限られたある世界と現実

月詠世理

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その他短編

ちょっと俺たちのことがわかるかもね。でも、わからないかも。少し話してた気がする。

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「へぇ~お前ら異人だったんだな。保護する施設あったはずだぜ。あそこ地獄だけど」

 異人とは異なる世界からやってきた人々のこと。通常世界は独立しているが、時に空間が捩れ、別の世界が映る穴ができるらしい。その穴は別世界の入り口となっているそうだ。放っておけば閉じるもの。ただもの珍しさに飛びつくと二度と元の世界へ帰ることはできないと言われている。それは帰る方法が見つかっていないからか、いろんな世界があると言われているからかは不明なんだってね。

「うん? そうなのか? まあ、言葉の通じないのには困ったけど、変なやつにあって翻訳機能が働くようになったし問題なかったぜ」
「ムイとチカがいた場所って本当に保護施設??」
「さぁ? それより、異人は高い能力を持つんだね。初めて知った」
「あれ、俺の質問に答えてよ。あー、能力この世界にいるほとんどのやつが持ってるもの。ただその能力をコントロールできることがすごいことなんだよ」

 淡々と話すフーであるが、その顔は輝いているように見えた。なにか面白いことでもあるのだろうか。私は施設にはコントロールできる人しかいなかった気がする。すごいってことはコントロールするのが難しいということだろう。そういうものだとは知らなかった。まあ、その施設もすでに潰れているけど。

「フー、保護施設?? ……のことだけど、もう潰れてるよ」
「えっ? それはない。保護施設は国の管轄下にあるんだ。四つの国があるから一国で一つ管理している」
「てことは、四つあるってことだな?」
「そう。国の管理にあるからそんな簡単には潰れないはずだ」
「うーん、国がどうとかは知らないけど、もう終わりって、ここは潰れるからって本当になくなったよ?」
「なぁ? 本当に保護施設にいたのか?」

 疑わしげに聞いてくるフー。保護施設のことってそんなに重要なことなんだろうか。私はムーを見て、ムーは私を見た。目が合う。

(どうする?)
(何がそんなに気になってるんだろうな?)
(うーん、わからない。そういえば、この話はするなって言われたね)
(あー、言われたな。非公認でやってるただのボランティアとか言ってたような……)
(なんか嫌な予感)
(よし、ここはあの言葉を言うしかないな。嘘ではないし、大丈夫だ)

 なんとなくだが、ムーの考えていることがわかる。たぶん、ムーも私の考えていることを理解してくれているだろう。以心伝心ってやつだ。ここはあの言葉だよね。これさえ言っておけば大抵はなんとかなる。だって、そうなんだから解決しようがないしね。

「ごめーん、よくわからないや!!」
「ごめんな、よくわからん」
「まあ、そうだよなー。お前たち異人だもんな。急に保護施設がどうとか言われてもわからないよな」

 どうやら納得してくれたようである。フー、ちょろい。もう少し疑うことを覚えた方がいいと思う。私たちはそのおかげで助かっているが。

「でも、施設名教えてもらえると思うんだけど?」
「フーア、言っただろ? 言葉通じなかったって。そういうことだ」
「あー、そういうことか。それならなんもわからなくて当然かもな」

 チカ、フーのことちょっと心配。素直な人だ。
 
 
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