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最終章 BLよ、永遠なれ
166-2
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できなかった理由については、ブロムリー公爵が何もいう前にヒューストンも理解した。
彼らの後ろから、高等学院の学生たちが殺到したからである。
「我が国が誇る王立高等学院の学生が、なんという無作法だ」
ヒューストンの注意に怯むことなく、他の学生たちを掻き分け出て、ヘザーが口を開いた。
「今、裁判はどこまで進みましたか?」
「今か? ちょうど被告人たちの陳述が終わり、弁護したい者、証言したい者がいるかどうか、確認しているところだ」
闖入者の問いにヒューストンが自ら説明しているのを見て、メリーローズたちも傍聴席の人々も驚いた。
裁判所に無断侵入してきた学生など、強制退場させるものと思ったのだ。
「私たちは被告人への弁護に参りました。どうか発言をお許しください!」
ミュリエルが訴えると、傍聴人席の人々が感心している。
彼女の持つ清らかな雰囲気と愛らしい容姿(と魅了の力)が、好感を持って受け入れられたようだ。
ここで慌てたのは大司教だ。
以前ミュリエルには「魅了」と「支配」の魔力を使って意思を奪い、操ろうとした過去がある。
しかも自分に付与させた魔力について、調べ回っている学生がいることも知っていた。
自分が、本来「卑しい」とされる魔力を密かに使っていることが、ここの聴衆――この中にはランズダウンやヒューストン、更には王家の人々までいる!――にバラされるわけにはいかない。
「無作法な学生たちよ、下がりなさい! これから第三王子であらせられるフェリクス殿下が証言するところですぞ!」
とにかく、この法廷内の人々に『メリーローズ・ランズダウンは凶悪な人間だ』と、印象付けることが肝要だ。
(そのために用意しておいた切り札を、今ここで切る!)
「ヒューストン、いや裁判官。どうか私がお連れした証言者の言葉を、お聞きください」
「その前に、この者たちも弁護をしたいと申し出ておるが……」
ヒューストンはなぜか、突然なだれ込んできた学生の言葉を優先しようとする。
「いいや! 私が先に申し出ました! 私の証言者に、先に話させてください! さ、ブロムリー公爵、早く殿下を!」
大司教から促されたブロムリー公爵が、フェリクスの両肩を後ろから掴み、前へと押し出した。
フェリクスは、ブロムリー公爵の陰になっていたため、人々からは見えにくい場所にいる。
そのうえ法廷に入り込んできた女子学生の中に、小柄でほっそりとした体格と愛らしい顔立ちのフェリクスは、すっかり溶け込んで違和感がなかったため、誰もそこに第三王子がいることに今まで気がつかずにいたのだ。
そこへ学生たちの間をぬって、アルフレッドとメルヴィンが法廷に入ってくる。
「フェリクス! なぜここに?」
「待て、アルフレッド。様子がおかしい」
ブロムリー公爵に促されて前に進み出るフェリクスに、高等学院の学生たちがざわめいた。
「え? ど、どういうこと?」
「フェリクス様が、どうしてブロムリー公爵と一緒にいるんですかー?」
ミュリエルやフェザーは唖然とし、エルシーとアデレイドから疑問が零れる。
学生たちが動揺している様子を見て笑いをかみ殺していたブロムリー公爵だったが、その学生たちの中に愛娘の姿を見つけて笑いが引っ込んだ。
「え? ミルドレッド、なぜお前がここに」
父親の動揺をよそに、ミルドレッドは学生たちの中に紛れながら成り行きを見守っていた。
彼らの後ろから、高等学院の学生たちが殺到したからである。
「我が国が誇る王立高等学院の学生が、なんという無作法だ」
ヒューストンの注意に怯むことなく、他の学生たちを掻き分け出て、ヘザーが口を開いた。
「今、裁判はどこまで進みましたか?」
「今か? ちょうど被告人たちの陳述が終わり、弁護したい者、証言したい者がいるかどうか、確認しているところだ」
闖入者の問いにヒューストンが自ら説明しているのを見て、メリーローズたちも傍聴席の人々も驚いた。
裁判所に無断侵入してきた学生など、強制退場させるものと思ったのだ。
「私たちは被告人への弁護に参りました。どうか発言をお許しください!」
ミュリエルが訴えると、傍聴人席の人々が感心している。
彼女の持つ清らかな雰囲気と愛らしい容姿(と魅了の力)が、好感を持って受け入れられたようだ。
ここで慌てたのは大司教だ。
以前ミュリエルには「魅了」と「支配」の魔力を使って意思を奪い、操ろうとした過去がある。
しかも自分に付与させた魔力について、調べ回っている学生がいることも知っていた。
自分が、本来「卑しい」とされる魔力を密かに使っていることが、ここの聴衆――この中にはランズダウンやヒューストン、更には王家の人々までいる!――にバラされるわけにはいかない。
「無作法な学生たちよ、下がりなさい! これから第三王子であらせられるフェリクス殿下が証言するところですぞ!」
とにかく、この法廷内の人々に『メリーローズ・ランズダウンは凶悪な人間だ』と、印象付けることが肝要だ。
(そのために用意しておいた切り札を、今ここで切る!)
「ヒューストン、いや裁判官。どうか私がお連れした証言者の言葉を、お聞きください」
「その前に、この者たちも弁護をしたいと申し出ておるが……」
ヒューストンはなぜか、突然なだれ込んできた学生の言葉を優先しようとする。
「いいや! 私が先に申し出ました! 私の証言者に、先に話させてください! さ、ブロムリー公爵、早く殿下を!」
大司教から促されたブロムリー公爵が、フェリクスの両肩を後ろから掴み、前へと押し出した。
フェリクスは、ブロムリー公爵の陰になっていたため、人々からは見えにくい場所にいる。
そのうえ法廷に入り込んできた女子学生の中に、小柄でほっそりとした体格と愛らしい顔立ちのフェリクスは、すっかり溶け込んで違和感がなかったため、誰もそこに第三王子がいることに今まで気がつかずにいたのだ。
そこへ学生たちの間をぬって、アルフレッドとメルヴィンが法廷に入ってくる。
「フェリクス! なぜここに?」
「待て、アルフレッド。様子がおかしい」
ブロムリー公爵に促されて前に進み出るフェリクスに、高等学院の学生たちがざわめいた。
「え? ど、どういうこと?」
「フェリクス様が、どうしてブロムリー公爵と一緒にいるんですかー?」
ミュリエルやフェザーは唖然とし、エルシーとアデレイドから疑問が零れる。
学生たちが動揺している様子を見て笑いをかみ殺していたブロムリー公爵だったが、その学生たちの中に愛娘の姿を見つけて笑いが引っ込んだ。
「え? ミルドレッド、なぜお前がここに」
父親の動揺をよそに、ミルドレッドは学生たちの中に紛れながら成り行きを見守っていた。
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