悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

文字の大きさ
352 / 404
最終章 BLよ、永遠なれ

172 公爵令嬢の大逆転

しおりを挟む
 今日の貴族院議会で審議される議題は幾つかあったが、朝一番のものは『同性愛禁止法』の廃止案についての最終審議と決議だったことを、大司教は思い出した。

 そう、メリーローズが逮捕された直後に出されたものだ。

 廃止案については、これまでにも幾度となく提出されてきている。
 案を出してくるのは決まって下院議員からだったが、ほとんどの場合、女王が裏で手を回していることは、わかっていた。

 今回は、娘の逮捕で焦ったランズダウン辺りが出したのかと思っていたが、どうも違ったらしい。

(いや、今までだってずっと案が出されるたびに、否決されてきた。忌々しいことに少しずつ賛成のポイントが増えてはきていたが、それでも私の計算では、今回も否決が過半数を上回るはずなのだ。……それに)

 大司教は、チラリとヒューストンを盗み見る。

(万が一『同性愛禁止法』の廃止案が今日可決されたからといって、法というものは即時施行されるものではない。数か月かけて国民に広く周知徹底してから、施行されるものだ。今日の今日で廃止案が適用されることなど……)

 そうは考えたものの、大司教は背中から次第に冷や汗が滲み出てくるのを感じた。

 今まで廃止案が否決されてきたのは、ポイントを多く持っている自分やヒューストンの力が大きい。

 ローデイル王国では決議の際、単純に票の数ではなく、それぞれの持っているポイントを足した数で決められている。

 下院議員は一人につき、一ポイント。
 貴族院議員は二ポイント。
 大司教と宰相はそれぞれ一〇ポイント。
 ランズダウンが務めていた王室補佐は二〇ポイント。
 女王(もしくは王)は五〇ポイントとなる。

 議員以外の者は決議前に票を投じることが許されており、大司教もまた、案が出された時点で即、否決に票を入れていたのだ。

(廃止案が出されたときは、まさかヒューストンがこんな動きをするとは、思っていなかった。長い間ずっと奴は、否決に票を入れ続けてきたのだから)

 更に言うと、議員以外の四人にはポイントの数だけでなく、議員たちよりも大きな権限が与えられている。
 その一つが、出された法案が可決された場合、それをいつから施行するかを決める権限だ……


 大司教の思考はそこで止まる。
 廊下から靴音が響いて伝令が法廷内に入り、高らかにこう告げたからだ。

「先ほど貴族院議会にて、『同性愛禁止法』の廃止が可決されました! 本日、可決された時刻十一時三十五分を以って、『同性愛禁止法』は廃止といたします」

「まさか!」

 驚きの声は大司教だけでなく、多くの傍聴人や、女子学生たちからも同時にあがった。

「手続きが間に合って、ようございました」

 エメライン女王が笑顔でホー……ッと深く息を吐き、その場に座り込む。

「いや、しかし……しかし、待て!」

 大司教の怒鳴り声が、法廷内に満ちていた喜びの空気に割り込んでくる。

「可決して即、適用だと? 廃止が決定したとして、開始時期は我々四人が話し合って決めるのではないか? それについては、私は何も聞いておらんぞ!」

 その疑問に、座り込んでいた女王が立ち上がり答えた。

「そう、通常でしたら、法案が通ったあとに大司教、宰相、王室補佐、国王で施行の時期を決定します……が」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。 ――というのは表向きの話。 婚約破棄大成功! 追放万歳!!  辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。 ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19) 第四王子の元許嫁で転生者。 悪女のうわさを流されて、王都から去る   × アル(24) 街でリリィを助けてくれたなぞの剣士 三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ 「さすが稀代の悪女様だな」 「手玉に取ってもらおうか」 「お手並み拝見だな」 「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」 ********** ※他サイトからの転載。 ※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

クズ王子から婚約を盾に迫られ全力で逃げたら、その先には別な婚約の罠が待っていました?

gacchi(がっち)
恋愛
隣国からの留学生のリアージュは、お婆様から婚約者を探すように言われていた。リアージュとしては義妹のいない平和な学園で静かに勉強したかっただけ。それなのに、「おとなしく可愛がられるなら婚約してやろう」って…そんな王子はお断り!なんとか逃げた先で出会ったのは、ものすごい美形の公爵令息で。「俺が守ってやろうか?」1年間の婚約期間で結婚するかどうか決めることになっちゃった?恋愛初心者な令嬢と愛に飢えた令息のあまり隠しもしない攻防。

乙女ゲームの悪役令嬢は前世の推しであるパパを幸せにしたい

藤原遊
ファンタジー
悪役令嬢×婚約者の策略ラブコメディ! 「アイリス・ルクレール、その波乱の乙女ゲーム人生――」 社交界の華として名を馳せた公爵令嬢アイリスは、気がつくと自分が“乙女ゲーム”の悪役令嬢に転生していることに気づく。しかし破滅フラグなんて大した問題ではない。なぜなら――彼女には全力で溺愛してくれる最強の味方、「お父様」がいるのだから! 婚約者である王太子レオナードとともに、盗賊団の陰謀や宮廷の策略を華麗に乗り越える一方で、かつて傲慢だと思われた行動が実は周囲を守るためだったことが明らかに……?その冷静さと知恵に、王太子も惹かれていき、次第にアイリスを「婚約者以上の存在」として意識し始める。 しかし、アイリスにはまだ知らない事実が。前世で推しだった“お父様”が、実は娘の危機に備えて影で私兵を動かしていた――なんて話、聞いていませんけど!? さらに、無邪気な辺境伯の従兄弟や王宮の騎士たちが彼女に振り回される日々が続く中、悪役令嬢としての名を返上し、「新たな人生」を掴むための物語が進んでいく。 「悪役令嬢の未来は破滅しかない」そんな言葉を真っ向から覆す、策略と愛の物語。痛快で心温まる新しい悪役令嬢ストーリーをお楽しみください。

「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている

歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が 一人分減るな、と思っただけ。 ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。 しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、 イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。 3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。 「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」 「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」

処理中です...