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8話
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「ルルフィアーノとの条件? 父上それはなん……」
「うるさいから黙っていろ。エリオット、もう一度言うが、お前にも関係のあることだ。良く聞いていろ」
ビリビリとした空気が辺りに広がった。
やっと、この時が来たのよ。私は恋愛結婚ができるようになった。傷物とか言われるかもしれないけど、平民だったらそれを気にしないだろう。平民を狙おうかしら。その前にバカ王子とのことを終わらせないとね。
「ルルフィアーノ嬢とエリオットの婚約を結ぶために彼女が出した条件がある。一つ目は、エリオットが婚約破棄を申し出たら、二人の婚約は白紙に戻すこと。二つ目は、エリオットの廃嫡。三つ目は、エリオット自身の財産でルルフィアーノ嬢に慰謝料を払うことだ」
「っんな!?」
「なんですって!?」
「なんですと!?」
場が騒然とするが、主に大きな声をあげたのは三人だった。バカ王子とルリアナ、ルリアナの父親が同時に言葉を漏らした。あまりの内容に驚き固まっていたが、すぐに立ち直り、陛下に意見する。
「父上。僕が廃嫡になるってどういうことですか!!」
「王様。エリオットが廃嫡になるってどういうことですか!」
「王様。私の娘は王の妃になるのではなかったのか?」
陛下に物申す三人。よくもまあ、陛下に対して、あのようなことを言えたものだ。陛下も説明しようとしているのに、なぜそれを遮って自分の意見を述べるなんて真似ができるのか。無知な人たちは怖いわ。今まで何を教わってきたのかしら。
「いいから黙って聞きなさい。ルルフィアーノ嬢とエリオットの婚約時に密かに彼女から条件を出された。それが先程の三つだ。婚約が破棄された暁には、あの三つの契約を履行しなければならない。つまり、エリオットは廃嫡。もう王子ではなくなるということだ。そして、エリオットは自分自身の財産でルルフィアーノ嬢に慰謝料を支払う必要がある。金額はルルフィアーノ嬢が提示するものを支払うこと」
「待ってください、父上! そんなの横暴です!!」
「エリオット。お前が抗議したところで何も変わらない。これは決定事項だ」
そんな、と肩を落とすバカ王子。その間にバカ王子の婚約者となったルリアナは陛下を睨みつけていた。
「王様。エリオットが王子ではなくなるということは、次期王様の話はなくなったということでしょうか?」
「なぜ許していないのにもかかわらずに、勝手に口を開く者が多いのか。はぁ、ルリアナ嬢の言う通り、エリオットはこの座に就くことはない」
「なら、この婚約はなかったことにしてください!」
「ルリアナ!?」
好きな子はバカ王子自身についてきてくれると思っていたのだろう。落ち込んでいた彼はすぐさまルリアナの方を勢いよく振り向いた。先程、永遠を誓い合った仲なのに、なぜという表情をしている。誓いがこうも簡単に覆されたことをバカ王子はどう思っているのだろうか。
「ルリアナ嬢、それはできない」
「なんでですか!!」
「宰相、婚約契約書の内容を読め」
「かしこまりました。簡略に言わせていただく。一、結婚することは決まったものとし、離婚は不可能とする。一、結婚したら、夫婦で一生支え合って生きていくこととする。一、同居して暮らすこと、お互いの不貞は許さず。一、お互いの殺傷は許さず。一、自殺すること、他殺を望むことは罪に値する。また、寿命以外の死を許さず。以上の内容を破れば、それ相応の罰を下す。これが契約書の内容だ」
契約内容が読まれていくにつれて顔色が青くなっていくルリアナ。ゆっくりと首を左右に振りながら、だんだんと後ろに下がっていく。
「う、そよ。うそよ! これからもこんな顔だけのわがまま男に付き合っていかないといけないというの!? そんなの苦痛以外のなにものでとないわ! 次期王様と決まっていたから付き合おうと思っていただけなのに、こんなの……あんまりだわ」
ボロボロと涙を流して、本音を吐露するルリアナ。私はグサグサとバカ王子の胸を抉る彼女の方があんまりだと思った。
「うるさいから黙っていろ。エリオット、もう一度言うが、お前にも関係のあることだ。良く聞いていろ」
ビリビリとした空気が辺りに広がった。
やっと、この時が来たのよ。私は恋愛結婚ができるようになった。傷物とか言われるかもしれないけど、平民だったらそれを気にしないだろう。平民を狙おうかしら。その前にバカ王子とのことを終わらせないとね。
「ルルフィアーノ嬢とエリオットの婚約を結ぶために彼女が出した条件がある。一つ目は、エリオットが婚約破棄を申し出たら、二人の婚約は白紙に戻すこと。二つ目は、エリオットの廃嫡。三つ目は、エリオット自身の財産でルルフィアーノ嬢に慰謝料を払うことだ」
「っんな!?」
「なんですって!?」
「なんですと!?」
場が騒然とするが、主に大きな声をあげたのは三人だった。バカ王子とルリアナ、ルリアナの父親が同時に言葉を漏らした。あまりの内容に驚き固まっていたが、すぐに立ち直り、陛下に意見する。
「父上。僕が廃嫡になるってどういうことですか!!」
「王様。エリオットが廃嫡になるってどういうことですか!」
「王様。私の娘は王の妃になるのではなかったのか?」
陛下に物申す三人。よくもまあ、陛下に対して、あのようなことを言えたものだ。陛下も説明しようとしているのに、なぜそれを遮って自分の意見を述べるなんて真似ができるのか。無知な人たちは怖いわ。今まで何を教わってきたのかしら。
「いいから黙って聞きなさい。ルルフィアーノ嬢とエリオットの婚約時に密かに彼女から条件を出された。それが先程の三つだ。婚約が破棄された暁には、あの三つの契約を履行しなければならない。つまり、エリオットは廃嫡。もう王子ではなくなるということだ。そして、エリオットは自分自身の財産でルルフィアーノ嬢に慰謝料を支払う必要がある。金額はルルフィアーノ嬢が提示するものを支払うこと」
「待ってください、父上! そんなの横暴です!!」
「エリオット。お前が抗議したところで何も変わらない。これは決定事項だ」
そんな、と肩を落とすバカ王子。その間にバカ王子の婚約者となったルリアナは陛下を睨みつけていた。
「王様。エリオットが王子ではなくなるということは、次期王様の話はなくなったということでしょうか?」
「なぜ許していないのにもかかわらずに、勝手に口を開く者が多いのか。はぁ、ルリアナ嬢の言う通り、エリオットはこの座に就くことはない」
「なら、この婚約はなかったことにしてください!」
「ルリアナ!?」
好きな子はバカ王子自身についてきてくれると思っていたのだろう。落ち込んでいた彼はすぐさまルリアナの方を勢いよく振り向いた。先程、永遠を誓い合った仲なのに、なぜという表情をしている。誓いがこうも簡単に覆されたことをバカ王子はどう思っているのだろうか。
「ルリアナ嬢、それはできない」
「なんでですか!!」
「宰相、婚約契約書の内容を読め」
「かしこまりました。簡略に言わせていただく。一、結婚することは決まったものとし、離婚は不可能とする。一、結婚したら、夫婦で一生支え合って生きていくこととする。一、同居して暮らすこと、お互いの不貞は許さず。一、お互いの殺傷は許さず。一、自殺すること、他殺を望むことは罪に値する。また、寿命以外の死を許さず。以上の内容を破れば、それ相応の罰を下す。これが契約書の内容だ」
契約内容が読まれていくにつれて顔色が青くなっていくルリアナ。ゆっくりと首を左右に振りながら、だんだんと後ろに下がっていく。
「う、そよ。うそよ! これからもこんな顔だけのわがまま男に付き合っていかないといけないというの!? そんなの苦痛以外のなにものでとないわ! 次期王様と決まっていたから付き合おうと思っていただけなのに、こんなの……あんまりだわ」
ボロボロと涙を流して、本音を吐露するルリアナ。私はグサグサとバカ王子の胸を抉る彼女の方があんまりだと思った。
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