悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

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最終章 BLよ、永遠なれ

145 公爵令嬢の兄、式神を受け取る

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 その日の夕刻、ランズダウン邸の正門に一台の馬車が停まった。

「ランズダウン家の使用人、ロナルド・マコーリーだ。主人であるメルヴィン様に、勉強で使う教科書を持ってきた。メルヴィン様にお届けしたい」

 例によって門番は二人いたが、先日の若い男たちではない。
 胡散臭そうにこちらを見てくるので「中を確かめてくれて、構わない」と伝える。

 そこまで言っても、どうすべきか相談を始めるので、ロナルドは背中が気になって仕方がなかった。

 そこへちょうど見知った顔の二人が来て、交代の時間を告げる。
 ロナルドを見て、小さく会釈した。
 その様子に、相談していた門番たちが彼らに問いかける。

「知っているのか?」

「ランズダウン家の使用人だ。前にも来たことがある」

 ロナルドがメルヴィンのために教科書を持ち込みたいこと、中を確認しても構わないことを説明すると、後から来た顔見知りのうちの一人が上の人間へ掛け合いに行ってくれた。

「何度もわがままを申して、済みません。主人は勉強熱心なので、きっと必要に感じていると思ったもので……」

 アルフレッドを見習い、腰を低くして対応してみる。
 すると顔見知りの門番も、今日初めて会った二人も、意外なほどにこちらへの態度を軟化させてきた。

「先にこっちで中身の確認をはじめておこうか」

 掛け合いに行ったのと違うもう一人の門番が、そう言ってチェックをし始める。
 残りの二人もそれに倣って確認作業に入ってくれた。

(ありがとう。信頼を裏切って悪いけれど、あんたたちの不利にはならないよう努力するよ)

 ロナルドは彼らに心の中で頭を下げる。
 それでも苦労して作った式神は、どうしてもメルヴィンに届けなければいけない。

 * * *

 式神を作ることにしたのはいいものの、ロナルドの記憶はすでにおぼろげで、おまけに元となる紙の人形に書き込む術式が意外に複雑なので、何度も間違えてはやり直しをさせられたのだ。

『お前、大司教が来るときに何枚も式神を作っていたよな? あれでなんで覚えていないんだ!』

 術式は一か所書き間違えただけで、紙人形が紙人形のまま、どんなに魔力を込めてもらっても式神にはならない。

 魔法学の教授とかいう、やたらに体格のいい男に来てもらい、アデレイドが魔力の込め方をレクチャーしてもらって頑張ってくれるが、元の術式が間違えていれば、式神にはならないのだ。

 ミスをした紙人形に無駄に魔力を込めて、ヘトヘトになっているアデレイドに謝るが「大丈夫です! 次、がんばりましょう」と逆に励まされる始末である。

 あんなに何度もやり直しして魔力を使わせて、怒っても仕方がないのに自分を責めずにがんばるアデレイドには、申し訳ないうえに、むしろ元気をもらうほどで頭が上がらない。

 アデレイドはロナルドを責めるよりも、ただただメリーローズを助けたい一心なのだ。
 その一途さに、見ていて時々涙が出そうになっている自分に、ロナルドは驚いていた。

 何度も失敗する弟を見かねて、最後にシルヴィアが他の人との通信を一旦切って、生徒会室との通信を音声に加え画像を映す設定に変更する。

 といってもシルヴィアの方では生徒会室の画像を見ることは出来るが、シルヴィア側の画像を見ることは出来ないので、一旦こちらで書いた術式を見てもらい、口頭でどこが間違っているか指摘してもらう形だ。

『違う、一番上の文字の横の点が抜けている。たかが点だが、これがないと動かない』

『違う、そこは四角を四つじゃなくて五つ書くんだ』

 そんな感じで絞られるだけ絞られたあと、ようやく紙人形が『式神』として動き出したときは、生徒会室に歓声があがった。

「やりましたー! やりましたー!」

 * * *

 涙を流して喜ぶアデレイドを抱きしめたい衝動にかられ、どうにか我慢したことを思い出し、ロナルドは門番たちを前にして意味もなく顔が赤らむ。

(俺は誰かのために、あんなに一生懸命になることなんて、なかった。それが眩しかっただけだ)

 誰も聞いていない言い訳を、ロナルドは心の中で繰り返すのだった。
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