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第三章 BL小説の存在、世に知られる
122-2
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「何よ、いいアイデアじゃないの」
「簡単に仰らないでください。他人を自分の思った通りに動かすのは、とても難しいことなのです。昨日の失敗があるので、大司教は今後ますますアンガスを自分の身近に置きたがるでしょうし」
「それもそうね。……じゃあ、アンガスの方から大司教から離れたいと思わせるように仕向けるのは、どう?」
「弟が言うには、アンガスは小さい頃に両親に捨てられ、孤児院で育ったそうです。そこで不遇をかこっていたとき、大司教に力を認められ、特別待遇に引き上げられたと……。アンガスの意思で大司教から離れることは、まず考えられません」
「そっか、そういう事情があるのね」
「ですので、あのアンガスという男を攫ってくる、などの強引な手立てでしか、彼らを引き離すことはできません」
「そんな乱暴なことは、できればしたくないわね」
「どちらにしろ、わたくしたち女性の力では無理でしょう。かといって、メルヴィン様たち生徒会メンバーの男子にお願いするのも、いかがかと思われます」
「ええ……。可愛いアルたんに、そんなことさせられないわ」
両手の平を重ね右頬の下に置き、傾げた顔ごとイヤイヤをして見せるメリーローズをスルーして、シルヴィアが質問した。
「そういえば、キンバリーとモリスン兄妹に、式神を渡してきていただけましたか?」
「それは抜かりないわ! ヴァイオラ、キンバリー、キンバリーのご主人、それにウォルターとセルマにも、使い方を説明して、一枚ずつ渡してあるわよ」
「多めに作っておいてよかったです。とにかく緊急事態が起きたときに、連絡を取り合えないのは不便ですから」
そこまで話をしたあと、シルヴィアはメリーローズの顔が少し沈んだ表情になっていることに気が付く。
「……どうかなさいましたか?」
「ああ、うん。アル攻め本を書いた人のことを考えていたの。念のため、キンバリーに頼んでその人の分の式神も預けてはきたんだけど、こちらと直接連絡をとることは無理そうね」
「そうですね」
表情が暗いまま戻らないメリーローズが、ポツリと呟いた。
「あの、アル攻めを書いたアイリス・サワーね、わたくしの前世での知り合いかも知れないの。……ううん、確実に知っている子」
「子……ということは、ナツミ様より年下の方ですか?」
「ええ。あの当時、多分十七か十八歳。……今のわたくしと、だいたい同じくらいね。……そして、多分その若さで亡くなったのだわ」
「そう……ですか」
「わたくしが死んだときも、まだ若すぎるって、お葬式の時言われたわ。それより十歳も若くして亡くなったなんて、ちょっと考えたくなかったのよね」
「そう…………んんっ? お、お待ちください、ナツミ様って、亡くなったとき二十…七、八歳?」
シルヴィアの反応に、メリーローズがキョトンとする。
「ええ、そうよ。言ってなかった? 享年二十七歳。なあんか、心臓の発作を起こしたっぽかったなあ」
「お待ちください! 二十七歳と言えば、立派な大人じゃありませんか!」
「えへえ、立派な大人だったわよお。自分で働いてお金稼いで、家賃払って光熱費払って、生活していたもの。……なにか?」
「…………いえ」
シルヴィアは、ナツミが亡くなったときの年齢と、記憶を取り戻してからのこの三年をプラスして、自分より十歳近く精神年齢が上のはずの主人を、しげしげと眺めた。
そして、改めて「お嬢様にあまり多くは望むまい」と考え直した。
「簡単に仰らないでください。他人を自分の思った通りに動かすのは、とても難しいことなのです。昨日の失敗があるので、大司教は今後ますますアンガスを自分の身近に置きたがるでしょうし」
「それもそうね。……じゃあ、アンガスの方から大司教から離れたいと思わせるように仕向けるのは、どう?」
「弟が言うには、アンガスは小さい頃に両親に捨てられ、孤児院で育ったそうです。そこで不遇をかこっていたとき、大司教に力を認められ、特別待遇に引き上げられたと……。アンガスの意思で大司教から離れることは、まず考えられません」
「そっか、そういう事情があるのね」
「ですので、あのアンガスという男を攫ってくる、などの強引な手立てでしか、彼らを引き離すことはできません」
「そんな乱暴なことは、できればしたくないわね」
「どちらにしろ、わたくしたち女性の力では無理でしょう。かといって、メルヴィン様たち生徒会メンバーの男子にお願いするのも、いかがかと思われます」
「ええ……。可愛いアルたんに、そんなことさせられないわ」
両手の平を重ね右頬の下に置き、傾げた顔ごとイヤイヤをして見せるメリーローズをスルーして、シルヴィアが質問した。
「そういえば、キンバリーとモリスン兄妹に、式神を渡してきていただけましたか?」
「それは抜かりないわ! ヴァイオラ、キンバリー、キンバリーのご主人、それにウォルターとセルマにも、使い方を説明して、一枚ずつ渡してあるわよ」
「多めに作っておいてよかったです。とにかく緊急事態が起きたときに、連絡を取り合えないのは不便ですから」
そこまで話をしたあと、シルヴィアはメリーローズの顔が少し沈んだ表情になっていることに気が付く。
「……どうかなさいましたか?」
「ああ、うん。アル攻め本を書いた人のことを考えていたの。念のため、キンバリーに頼んでその人の分の式神も預けてはきたんだけど、こちらと直接連絡をとることは無理そうね」
「そうですね」
表情が暗いまま戻らないメリーローズが、ポツリと呟いた。
「あの、アル攻めを書いたアイリス・サワーね、わたくしの前世での知り合いかも知れないの。……ううん、確実に知っている子」
「子……ということは、ナツミ様より年下の方ですか?」
「ええ。あの当時、多分十七か十八歳。……今のわたくしと、だいたい同じくらいね。……そして、多分その若さで亡くなったのだわ」
「そう……ですか」
「わたくしが死んだときも、まだ若すぎるって、お葬式の時言われたわ。それより十歳も若くして亡くなったなんて、ちょっと考えたくなかったのよね」
「そう…………んんっ? お、お待ちください、ナツミ様って、亡くなったとき二十…七、八歳?」
シルヴィアの反応に、メリーローズがキョトンとする。
「ええ、そうよ。言ってなかった? 享年二十七歳。なあんか、心臓の発作を起こしたっぽかったなあ」
「お待ちください! 二十七歳と言えば、立派な大人じゃありませんか!」
「えへえ、立派な大人だったわよお。自分で働いてお金稼いで、家賃払って光熱費払って、生活していたもの。……なにか?」
「…………いえ」
シルヴィアは、ナツミが亡くなったときの年齢と、記憶を取り戻してからのこの三年をプラスして、自分より十歳近く精神年齢が上のはずの主人を、しげしげと眺めた。
そして、改めて「お嬢様にあまり多くは望むまい」と考え直した。
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