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第三章 BL小説の存在、世に知られる
121 公爵令嬢、正体を明かし、ついでに妄想する
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辺りが明るくなり、少しずつ道を歩く人が増えてきた。
メリーローズとヘザーは連れだって、モリスン書房のドアを叩く。
「朝早く済みません。ヘザー・アシュビーです」
朝食の支度をしていたセルマが、顔を出した。
「あら、ヘザーじゃない。どうしたの? ……って、え? 一緒にいるの、ラ、ランズダウン公爵令嬢?」
「お早うございます。こんな時間に申し訳ございませんわ」
慌てて兄のウォルターを起こしてきたセルマと、居間で改めて顔を合わせる。
「……というわけで、わたくしが『ローザリウム王国物語』の著者、マリーゴールド・リックナウです」
「え、ええー……信じられないなあ」
まだ寝惚けているような、のんびりした声でウォルターが驚いた。
本当に驚いているのか疑問に思うような調子だが、彼はこれが地声である。
「一度、店に買い物に来てくださいました、よね?」
セルマが恐る恐る質問した。
「はい。わたくしの本を売ってくださっているお店が、どんなところか見てみたかったもので……。それより、大変な状況になってしまいましたわ。元はと言えば、わたくしが趣味で書いていた小説を売っていただいたせいで、申し訳ございません」
「何を仰いますか! おかげさまでうちの店も、随分儲けさせていただきましたわ! ねえ、兄さん。……兄さん?」
ぼんやりメリーローズの顔を凝視しているウォルターを、セルマが肘でつつく。
「もう、兄さん。美人だと思って見惚れちゃって!」
「そ、そんなんじゃないよ。……その、本当にこんなお嬢様が、あの小説を書いていたのかって思ったら……信じられなくて……」
ウォルターの返事に、セルマがニヤニヤしはじめた。
「あら、それは確かに。……ねえ、その……男性同士が愛し合う、あんなシーンやこんなシーン、どこで勉強したの?」
「それは、わたくしも知りたいです! フンス!」
セルマとヘザーの二人から迫られ、メリーローズは困ったように微笑んだ。
「どこで……と仰られても……」
さすがに「前世の日本で」とは言えない。
ここは誤魔化すことにした。
「己の本能の赴くまま。心の萌えに導かれるままに、妄想いたしました」
「も、妄想であそこまで!」
ヘザーが興奮する。
「心の……え? な、何に導かれたのですって?」
セルマも興奮する。
「『萌え』……ですわ」
「「何ですか? それは!」」
ヘザーとセルマ、二人揃って興奮する。
「喜怒哀楽に次ぐ、第五の感情、それが『萌え』」
「『萌え』? 第五の感情とはいったい……?」
「それがリックナウ先生の創作の源……?」
「ホホホ……その通り。『萌え』こそが我がBLの源。あなた方も感じたことがあるでしょう? 胸の奥に春の芽吹きの如く、沸き上がるくすぐったさを……」
「あああ……っ!」
「わ、わかります! わかりますとも! わたくしがBL小説を読んでいるときに、いつも感じているものです!」
「ホホホ……。それでこそ、あなた方はBLの使徒。萌えの真の理解者」
「BL万歳!」
「萌え万歳!」
今や三人は手に手を取って立ち上がり、いつかの夜、メリーローズとキンバリーが踊ろうとした謎のサークルダンスを踊り始めた。
前回はキンバリーの部屋にあまりにも物がありすぎて思うように踊れなかったが、今回は障害物がないため心ゆくまで踊り続けることができる。
「うふふ……」
「あはは……」
「おほほ……」
メリーローズとヘザーは連れだって、モリスン書房のドアを叩く。
「朝早く済みません。ヘザー・アシュビーです」
朝食の支度をしていたセルマが、顔を出した。
「あら、ヘザーじゃない。どうしたの? ……って、え? 一緒にいるの、ラ、ランズダウン公爵令嬢?」
「お早うございます。こんな時間に申し訳ございませんわ」
慌てて兄のウォルターを起こしてきたセルマと、居間で改めて顔を合わせる。
「……というわけで、わたくしが『ローザリウム王国物語』の著者、マリーゴールド・リックナウです」
「え、ええー……信じられないなあ」
まだ寝惚けているような、のんびりした声でウォルターが驚いた。
本当に驚いているのか疑問に思うような調子だが、彼はこれが地声である。
「一度、店に買い物に来てくださいました、よね?」
セルマが恐る恐る質問した。
「はい。わたくしの本を売ってくださっているお店が、どんなところか見てみたかったもので……。それより、大変な状況になってしまいましたわ。元はと言えば、わたくしが趣味で書いていた小説を売っていただいたせいで、申し訳ございません」
「何を仰いますか! おかげさまでうちの店も、随分儲けさせていただきましたわ! ねえ、兄さん。……兄さん?」
ぼんやりメリーローズの顔を凝視しているウォルターを、セルマが肘でつつく。
「もう、兄さん。美人だと思って見惚れちゃって!」
「そ、そんなんじゃないよ。……その、本当にこんなお嬢様が、あの小説を書いていたのかって思ったら……信じられなくて……」
ウォルターの返事に、セルマがニヤニヤしはじめた。
「あら、それは確かに。……ねえ、その……男性同士が愛し合う、あんなシーンやこんなシーン、どこで勉強したの?」
「それは、わたくしも知りたいです! フンス!」
セルマとヘザーの二人から迫られ、メリーローズは困ったように微笑んだ。
「どこで……と仰られても……」
さすがに「前世の日本で」とは言えない。
ここは誤魔化すことにした。
「己の本能の赴くまま。心の萌えに導かれるままに、妄想いたしました」
「も、妄想であそこまで!」
ヘザーが興奮する。
「心の……え? な、何に導かれたのですって?」
セルマも興奮する。
「『萌え』……ですわ」
「「何ですか? それは!」」
ヘザーとセルマ、二人揃って興奮する。
「喜怒哀楽に次ぐ、第五の感情、それが『萌え』」
「『萌え』? 第五の感情とはいったい……?」
「それがリックナウ先生の創作の源……?」
「ホホホ……その通り。『萌え』こそが我がBLの源。あなた方も感じたことがあるでしょう? 胸の奥に春の芽吹きの如く、沸き上がるくすぐったさを……」
「あああ……っ!」
「わ、わかります! わかりますとも! わたくしがBL小説を読んでいるときに、いつも感じているものです!」
「ホホホ……。それでこそ、あなた方はBLの使徒。萌えの真の理解者」
「BL万歳!」
「萌え万歳!」
今や三人は手に手を取って立ち上がり、いつかの夜、メリーローズとキンバリーが踊ろうとした謎のサークルダンスを踊り始めた。
前回はキンバリーの部屋にあまりにも物がありすぎて思うように踊れなかったが、今回は障害物がないため心ゆくまで踊り続けることができる。
「うふふ……」
「あはは……」
「おほほ……」
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