悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

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最終章 BLよ、永遠なれ

179 公爵令嬢、軽率に請け負う

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「う……う……ぐう……」

 苦しげな女の声だ。
 確認しなくても誰の声なのかは想像がついたが、それは普段の彼女とは違う、しわがれた老婆のような声である。

「は、母上……?」

 アルフレッドが駆け寄った。

「今日は調子がよかったのだが……。しっかりしなさい、エメライン」

 ベネディクト王婿は慣れているのか、落ち着いている。
 そう、呻き声はエメライン女王のものであった。

「はあっ……はあっ……はあっ…………」

 胸をかきむしっている。
 息をするのも苦しそうだ。

 フェリクスは女王の発作を見るのは初めての様子で、息をのんで動けずにいる。

「陛下、失礼いたします」

 ジェラルディン夫人が王子たちをかき分け、エメラインに駆け寄った。
 背中をさすりながら「大丈夫ですわ」「落ち着いて、深呼吸を」と声を掛ける。
 ジェラルディン夫人の声掛けが功を奏したか、エメライン女王の息遣いが落ち着いてきた。

「母上、大丈夫ですか?」

 ヴィンセント王太子が女王の手を取ると、彼女はゆっくりと顔をあげて微笑んだ。

「もう、大丈夫です。皆様、ご心配をおかけしましたわ」

 メリーローズは胸を撫でおろし、アルフレッドやフェリクス、そしてシルヴィアやミルドレッドもホッとした表情になった。

 ミルドレッドが、まだ少し震えながらメリーローズに耳打ちする。

「ね、ねえ。これってどういうこと? お祈りが通じなかったのかしら?」

 その声を耳にした大司教が、顔を赤くして反論した。

「失敬な! バラの奇跡がどのような形で叶えられるのかは、誰も知らないのだぞ! 祈りが失敗したとは限らんのだ!」

「別に、大司教様が失敗したなんて、言ってないんですけど」

「そうね。それにもしかしたら、体内に残っていた悪い『気』の残りが、今ので出切ったとも考えられない?」

 自分の後ろに隠れて大司教へ言い返すミルドレッドに、そして周囲の不安そうな他の人々に向けて、メリーローズが言う。
 アルフレッドやフェリクスが、それを聞いてホッとしているのが感じられた。
 彼らのためにも、自分の考えが当たっているといいと、メリーローズは思う。


 落ち着きを取り戻した女王は、皆の顔を見回して「大事な話があります」と告げた。

「ここに来たのは、バラに奇跡を祈るため、というより、むしろこの話をしに参りました」

 ベネディクト王婿とヴィンセント王太子が呼吸を整え、姿勢を正す。
 ただならぬ雰囲気に、他の人々の間にも緊張感が走った。

「わたくしは、王位を退こうと考えております」

 静かな声で、エメライン女王が告白した。
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