悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

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第三章 BL小説の存在、世に知られる

125  公爵令嬢の契約書

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 王都では業種ごとの組合組織が発達している。

 ファンタジー作品によく出てくる「ギルド」とは違う現代の組合に近い組織で、当然本屋の組合というものも存在していた。

 本屋を経営していたら強制加入、というわけではなく、モリスン書房はその規模の小ささから組合に入ってはいなかったが、特にお咎めがあるわけではない。

 組合に参加していない理由として、対外的には極小店舗であまり儲けがなく、組合費を払う負担も馬鹿にならないから、としていたが、本当のところBL本を出す前から、あまり大きな声で言えない商品をたびたび扱っていたから、ということが大きい。

 そこへきてのBL本販売である。

 キンバリーが当初からヘザーを使った「ルートX」販売を考えていたのは、単にヤバい商品というだけではない。

 BL本がヒット商品になりそうだという予感があり、店舗に客が殺到して目立ちたくない、という考えがあったからだ。


 そしてヘザーたちの予告通り、王都内の本屋に、高等学院の職員が一軒一軒調査して回り始めた。

 組合に入っている本屋の中では「高等学院職員を名乗る者たちが、本屋を調査して回っている」「発禁本を販売している店を探しているらしい」「調査に協力して、発禁本は置いていないことを証明できればすぐ帰る」といった情報が回っていたが、モリスン書房には当初それは入ってこなかった。

 とはいえ、組合に参加していなくても、爪弾きにされているわけではない。
 それなりにつながりのある書店から、多少遅れたものの、その情報が入ってくることになった。

「兄さん、調査ですって。ヘザーが真っ先に教えてくれたおかげで、さっさと貸倉庫に隠しておけて、よかったわね」

 知らせをもらってきたセルマが、店番をしていたウォルターに話しかける。

「ああ。しかし王都の本屋全部を、一軒一軒回っているのかな。大変だね」

「何、感心してるのよ。うちだって今も薄氷を渡っているのには、変わりないんだからね。同情している場合じゃないわ」

「それもそうか」

 BL本を置いていない今、モリスン書房はかなり暇だった。
 少し前なら、高等学院の女子学生が、ちょこちょこと新刊を求めてやって来てくれていたのだが、今は殆ど来ない。

「……店内をもう一度点検して、置いてあったらまずいものとかないか、見ておいた方がよくないか?」

「えー? 本は確かに全部隠したわ。大丈夫じゃない?」

「今回は高等学院の人だから、本が置いてあるかどうかしか見ないだろうけど、万が一当局に応援を頼んだりしたら、本棚以外の場所も探し回られるぞ」

「……確かに。兄さんて、普段はのんびりしているのに、意外と鋭いわね」

「意外は余計だよ」

 ウォルターは苦笑しながら、早速店の奥の物置を見に行った。
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