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第1章
第1話
しおりを挟む「二人とも、荷物をまとめなさい。」
「「は?」」
それは、青空が広く柔らかな風が吹く昼下がり。院長に呼ばれた私とアルは突然15年過ごした孤児院を追い出された。
~10分前~
「ミア、こんな所にいたのか。」
グレーの短い髪に黒の瞳の男、アルフレートは私を見てわざとらしくため息をついた。
「なに?」
せっかく気持ちよく寝ていたのにと不満を顔に出し身を起こす。上から見下ろしてくるアルは私の腕をつかみぐいっと引っ張ってきた。
「何じゃねーよ。昼食とって片付けたら院長室に来いって言われただろ」
あぁ、そういえばそんな事を言われたような……。
昼食のパンとスープが美味しくて食べすぎたから眠くなっちゃったんだよね。
「ごめん、すっかり忘れてた。」
「行くぞ」
ここ、私たちが暮らす孤児院は国の辺境つまり田舎にある。子供は小さい子から大きくなった子までで20人ほどだろうか。だが、この孤児院は貧しくなく割と不自由なく過ごせる。
なぜ、こんな田舎にある孤児院が貧しくないのか。
それは私達の存在が大きいだろう。
私たちが住むこの世界には『魔法』というものが存在する。
精霊の力を借りてそれを具体化するものもあれば魔力を用いて粒子や細胞を操ることもある。
まぁ、つまりは精霊と契約していたり魔力があるなら使えるという事だ。
魔法は、この世界に属する様々な種族が使える。魔族だったりエルフだったり、竜族やあとは人族。
人族は王族や貴族が中心。平民だと10人に1人らしい。使えたらラッキーくらいって院長が言ってた。
私とアルはたまたま二人共魔力があった。なので、本を読んだり自分たちで練習して様々な生活魔法を身につけた。
魔法が使えるから私達はこの辺の街の人の手伝いをしたり、孤児院のバザーとかで働いたり…だから私達の孤児院はそこそこ裕福なのだ。
あれ?なんでこの話になったんだっけ?
あぁ、お昼のパンとスープが美味しかったの。
コンコン
「どうぞ」
中からいつものように院長の声が聞こえた。私達は部屋に入る。
「やっと来たか 、遅いぞ」
「すいません、ミアが寝てて」
はぁ、とため息をついた院長は私達に椅子に座るよう促す。
「最近はどうだ?」
「クッキーが沢山売れました。あとレーナとリンを連れて教会の掃除に行きまた。それとお皿が割れたから新しいのが欲しいです。」
「先週入ってきたマイケルは生活に慣れてきたみたいで元気になりつつあります。キルトが本が好きなのか最近読書をしているようです。最近は皆よく食べるしよく遊びます。」
「そうかそうか。それは良かった。」
そう言って眉をあげて笑う院長はいつもより元気が無さそうで、何かあったのかと思った。
「院長、何か俺たちに用事があったんじゃないんですか?」
アルも院長の様子に気づいたみたい。
「あー…そうだね、こほん。
ミア、アルフレート。君たちは今年で15歳になったね?孤児院で毎日小さい子達の面倒を見てくれて、魔法で支えてくれて、職員を初め、他の子供達も、私も、とても感謝している。」
いつもよりも仰々しいその話し方に思わずアルと互いに顔を見合わせる。
「二人とも、荷物をまとめなさい。」
「「は?」」
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