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「…ダリウス・ヘングラスだ。1-Aの担任でつまり、ウェルナーの担任でもある。さっきの情けない姿は忘れてくれ。頼む」
準備室内に移動した私たちは、山になり崩れたたくさんの書類をかき集めて寄せて、やっと空いたソファに座った。
新しい担任様は生徒に土下座を見せた後に、忘れてくれと両手を合わせて頼み込んでいる。
私は「はあ…」としか言いようがなかった。
「セレシア・ウェルナーです。よろしくお願いいたします。」
「おう。ウェルナーの編入テストの答案用紙見せて貰ったが、かなりの出来だったな。特に論文に対する興味の持ち方や、推論は目の見張るものがあった!是非、俺の弟子にしたいぐらいだ!」
「…はあ。あ、ありがとうございます?」
なんだろう。この人は一応王立学園の教師という立場なのだから、優秀だろうし、尊敬できる方の筈なのに、そんなことを言われても全然嬉しくない。
「明日から楽しみだな!うちのクラスは、皆仲がいいし、優秀だからすぐに馴染むだろう!明日から頑張れよ!」
「ありがとうございます。明日からよろしくお願いいたします。」
フォーレの学園では、わざとテストで点数を下げクラスをエミリーと同じにしたせいか、授業はやり甲斐がなくつまらなくて、エミリー以外のクラスメイトには何故か話しかけられなかった。
だから、馴染めたらいいなぁと思う。
「うーん、もう粗方説明は終わったんだけど…セレシア嬢、何処か行きたいところとかある?」
「………っ!図書館へ是非連れて行って下さいませんか?」
忘れてた!!あまりにも建物が豪華絢爛で、思いつかなかったが、これだけ広い学園なのだから、図書館だって広いと期待していいはず!!
「…初めて見る素の笑顔が、まさか図書館とはね。よし、行こう」
「では、先生。これで失礼します!」
「お、おう」(そんなに喜んで出ていかれても…)
思わず、先程までよりも足が早くなるのは仕方がない。自然の摂理だ、仕方がない。
「セレシア嬢は、本がお好きなのですか?」
「はい!フォーレでも毎日本は読んでいました。実は、バルティーヌには読んだことの無い本がたくさんあると思って楽しみにしていたのです!」
「なるほど。貴方は好きなことになるとそんなに眩しいほどの笑顔をされるんですね。」
そう言われて、初めて口元がだらしなく緩みきっているのが分かった。思わず恥ずかしさで、顔が熱くなるのがわかる。
「…失礼いたしました!つい、本のこととなると気分が上がってしまって……」
「ん?いやいや。笑顔が素敵だったので、思わず感想を言ってしまっただけですよ。どうかそのまま笑顔でいて下さい。」
「……あ、ありがとうございます。」
ラシード様は年上だからか、お兄様に似てる気がする。お兄様よりも、ずっと体格がいいし、顔は怖いけど、親切だし。
「……ラシードがそんな臭いセリフ言うところ始めてみた。」
「何がおっしゃいました?」
「別に。なーにも。…ほら、セレシア嬢!図書館着いたよ!!」
少し重そうな扉に、金の装飾があしらわせた取手を握るとゆっくり扉が開き、壁全面全てが本の図書室が現れた。至る所にハシゴが掛けられいる。
もちろん、壁だけでなく本棚も置かれており、本棚と本棚の間には人が1人座れるようなソファや、2人座れるソファ。奥には勉強や調べ物ができるスペースなどが、完備されていた。
「……ここに住みたい」
「ぶっ!!!」
「ははっ」
思わず零れた独り言に、殿下とラシード様は吹き出して笑っていた。
「っはー!!笑った笑った。まさかセレシア嬢がここまで本好きとはね。今日から毎日通いそう。」
「通います。」
「…ふふ、なら君に会いたくなったら図書室に来ればいいってことだよね!」
私は今、明らかに嫌な顔をしているだろう。
それを見た殿下はまた腹を抱えながら笑い、目から涙を流していた。
お顔は美しいのにここまで中身が残念だと、なんだかなぁとやりきれない気持ちになる。
案内もこれで終了ということで、お2人には深々と礼をとった。
図書室は月、火、水、木、風、土、光の1週間の中で光の日だけがお休みなんだそうだ。
ついでにいえば、学園は月から風があり、土と光の日は休日だ。本は1人1日1冊まで借りることが出来るそう。貸出は、受付で借りる本とクラス名前を言えば借りれて、貸出期間は1週間らしい。
1日もあれば、大抵本は読み終わる私にとって、図書室は毎日通うことになりそうだ。
その後は、御二方に寮の門まで送っていただいた。
改めて御二方にお礼を伝え、寮内に入るとユナが
「…早くも虫が……」とボソボソ言っていた。
その後、流石に疲れが出たのか
部屋の備え付けられたソファに座ると眠くなってしまい、ユナに言われるままに入浴を済ませ、早々に就寝した。
ーーーーーーーーーーー
感想のところに、第二王子がヒーローですか?王子好きになれないです…みたいなコメントが来ましたが、安心してください。
第二王子はヒーローではありません!!(強調)
彼はコメディ担当です!!!
私もこんな!ヒーローは!嫌!!(ごめん王子)
準備室内に移動した私たちは、山になり崩れたたくさんの書類をかき集めて寄せて、やっと空いたソファに座った。
新しい担任様は生徒に土下座を見せた後に、忘れてくれと両手を合わせて頼み込んでいる。
私は「はあ…」としか言いようがなかった。
「セレシア・ウェルナーです。よろしくお願いいたします。」
「おう。ウェルナーの編入テストの答案用紙見せて貰ったが、かなりの出来だったな。特に論文に対する興味の持ち方や、推論は目の見張るものがあった!是非、俺の弟子にしたいぐらいだ!」
「…はあ。あ、ありがとうございます?」
なんだろう。この人は一応王立学園の教師という立場なのだから、優秀だろうし、尊敬できる方の筈なのに、そんなことを言われても全然嬉しくない。
「明日から楽しみだな!うちのクラスは、皆仲がいいし、優秀だからすぐに馴染むだろう!明日から頑張れよ!」
「ありがとうございます。明日からよろしくお願いいたします。」
フォーレの学園では、わざとテストで点数を下げクラスをエミリーと同じにしたせいか、授業はやり甲斐がなくつまらなくて、エミリー以外のクラスメイトには何故か話しかけられなかった。
だから、馴染めたらいいなぁと思う。
「うーん、もう粗方説明は終わったんだけど…セレシア嬢、何処か行きたいところとかある?」
「………っ!図書館へ是非連れて行って下さいませんか?」
忘れてた!!あまりにも建物が豪華絢爛で、思いつかなかったが、これだけ広い学園なのだから、図書館だって広いと期待していいはず!!
「…初めて見る素の笑顔が、まさか図書館とはね。よし、行こう」
「では、先生。これで失礼します!」
「お、おう」(そんなに喜んで出ていかれても…)
思わず、先程までよりも足が早くなるのは仕方がない。自然の摂理だ、仕方がない。
「セレシア嬢は、本がお好きなのですか?」
「はい!フォーレでも毎日本は読んでいました。実は、バルティーヌには読んだことの無い本がたくさんあると思って楽しみにしていたのです!」
「なるほど。貴方は好きなことになるとそんなに眩しいほどの笑顔をされるんですね。」
そう言われて、初めて口元がだらしなく緩みきっているのが分かった。思わず恥ずかしさで、顔が熱くなるのがわかる。
「…失礼いたしました!つい、本のこととなると気分が上がってしまって……」
「ん?いやいや。笑顔が素敵だったので、思わず感想を言ってしまっただけですよ。どうかそのまま笑顔でいて下さい。」
「……あ、ありがとうございます。」
ラシード様は年上だからか、お兄様に似てる気がする。お兄様よりも、ずっと体格がいいし、顔は怖いけど、親切だし。
「……ラシードがそんな臭いセリフ言うところ始めてみた。」
「何がおっしゃいました?」
「別に。なーにも。…ほら、セレシア嬢!図書館着いたよ!!」
少し重そうな扉に、金の装飾があしらわせた取手を握るとゆっくり扉が開き、壁全面全てが本の図書室が現れた。至る所にハシゴが掛けられいる。
もちろん、壁だけでなく本棚も置かれており、本棚と本棚の間には人が1人座れるようなソファや、2人座れるソファ。奥には勉強や調べ物ができるスペースなどが、完備されていた。
「……ここに住みたい」
「ぶっ!!!」
「ははっ」
思わず零れた独り言に、殿下とラシード様は吹き出して笑っていた。
「っはー!!笑った笑った。まさかセレシア嬢がここまで本好きとはね。今日から毎日通いそう。」
「通います。」
「…ふふ、なら君に会いたくなったら図書室に来ればいいってことだよね!」
私は今、明らかに嫌な顔をしているだろう。
それを見た殿下はまた腹を抱えながら笑い、目から涙を流していた。
お顔は美しいのにここまで中身が残念だと、なんだかなぁとやりきれない気持ちになる。
案内もこれで終了ということで、お2人には深々と礼をとった。
図書室は月、火、水、木、風、土、光の1週間の中で光の日だけがお休みなんだそうだ。
ついでにいえば、学園は月から風があり、土と光の日は休日だ。本は1人1日1冊まで借りることが出来るそう。貸出は、受付で借りる本とクラス名前を言えば借りれて、貸出期間は1週間らしい。
1日もあれば、大抵本は読み終わる私にとって、図書室は毎日通うことになりそうだ。
その後は、御二方に寮の門まで送っていただいた。
改めて御二方にお礼を伝え、寮内に入るとユナが
「…早くも虫が……」とボソボソ言っていた。
その後、流石に疲れが出たのか
部屋の備え付けられたソファに座ると眠くなってしまい、ユナに言われるままに入浴を済ませ、早々に就寝した。
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感想のところに、第二王子がヒーローですか?王子好きになれないです…みたいなコメントが来ましたが、安心してください。
第二王子はヒーローではありません!!(強調)
彼はコメディ担当です!!!
私もこんな!ヒーローは!嫌!!(ごめん王子)
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