悪役令嬢がでれでれに溺愛されるまでの話

ててて

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第1章

13 お兄様の苦痛

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率直に私が思ったことを言おう。

はぁ!?

である。


「…それは、一体どういうことですの?」

「……お母様の容体が悪くなられてから僕たち子供が部屋に入れてもらえなかっただろう?」

「…はい。そうでしたわね。」

どれだけお母様に会いたいと使用人達に文句を言っても泣きわめいても絶対に会わせてもらえなかった。

「それはね、お母様は本当は身体が辛いのに僕たちの前だと無理をしてしまうんだって。
今までも僕たちと遊びに行ってた時は無理してたこともあったんだって。だがらお医者さんが長生きしたいならこれ以上は無理をしてはいけないと言ったからお父様が苦渋の判断をしたんだって。じいやから聞いたんだ。」

(そうだったのか…。)

道理であの時どんだけ叫ぼうとも使用人達が頑なにして会わせなかったわけだ。

「お母様が私たちに付き合ったせいで症状がひどく……なら、私も」

「いや!ちがうんだ!!僕は…ぼくは!!我慢ができなかったんだ。どうしても、どうしても講習のテストで取った点数を見せたくて使用人達の目を盗んでお母様に会いに行ったんだ。

でも!!
そこにはお母様が…あんなに元気だっに!お母様はやせ細って顔色が悪くて…でも僕の顔を見たときに笑ってくれて…僕はお母様の姿をみてビックリしてしまって思わず逃げたんだ。
お母様が話しかけてくださっていたのに…」

涙を流し手で顔を覆い懺悔するように泣く。

「結局、僕はその後一度もお母様に会いに行かなかった。いや、行けなかったんだ。あそこまで姿が変わってしまったお母様が…別人で……逃げ出した自分が情けなくて」

「そのまま…逃げ出したことも謝れず、話しかけられたのに話も聞けず……………きっと、お母様は僕のことを嫌いになっただろう。こんな息子なんて…」

私は泣きながら下を向いてしまったお兄様の顔をぐいっと上に向かせて自分の目に合わせる。

「お兄様、お母様は絶対にお兄様を嫌うことなんてありません。絶対です。」

「なにを……」

「だって、お母様は弱ってしまった姿を私たちに見せて心を痛めるのを危惧したのですよ?まぁ、お兄様は会ってしまい、実際に心を痛めているのですが…

お兄様……お母様は亡くなってしまったのです…。亡くなった人はもう戻ってきません。話すこともできません。」

お兄様へと手を伸ばし抱きしめた。

「お母様は…亡くなった……。もう、戻ってこない…もう、謝れない。」

お兄様は、まだ受け止めれていないのだ。本当にお母様が居ないということに。部屋から出ず、人にも極力関わらない。そうして、お母様がいないこの屋敷を見ないようにしてきたのだろう。

「あはは……本当に、僕は弱くて愚かで救いようのない馬鹿だ。なぁ?僕は兄になんか相応しくないだろう?もう僕なんか嫌いだろう?」

「嫌いになんてならないわ!!」

思わず立ち上がりお兄様に訴えるように叫んでしまう。

「嫌いになんてなれるはずないじゃない!絵本も読んでくれて、いっぱい遊んでくれて、お勉強も見てくれて……私はお兄様が大好きなんだから!それはお父様もお母様も変わりません!」

はぁ、はぁ、と息を整える。私を見つめるお兄様は驚いた顔をしていて、私は自分の品のなさに恥ずかしくなった。

「と、ともかく!!お兄様のことは大好きなので、あ、安心しして下さい!!」

顔に熱が集まり熱いが、この勢いのまま言ってしまう。

お兄様はポカーンと顔がほうけていたが時間が立ち、ため息を吐いた。

「…まったく、僕は馬鹿だな。」

そういって前髪をくしゃっとかきあげ立ち上がる。机にあったリボンで後ろ髪をまとめ、近くにあったハサミでジョキンっと束ねた根元を切った。


あまりのことで私は声も出ない。

パラッと髪の毛が落ち、次に無図像さに伸びた前髪もジョキジョキ切っていく。

そうして、ハサミを机に置いた頃には短髪でさっぱりした兄が立っていた。

「…リオーネ。僕はもう一度やり直すよ。僕とまた兄弟になってくれるかい?」

一年ぶりほどに呼ばれた名前。そして、私を見つめ右手を差し出される。

私は目に涙が浮かびよく前が見えなくなった。が、ぎゅっと両手でその手を掴む。

「おかえり、お兄様」

「ただいま、リオーネ」




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