悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

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最終章 BLよ、永遠なれ

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 一つだけだと思われた扇子は、実は二つあり――通常、貴族女性がエチケットとして携帯するのは一本である――その両方に何か文字が書かれている。

 メリーローズはそれをそのまま読んで、口にした。

「はれてん……?」

「あらいやだ。左右が逆でしたわ」

 夫人が照れ笑いを浮かべながら扇子を持ち代える。するとそこには……

 「天」と「晴」

「……あっぱれ……?」

「その通り! メリーローズ、実に『天晴あっぱれ』ですわ!」

 横にいるランズダウン公爵は右手で両目を覆い、大きな溜め息をつく。

「……お前……。こんなものを仕込んでいたのか」

「ええ!」

「この判決がどうなるか、まだわからないのだぞ。法に照らし合わせれば、『極刑』が相当だというのに……」

「あら、あなた!」

 今や目だけでなく、両手で顔を覆ってしまった夫に対し、夫人は手を腰に当て背筋を伸ばし、高らかに言い放った。

「もし『極刑』を言い渡されたとしても、わたくしはメリーローズに同じ言葉を贈りますわ。『天晴』! と」

「お……お母様……」

 ジェラルディン夫人は傍聴席から降りてくると、涙を浮かべたメリーローズの手を取る。

「読みましたよ、『ローザリウム王国物語』。楽しませていただきました。他の誰がどう裁こうと、あれだけの小説を書いたお前を、わたくしは誇りに思います!」

「やっぱり楽しんでいたのだな」
「やっぱり楽しんでいましたね」

 夫と息子から同時に突っ込まれたジェラルディン夫人を、大きな歓声が包んだ。

「さすがはメリーローズ様のお母様!」

「さすがリックナウ先生のご母堂!」

「わかっていらっしゃるわ!」

「わたくしたちの同志ですわ!」

「ですわー!」

 女子学生に囲まれてお祭りの神輿みこしよろしく、もみくちゃにされている。

「待て、待ちなさい。まるで裁判に勝ったかのような騒ぎだが、落ち着くのだ!」

 ランズダウン公爵が学生たちをたしなめた。

「今日裁判官を務めているヒューストンという男は、決して感情に流されることのない、厳格な男だ。例え女王が『同性愛禁止法』の制定を後悔していると仰られようと、王太子殿下が同性愛者であることを告白しようと、それで判決を捻じ曲げる男ではないぞ。浮かれるのを止めよ!」

 ここにきて冷静にものごとを判断するランズダウン公爵を、大司教は感心した。

(さすがに政務の中枢を担ってきた男だ。ヒューストンのこともよく理解している。そう、あれは法に忠実な男だ。例え長年の友の娘だろうと、法に逆らってまで手心を加えることはない。なぜか、時間を稼いでいる様子はあるが……)

 そこまで考えて、大司教は今日の貴族院議会の議題にのっている案件に、何があったのかを思い出した。

(……まさか?)
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