8 / 11
私と幼馴染と彼(8話)
しおりを挟む
公園に到着した。ブランコや滑り台、砂場、鉄棒などがあった。私たちは茶色のベンチに腰をかける。私と暁心の間には買い物袋が置かれた。走ったことで無駄に体力を消耗した気がする。飲み物を口にいれようと思い、袋から取り出そうとする。
「へぇー、桃の味がするね。すごー」
何故か暁心の手に私の飲み物があった。
「それ私のなんだけど。何平然と飲んでるの?」
「知ってるけど、どんなのか気になったから一口いただきました。勝手にごめんよ」
顔を伏せてしょんぼりした風で謝罪しているが、それが軽いものに見えてならなかった。それと、幼馴染(そう判断していいものか疑問はある)とはいえ、他の人が口をつけたものを飲むのには抵抗があった。喉が渇いているのも事実で。私はゆっくりとボトルを傾けた。口に流し込む。
「琴音ちゃんと間接キスできた。嬉しい!!」
これを狙っていたのか。確信犯だ。私はニマニマと緩んだ笑みを浮かべている暁心を叩いた。
「そんなに怒らなくても……」
「――怒ってない! それで? 暁人はどこにいるの?」
「えー、もう琴音ちゃん暁人のことばかり。少しはボクのことも考えてよ。ボクがボクであれる時間は少ないんだ。その時間を君と過ごしたい。お願いだ、ボクを拒まないで」
まっすぐに私を見つめてくる。それは断るのが難しいと思うほどの純粋な願いだった。
「それにさ、ボクが暁人になるんだし、気にすることないよ」
「どういうこと?」
次に続いた言葉に彼の想いを受け入れられるか怪しくなった。
語った内容は嘘だったのだろうか。暁心でいられる時間は少ないと言っていたが、暁心が暁人になるということになるのだろうか。
「怖い顔だね。はい、ロールケーキ。甘い物食べてリラックス、リラックス」
クスリッと笑った暁心をギロリッと睨んだ。その時、口にロールケーキを突っ込まれた。むせそうになったのを我慢した。今、ぶすくれた表情になっていそうだ。私は口の中にあるものを飲み込むために、繰り返し噛んでいる。
「琴音ちゃんはさ、暁人が何かを探していたことに気づいてたよね? それがボクなんだよ。見つけようと思って、外を探したところで見つけることなんてできない。見つけられるわけがない。だって、暁人が探していたボクは――」
「なんで暁人が暁心を探すの?」
話を遮ってしまったようだ。なんとかロールケーキを飲み込むと、この疑問が口から出ていた。暁人と暁心がやはり無関係でないことは彼の口ぶりからしてわかった。知りたいような、知りたくないような、でも知らないといけないような、そんなごちゃまぜの気持ちになる。私は暁心の言葉を待つ。
「琴音ちゃんはボクにとっての特別だから教えてあげるよ。琴音ちゃんはさ、ボクが暁人ではない別人だと言ったけど、ホントはボクも暁人なんだよね。でも、琴音ちゃんが言ったことに間違いはないんだ」
唇を結んでは解いて、唇を結んでは解いての繰り返し。キラリッと輝く青の瞳。優しい眼差しが向けられ、やっとのことで音が紡がれた。浮かび上がったのは疑問。一体どういうことなのか、と。暁心は暁人なのに暁人ではないと言われても混乱するだけである。困惑した表情が出ているのだろう。ニッコリと意味深な笑みが向けられた。
「そうだなー。実は実はボクたちは双子だったのです!」
「はっ?」
先程の柔らかな雰囲気が収まり、おちゃらけた感じがにじみ出た。
暁人は一人っ子だし、双子のはずがない。もし双子であるのなら、もう一人生まれているはずだ。暁心という存在が。
「うんうん、その意味わかんないって言うのがさ普通の反応だよね。でも事実だよ。ボクたちは本来なら兄弟であるはずだったんだけど、楪という家系で双子が生まれることはない。それはなぜか?」
考えても考えても答えは出なかった。子どもたちの遊ぶ元気いっぱいの声が遠くなって、静かになったように感じる。じれったくて仕方がない。語られる真実は何かと気になり、引き込まれていく。
「あはっ! 真面目に話を聴いてくれるのはとっても嬉しいけど、実はボクもわからないんだよね」
「えっ?」
すっとんきょうな声が出てしまった。知っている感じで話してたのに、知らないのかいと思った。
「へぇー、桃の味がするね。すごー」
何故か暁心の手に私の飲み物があった。
「それ私のなんだけど。何平然と飲んでるの?」
「知ってるけど、どんなのか気になったから一口いただきました。勝手にごめんよ」
顔を伏せてしょんぼりした風で謝罪しているが、それが軽いものに見えてならなかった。それと、幼馴染(そう判断していいものか疑問はある)とはいえ、他の人が口をつけたものを飲むのには抵抗があった。喉が渇いているのも事実で。私はゆっくりとボトルを傾けた。口に流し込む。
「琴音ちゃんと間接キスできた。嬉しい!!」
これを狙っていたのか。確信犯だ。私はニマニマと緩んだ笑みを浮かべている暁心を叩いた。
「そんなに怒らなくても……」
「――怒ってない! それで? 暁人はどこにいるの?」
「えー、もう琴音ちゃん暁人のことばかり。少しはボクのことも考えてよ。ボクがボクであれる時間は少ないんだ。その時間を君と過ごしたい。お願いだ、ボクを拒まないで」
まっすぐに私を見つめてくる。それは断るのが難しいと思うほどの純粋な願いだった。
「それにさ、ボクが暁人になるんだし、気にすることないよ」
「どういうこと?」
次に続いた言葉に彼の想いを受け入れられるか怪しくなった。
語った内容は嘘だったのだろうか。暁心でいられる時間は少ないと言っていたが、暁心が暁人になるということになるのだろうか。
「怖い顔だね。はい、ロールケーキ。甘い物食べてリラックス、リラックス」
クスリッと笑った暁心をギロリッと睨んだ。その時、口にロールケーキを突っ込まれた。むせそうになったのを我慢した。今、ぶすくれた表情になっていそうだ。私は口の中にあるものを飲み込むために、繰り返し噛んでいる。
「琴音ちゃんはさ、暁人が何かを探していたことに気づいてたよね? それがボクなんだよ。見つけようと思って、外を探したところで見つけることなんてできない。見つけられるわけがない。だって、暁人が探していたボクは――」
「なんで暁人が暁心を探すの?」
話を遮ってしまったようだ。なんとかロールケーキを飲み込むと、この疑問が口から出ていた。暁人と暁心がやはり無関係でないことは彼の口ぶりからしてわかった。知りたいような、知りたくないような、でも知らないといけないような、そんなごちゃまぜの気持ちになる。私は暁心の言葉を待つ。
「琴音ちゃんはボクにとっての特別だから教えてあげるよ。琴音ちゃんはさ、ボクが暁人ではない別人だと言ったけど、ホントはボクも暁人なんだよね。でも、琴音ちゃんが言ったことに間違いはないんだ」
唇を結んでは解いて、唇を結んでは解いての繰り返し。キラリッと輝く青の瞳。優しい眼差しが向けられ、やっとのことで音が紡がれた。浮かび上がったのは疑問。一体どういうことなのか、と。暁心は暁人なのに暁人ではないと言われても混乱するだけである。困惑した表情が出ているのだろう。ニッコリと意味深な笑みが向けられた。
「そうだなー。実は実はボクたちは双子だったのです!」
「はっ?」
先程の柔らかな雰囲気が収まり、おちゃらけた感じがにじみ出た。
暁人は一人っ子だし、双子のはずがない。もし双子であるのなら、もう一人生まれているはずだ。暁心という存在が。
「うんうん、その意味わかんないって言うのがさ普通の反応だよね。でも事実だよ。ボクたちは本来なら兄弟であるはずだったんだけど、楪という家系で双子が生まれることはない。それはなぜか?」
考えても考えても答えは出なかった。子どもたちの遊ぶ元気いっぱいの声が遠くなって、静かになったように感じる。じれったくて仕方がない。語られる真実は何かと気になり、引き込まれていく。
「あはっ! 真面目に話を聴いてくれるのはとっても嬉しいけど、実はボクもわからないんだよね」
「えっ?」
すっとんきょうな声が出てしまった。知っている感じで話してたのに、知らないのかいと思った。
0
あなたにおすすめの小説
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
あなたの隣は私ではないけれど、それでも好きでいてもいいですか、レオナルド様
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢エリアーナには、三年間ずっと抱えてきた秘密がある。
婚約者であるヴァルフォード公爵・レオナルドへの、誰にも言えない恋心だ。
しかし彼の隣にいるのは、いつも幼馴染の伯爵令嬢・ソフィア。
儚げな笑顔と上目遣いで男性を虜にするあざとい彼女に、レオナルドも例外ではないようで——
「レオ、私のこと嫌いにならないでね?」
「……そんなことにはならない」
また始まった二人の世界。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
幼馴染を溺愛する婚約者を懇切丁寧に説得してみた。
ましろ
恋愛
この度、婚約が決まりました。
100%政略。一度もお会いしたことはございませんが、社交界ではチラホラと噂有りの難物でございます。
曰く、幼馴染を溺愛しているとか。
それならばそのお二人で結婚したらいいのに、とは思いますが、決まったものは仕方がありません。
さて、どうしましょうか?
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる