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29.地域密着
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あれから3年たった。
中学2年生のスミヨシ見学はあれからすっかり固定化された。
毎年、見学の時期は気合いを入れねばならない。
しかし、活動が身を結び、今では問題意識を持って子ども達を見る人達が増え、相談場所もなんとなく周知されて来たことから、最初のような真っ青案件はだいぶ減少した。
子ども達の学習支援を続けていた鍋島士郎は、なんと、今年から中学校に直接、学習支援員として行くことになった。
ここでのびのびと教えていた時と違い、なかなか大変そうだ。
たまに士郎がパニックになってしまい、校庭を走ってしまうらしい。
そんな時は、みんなで一緒に走るんだとか。
大声を出しながら。
「最初は慌てて戻ってくるように言ってたんですが、みんな5分もすれば、すっきりして戻って来るので、息抜きとして捉えるようになりました。」
との先生の言葉だ。
正直、先生達もだいぶ毒されてきているように思う。
本間航一郎が子どもを預かった件が、良くて黙認だと思っていたのが、まさかの里親に承認された後も、本間の元にはたまに子どもが転がり込んで来るようになった。
そして、それを見ていた車椅子の障害者たちが我先にと一人暮らしを始めた。
ヘルパーを使っていなかった人も、積極的に使うようになり、子どもの預かり場所が増えた。
みんな、人の役に立ちたいのである。
「梨奈さん、いま大丈夫?」
高校生となった前田碧斗が梨奈の元にやってきた。
「どうぞ。」
「あのさ、オレ、どうやったら障害とか差別がなくなるか、考えたよ。」
梨奈は3年前のことを碧斗が覚えてて、考えてくれただけでそれだけで嬉しかった。
「答えは出た?」
「うーん。あのさ、梨奈さん確か社会に適応出来るかどうかだって、言ったじゃん?」
「そうね。」
「でさ、士郎さんは学校に働きに行くようになったじゃん?」
「そうね。」
「航一郎さん達、子ども達の避難先になったから、助けた子の問題ない方の親がヘルパーしたいって、今ではヘルパーに困ってないし。」
「この店も、最初に雇った人達はもうみんな普通に時給もらってんだろ?」
1年ほど前から、障害者施設がもらえる、国の助成が無くても、スミヨシは回っている。
今はその助成金は新しい子達が慣れるまでの補助的な役割として機能している。
「これってさ、社会に適応してんじゃないかな?」
梨奈は嬉しくて、顔がにやけてきた。
「碧斗くんは、今の航一郎さんや、士郎さんを見て、障害者だと思う?」
「いや、分かんねぇよ?航一郎さんたちが身体動けるようになったわけでもないし、士郎さんも言動ズレてるままだし。でも、最初?の時と一緒の障害者かって言われると、絶対違う。なんか、出来ない障害者から、出来る障害者になった感じする。」
碧斗のたどたどしい言葉も、梨奈は嬉しい限りだ。
「もっとこういうのが広まるといいわね。」
「うん。他の地域でも、広まると良いのになって思う。だから、オレここの2店舗目作りたい。」
梨奈はまた新しく出来た仕事に嬉しくなった。
「いいわね。応援するわ。」
外には抜けた青空が広がっていた。
中学2年生のスミヨシ見学はあれからすっかり固定化された。
毎年、見学の時期は気合いを入れねばならない。
しかし、活動が身を結び、今では問題意識を持って子ども達を見る人達が増え、相談場所もなんとなく周知されて来たことから、最初のような真っ青案件はだいぶ減少した。
子ども達の学習支援を続けていた鍋島士郎は、なんと、今年から中学校に直接、学習支援員として行くことになった。
ここでのびのびと教えていた時と違い、なかなか大変そうだ。
たまに士郎がパニックになってしまい、校庭を走ってしまうらしい。
そんな時は、みんなで一緒に走るんだとか。
大声を出しながら。
「最初は慌てて戻ってくるように言ってたんですが、みんな5分もすれば、すっきりして戻って来るので、息抜きとして捉えるようになりました。」
との先生の言葉だ。
正直、先生達もだいぶ毒されてきているように思う。
本間航一郎が子どもを預かった件が、良くて黙認だと思っていたのが、まさかの里親に承認された後も、本間の元にはたまに子どもが転がり込んで来るようになった。
そして、それを見ていた車椅子の障害者たちが我先にと一人暮らしを始めた。
ヘルパーを使っていなかった人も、積極的に使うようになり、子どもの預かり場所が増えた。
みんな、人の役に立ちたいのである。
「梨奈さん、いま大丈夫?」
高校生となった前田碧斗が梨奈の元にやってきた。
「どうぞ。」
「あのさ、オレ、どうやったら障害とか差別がなくなるか、考えたよ。」
梨奈は3年前のことを碧斗が覚えてて、考えてくれただけでそれだけで嬉しかった。
「答えは出た?」
「うーん。あのさ、梨奈さん確か社会に適応出来るかどうかだって、言ったじゃん?」
「そうね。」
「でさ、士郎さんは学校に働きに行くようになったじゃん?」
「そうね。」
「航一郎さん達、子ども達の避難先になったから、助けた子の問題ない方の親がヘルパーしたいって、今ではヘルパーに困ってないし。」
「この店も、最初に雇った人達はもうみんな普通に時給もらってんだろ?」
1年ほど前から、障害者施設がもらえる、国の助成が無くても、スミヨシは回っている。
今はその助成金は新しい子達が慣れるまでの補助的な役割として機能している。
「これってさ、社会に適応してんじゃないかな?」
梨奈は嬉しくて、顔がにやけてきた。
「碧斗くんは、今の航一郎さんや、士郎さんを見て、障害者だと思う?」
「いや、分かんねぇよ?航一郎さんたちが身体動けるようになったわけでもないし、士郎さんも言動ズレてるままだし。でも、最初?の時と一緒の障害者かって言われると、絶対違う。なんか、出来ない障害者から、出来る障害者になった感じする。」
碧斗のたどたどしい言葉も、梨奈は嬉しい限りだ。
「もっとこういうのが広まるといいわね。」
「うん。他の地域でも、広まると良いのになって思う。だから、オレここの2店舗目作りたい。」
梨奈はまた新しく出来た仕事に嬉しくなった。
「いいわね。応援するわ。」
外には抜けた青空が広がっていた。
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