬢×婚約者の策略ラブコメディ!
「アイリス・ルクレール、その波乱の乙女ゲーム人生――」
社交界の華として名を馳せた公爵令嬢アイリスは、気がつくと自分が“乙女ゲーム”の悪役令嬢に転生していることに気づく。しかし破滅フラグなんて大した問題ではない。なぜなら――彼女には全力で溺愛してくれる最強の味方、「お父様」がいるのだから!
婚約者である王太子レオナードとともに、盗賊団の陰謀や宮廷の策略を華麗に乗り越える一方で、かつて傲慢だと思われた行動が実は周囲を守るためだったことが明らかに……?その冷静さと知恵に、王太子も惹かれていき、次第にアイリスを「婚約者以上の存在」として意識し始める。
しかし、アイリスにはまだ知らない事実が。前世で推しだった“お父様”が、実は娘の危機に備えて影で私兵を動かしていた――なんて話、聞いていませんけど!?
さらに、無邪気な辺境伯の従兄弟や王宮の騎士たちが彼女に振り回される日々が続く中、悪役令嬢としての名を返上し、「新たな人生」を掴むための物語が進んでいく。
「悪役令嬢の未来は破滅しかない」そんな言葉を真っ向から覆す、策略と愛の物語。痛快で心温まる新しい悪役令嬢ストーリーをお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる