限られたある世界と現実

月詠世理

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その他短編

あれはモリトカゲで美味しそうな鳥は実はまずいらしい。新たな出会いがありました。

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 あの森にいた大きなトカゲの名前はモリトカゲというようだ。モリトカゲはその名の通り森に生息している。茶色と緑色の二色がいるが、自らが色を変えられるらしい。

「へぇ~」
「ふーん」
「お前らな~、教えてやってるのになんでそんな興味なさそうなんだよ」

 適当に相槌を打つ私チーとムー。私たち以外にも呆れ気味に話す人がいる。琥珀色のキレ長の目。くせっ毛のある赤色の髪。中性的な顔立ちをしている男だ。

「フーア、俺たち死にかけたんだよ」
「フー、私たち大変な目にあったんだよ」
「モンスターに攻撃したら攻撃し返されるに決まってるだろ」

 頭をワシャワシャとかき、はぁ、とため息を吐くフー。その様子を見た私たちはフーに突っかかる。

「何ため息吐いてんだよ」
「そうよ! そうよ! ため息吐きたいのはこっちだって」
「お前らいじめっ子か。俺がいつため息を吐こうが勝手だろ!」
「俺らの前でやるなよな。幸せが逃げる」
「理不尽すぎるだろ。だいたい幸せが逃げるのは俺な」
「そんなのどうでもいいから、アイツを倒す方法教えなさいよーー!!」
「先に言ってきたのお前らっ!!」

 私の言葉に反応して大きな声で突っ込んできたフー。キッと睨まれたが、それに怯えることはなかった。

「ねぇ、早く教えてよ~~!」
「そうそう、早く教えろ」
「静かにしろっ!! てか、モリトカゲに喧嘩売って痛い目見たのに、コケコにも攻撃するってどういう神経してるんだよ」
「まん丸のでかい鳥見たら、お腹すいてきてさ。つい、な」
「あの茶色の鳥は焼いたら美味しいと思う」
「しかも、茶色かよ。あれ、食べたらまずいぞ」

 「嘘っ!!」と私たち二人はそろえて声を上げた。あの間抜けっぽい、ぽっちゃりとした体をしていて身がありそうな鳥がまずいのか。その茶目っ気のある姿からは想像もできない素早い動きをしていた。私たちに向かってきて、クチバシでつつこうとしたり、羽で殴ってきたり、突進してきたりと随分凶暴だった。

「美味しいのは黒いやつ。茶色はハズレだよ。アイツ掃除屋だから変なもんしか食ってないの」
「何? 何食べてるの?」
「まあ、それは……いろいろだよ。いろいろ」
「誤魔化すな!」
「まあ、落ち着けって。お前らは運がいい。掃除屋にあって生きてられたんだからな。下手したら食われてたぜ」

 見た目は茶目っ気がある鳥。これは食事してる時に大きな音、主にバリバリムシャムシャと音を立てて食べるらしい。目が血走っているとかなんとか。血を滴らせてそのままの姿も恐ろしい一面だとフーは話した。

「じゃあ、黒いの食料にしようぜ」
「美味しいなら食べてみたいな~」
「お前ら懲りてないのか!! あの凶暴な鳥から泣きながら逃げてた誰かさん達を助けたのは俺!!」
「誰かさんって誰だ?」
「誰かさんって誰のこと??」

 惚けている私達にフーが青筋を立てている気がするが何も見ていないふりをした。おっかない人だ。

 あのく……風の精ウィンと言い合いをしているところを怒ったムーに止められた。恐怖から、く……ウィンと私はお互いそっぽを向いて大人しくなった。その後、ムーがウィンに頼んで私たちは空中飛行をしながら、安全なところへ向かっていた。そこで見つけたのがまん丸の茶色の鳥である。ちょうどお腹が空いた私達。ウィンに頼んで地へ下ろしてもらった。すぐさま弓を手に一撃。奇襲をしかけた。

「コケーコケーー!!!」

 うるさく鳴いた鳥は私を見た。弓を持っていたからだろう。攻撃したのが私だと理解したのか、襲いかかってきた。私は鳥の攻撃を回避をしながら、逃げる。

「ウィン! あの鳥に風の刃を当てろっ!!……って、あれ? いない!!」

 私はなんとか襲ってくる鳥を対処しながら、ムーを横目で見た。ふわりと落ちてくる紙を掴んでいる。

「えーと、なになに……僕はお暇します。じゃあ頑張って、だと……」

 ぐしゃっと紙を握りつぶしたムー。

「あいつまた逃げやがった!!」
「はぁ? やっぱりさっき締めとけばよかったじゃん!!」
「そんなことより俺たちも逃げるぞ。あれの力を借りれないのはきつい。アイツあとで覚えとけよ!!」

 怒り心頭のムー。どうやら逃げるらしい。一人で鳥を対処するのは厳しいため、私はそれに従うしかない。

「一瞬でいいから動き止めて!」
「アクア。あの鳥に水をかけろ」
「かしこまりました」

 透き通った青色をした小さな人の形をした者がさっとでてきた。アクアはムーの指示に是を唱えた。ザバーっと大量の水が鳥にかかる。近くにいた私も被害にあった。

「ちょっともう少し調整できなかったわけ? 濡れた!!」
「申し訳ございません。チー様に当たらないようにするのは難しいです」
「あ、うん、ごめんね」

 鳥と距離が近いのに無理言った、と思った私は謝った。水がかかり、気を取られている鳥。私はそれからなるべく離れ、先端に電気を込めた一本の矢を放った。もちろん、鳥はビリビリと感電する……はずだった。

「なんで、ピンピンしてるのーー!!!」
「いいから逃げるぞっ!!」

 ムーに手を引かれ、走り出した私。隙を見て、矢を放ったり、小さな火を鳥に当てたりしながら逃げた。それでも、すばしっこいやつは追いついてくる。しかも、執念深い。いつまでもいつまでもやってくるのだ。そんな時に遭遇したのが赤い頭をした人。

「おい、危ないから逃げろ!」
「そこにいたら危ない!!」
「はっ?」

 ものすごい勢いで駆けてくる鳥に気づいた赤い髪の人。

「なんでコケコに追われてんの?」

 そう言って、颯爽とアイツを追い払ってくれたのである。いわば、フーは恩人だ。

「あ、私チカね。チーって呼ばれてるよ。助かったわ」
「俺はムイ。ムーって呼ばれてる。助かったよ」
「でも、ありがとうなんて言わないから!」
「でも、ありがとうなんて言わねーからな!」
「あなたが勝手にしたことだもの」
「あんたが勝手にしたことだからな」
「お前ら、もしかして面倒なやつ?」

 失礼しちゃうよね。私は軽く足を蹴り、ムーは軽く頭を叩いた。

 
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