私と彼を繋いでいたのは夢でした―放課後の目覚めと眠り―

月詠世理

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公園へ行く前に(7話)

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 公園の近くにあるコンビニへ。
 出入り口から離れたところに店員がいるため、挨拶はなかった。店内に人が入ったと知らせる音が鳴るのみである。声をかけられないことが私にとっては気楽で良かった。私たちは飲み物が置いてあるところへ向かった。冷やしているケースから桃の味がする水を手に取り、カゴへ入れた。

「えーと、何飲む?」
「うーん、これ!」

 彼の手にはレモンの炭酸が握られていた。しゅわしゅわが苦手だと言っていた暁人が選ぶとはびっくりである。中身が異なれば、興味あるものは違いそうだから、今回は彼の選択によるものであるとはわかっている。不思議ではあることに変わりないが。

 中身が異なると、味覚も変化するのだろうか。その疑問は残ったまま、飲み物が決まったため、食べ物のコーナーへ向かった。レジで中華まんやからあげを頼むことはあるが、今回はどうしようかと迷う。その前に何のおにぎりにするか悩んでいるのだけれど。卵かツナマヨかお肉か。

「ボク、これにする!」

 いつのまにかスイーツコーナーに行っていたようだ。彼はカゴに生チョコクレープともちもちした食感のロールケーキを入れた。甘いものが好きなところは変わらなさそうだが、実際はどうなのだろうか気になった。待たせるのも悪いと思い、私はしゃけといくらが混ざっているおにぎりを掴んだ。

「他に欲しいものある?」
「ケチャップライスをふわとろの卵で包んだおにぎり」
「ふわとろ、なの?」
「さぁ? 食べてみたらわかるよ」
「あ、そうですか」

 食べることでしか解決しないことなので、流すことにした。彼の望むものがカゴに入ったところでレジへ行く。他のものを頼むことはなかった。

「一〇八七円です」

 品物のコードは読み取られて、値段が表示される。

「電子マネーで」

 指定されたところにスマホをかざすと、音が鳴り、光った。レシートをもらい、買ったものが入った袋を持ってコンビニから出る。

「ボク、食べるの楽しみ。琴音ちゃんと一緒にってこともあるけど、記憶にあることで、ボクにとっては初めてのことだから」

 はずんだ声で嬉しそうなのが伝わってきた。

「そっか。――ねぇ、暁人と別人で合ってるんだよね?」

 私のこと”ちゃん”付けで呼ぶし。ところどころ違うな、と思うし。目の色が黒でなく、青だし。私は暁人に似た誰か、だと思っている。つまり、暁人ではない人であるということだ。確認してみるが、思わしくない反応で。

「ボクが暁人か暁人でないかってそんなに重要なこと?」
「重要か重要じゃないかでいえば重要なことだよ。私にとっての暁人はあなたじゃないから」
「そっかぁ。琴音ちゃんにとって名前って大切なことなのかな? ボクにはよくわからないけど、ボクを暁人と呼びたくないなら暁心あけみって呼んで」

 一瞬、寂しそうな表情をしていた。それを問おうにも短すぎたため、聞くに聞けなかった。
 突然、彼は袋を持っていない手で私の手を握って。

「よーし! 公園まで走るぞ! 競争だ!!」

 私の手を引っ張って走っている時点で競争にはならないと思うけれど。私は流れに身を任せた。
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