9 / 19
第1章
9 思い出の部屋②
しおりを挟む
よいしょ。ピアノの椅子に座って足を伸ばす。
さすがは4歳、ペダルぎりぎりだ。
(ショパンなら簡単にぺらーっと弾けるし、間違えてもわかんないからいっか。)
ショパン ノクターン 13番遺作
前世の記憶を頼りにして指を動かす。
コレットの息を飲む声が聞こえた。
高級なピアノなんだろう。調律もされていて象牙の鍵盤の冷たさが指に伝わる。まるで流れるように弾ける。演奏者にもわかる。空気が変わるということが。
(あぁ、素敵なピアノだ。)
ピアノの音に耳を潤しているとき
バンッ!!!
不適切な不協和音が響く。
勢いよくドアが開いた。
そこには、私と同じ色の髪の毛をボサボサに伸ばし、目は深緑。不健康な白い肌で、息も切らして肩で呼吸をするお兄様。アルベルト・ヴェルナーが立っていた。
今は6歳くらいだっただろうか。
「今のは…君が弾いたのか?」
とても久しぶりにお兄様の声を聞いた。思わず緊張と勝手に弾いてしまって怒られるかもと思い手が震える。
「は、はい…」
お兄様は私の返事を聞くと、そうか…と踵を返そうとする。
その後ろ姿を見て呼び止めてしまった。
「お、お兄様!!!まって!!!」
急いでピアノの椅子から降りようとする。焦ってドレスが引っかかる。
(このタイミングでか!!)
イライラしながら半ば強引にドレスを引っ張ってお兄様にてを伸ばす。ぎりぎりというところで届かず、転ぶ。
「お嬢様!!」
コレットが心配そうに駆け寄ってくる。
(あぁ、私は何をしているんだ。)
お兄様はこのゲームでは攻略対象。近づかない方がいいに決まっている。でも、あの後ろ姿…寂しそうで泣きそうな姿のお兄様を放っておけるほど私の性格も悪くない。
まぁ、その手は届かなかったわけだが。
「君は何をしてるんだ…。」
ひょいっと私を持ち上げる。その視線の先にはちょうどお兄様の目があった。あぁ、お母様と同じ色の目だ。
そこで、つい私のコバルトブルーの目から涙が出た。
さすがは4歳、ペダルぎりぎりだ。
(ショパンなら簡単にぺらーっと弾けるし、間違えてもわかんないからいっか。)
ショパン ノクターン 13番遺作
前世の記憶を頼りにして指を動かす。
コレットの息を飲む声が聞こえた。
高級なピアノなんだろう。調律もされていて象牙の鍵盤の冷たさが指に伝わる。まるで流れるように弾ける。演奏者にもわかる。空気が変わるということが。
(あぁ、素敵なピアノだ。)
ピアノの音に耳を潤しているとき
バンッ!!!
不適切な不協和音が響く。
勢いよくドアが開いた。
そこには、私と同じ色の髪の毛をボサボサに伸ばし、目は深緑。不健康な白い肌で、息も切らして肩で呼吸をするお兄様。アルベルト・ヴェルナーが立っていた。
今は6歳くらいだっただろうか。
「今のは…君が弾いたのか?」
とても久しぶりにお兄様の声を聞いた。思わず緊張と勝手に弾いてしまって怒られるかもと思い手が震える。
「は、はい…」
お兄様は私の返事を聞くと、そうか…と踵を返そうとする。
その後ろ姿を見て呼び止めてしまった。
「お、お兄様!!!まって!!!」
急いでピアノの椅子から降りようとする。焦ってドレスが引っかかる。
(このタイミングでか!!)
イライラしながら半ば強引にドレスを引っ張ってお兄様にてを伸ばす。ぎりぎりというところで届かず、転ぶ。
「お嬢様!!」
コレットが心配そうに駆け寄ってくる。
(あぁ、私は何をしているんだ。)
お兄様はこのゲームでは攻略対象。近づかない方がいいに決まっている。でも、あの後ろ姿…寂しそうで泣きそうな姿のお兄様を放っておけるほど私の性格も悪くない。
まぁ、その手は届かなかったわけだが。
「君は何をしてるんだ…。」
ひょいっと私を持ち上げる。その視線の先にはちょうどお兄様の目があった。あぁ、お母様と同じ色の目だ。
そこで、つい私のコバルトブルーの目から涙が出た。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる