【二度目の異世界、三度目の勇者】魔王となった彼女を討つために

南風

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還章② 勇者一行

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「あの自称勇者はいま、何処に居るんだ?」

 誰かに言っているわけではない。
 苛つきからか、小声でそう呟いていたのだ。
 オレは、王城の廊下を突き進んでいる。
 部下たちの敬礼を無視し、真っ赤な絨毯が逆立つのも気にせず、踏み抜きながら。

「今頃、お召し物を着させられてるところじゃないですか?」

 背後の姫様に聞こえていたらしい。
 彼女の脚が早まった音が聞こえて、オレは歩幅を合わせるように、足元を緩めた。
 オレとしたことが……。

「……申し訳ありません。独り言です」
「ふふ、そんなこと、分かっていますよ」

 手で口を隠しながら笑う姫様。

「……聖剣の戴剣など、私は到底認められません。あんな得体の知れない人間に――」

 オレは姫様のお顔を拝見しない。お困りの姫様を、さらに困らせたくはないからだ。
 クソ……何故オレは、こんなにも苛ついているのだ。

 玉座の間へと続く両扉の前に立つ。
 姫様が扉に手を伸ばすのを見て、オレは断りを入れ、自ら両扉に手をかけた。
 ゆっくりと力を入れ、開く。
 眼前に広がったのは、尊厳という言葉を具現化したかのような荘厳な空間だ。

 視線を巡らせる。
 数え切れぬほどの人々が玉座の間を埋め尽くしていた。
 王国所属各部隊の代表者、為政者、王国貴族――父上の姿も見える。ただ今は、顔を合わせたくない――地方領主たちもが参列していた。
 イサムと名乗る少年を、勇者に祭り上げるために、これほどの人間が集まったのだ。
 玉座に座すは、メルキセデク王。
 そして、その前に跪くは、ボレアス王国の国章があしらわれた豪奢なマントを身に纏った自称勇者だ。
 奴を見つけたときに着ていた、警備兵のような衣服ではなくなっていた。
 まるで、貴族のような出で立ちをしている。

「ホホホ。遅かったの、騎士団長と戦姫よ。さあ、こちらに」

 立派なお髭を梳き、朗らかに笑う王は、イサムの近くを指した。

「……」

 オレと姫様は無言のまま――いや、姫様は笑っておられるな。
 跪くイサムを一睨みしてやる。
 が、こいつはオレに向かって親指を立ててやがった。
 こめかみに青筋が立つの感じるが、深呼吸をして落ち着かせる。王の御前だ。
 深呼吸を終えた頃に、王が立ち上がった。

「さあ! それでは始めよう! 戴剣式である!」

 祭りが始まった。
 地を揺るがすほどの拍手が城中を走る。
 鼓笛隊、歌唱隊が壮大に旋律を奏で始めた。
 王は、玉座の背後にある、巨大な人型の彫像を見上げる。
 あれは旧く、我がボレアス王国を建国した神を模した彫像なのだという。
 神の彫像が輝いた。
 輝きは収束し、そして王の手に、一本の剣が顕現する。
 鞘に治められた、銀色の剣。

 ――心が、軋む。

 王は、オレと姫様を交互に見つめると、静かに仰せられた。

「騎士バルムンク、そして戦姫リリス。其方らに、聖剣の戴剣を託す」

 その言葉と共に、王は聖剣を差し出した。
 俺に聖剣を渡させる……だと?
 奥歯を噛みしめた。奥歯を割る勢いだ。
 大方、姫様にこの大役を担わせたかった、そんな父親らしいことをしたかったのだろう。

 ――オレを巻き込まないで欲しい。
 口に出したら不敬罪となるような言葉を、生まれてから初めて、思ってしまった。
 姫様は嬉々として聖剣を受け取り、オレの眼を見る。
 さあ、バルムンク? そう言われているようだった。

 ……仕方がない。
 オレは、姫様が支えている聖剣の半分に手を添え、少年を見下ろす。
 このまま、この剣で振り下ろせれば良いのにと。
 心の奥底から湧き上がる泥沼に身を任せたかった。
 もし、ここに居たのがオレだけだったら――いや、過去をどうこう言うのは意味が無かった。
 恨みはする。
 妬みもする。

 だが、こいつが真の勇者だというのなら、この世界は平和になる。
 それなら、それでいい。
 姫様が幸せになるのであれば、だ。
 何も成し遂げられていないような奴が、勇者となる。
 自嘲的な思考が収まらない。止まらない。だからオレは、姫様だけを見た。
 ――彼女は王の名代として聖剣を授ける、その為のお言葉を唱え始めた。

「其方は、ボレアス王国の勇者として、この聖剣を掲げ、魔を討ち滅ぼすと誓うか?」

 膝を折り、俯いていた彼が、決意を湛えた瞳で力強く顔を上げる。

「はい。俺――私は、この世界を護り、本来ある姿に戻すことを誓います」

 その言葉を受け、王は静かに目を閉じ、一拍置いてから大きく頷いた。

「よろしい! 聖剣を授けるは、国王アルコ・メルキセデクと戦姫リリス。そして、ボレアス騎士団長バルムンク・ウェルバインド。この三名が生き証人となろう。戴剣の刻だ!」

 歓声が鳴った。
 オレは、姫様が剣を差し出す動きに合わせる。
 勇者は立ち上がり、聖剣のグリップを握った。
 色褪せていた聖剣が煌めく。思わせるは、月光が落とす薄銀の光。
 そして振り向く――オレたちに背中を向ける形だ。
 先日に出会った怪しい少年は、高々に聖剣を掲げ――勇者となった。

□ □ □
 オレと勇者は、訓練場にいる。
 すでに宴は終わり、日は落ちた。
 見上げると、水面の煌めきのように星々が光る。
 勇者の格好は、最初に出会ったものに戻っていた。

「……貴様、いただいた装いはどうした?」
「いやあ、俺には勿体なくてさ。いつも着ているやつのほうが慣れているんだよ」
「……」

 失礼な奴だ。勇者となった自覚があるのだろうか。装いを身につけないということは、民からの信頼を裏切るものと同義だ。
 そう言おうと思ったが、どうでもよかった。
 こいつの評価がどう下がろうと、オレには関係ないのだから。

 立てかけてある、訓練用の模擬剣を二つ掴む。
 オレはこいつに、模擬戦を申し込んだのだ。
 つまり、憂さ晴らしだ。
 模擬剣を勇者に投げる。
 おおよそ、この投げ方は渡すためのものではない。どちらかというと、投擲だ。
 だが勇者は臆することもなく、模擬剣を掴んだ。

「楽しみだな。模擬戦」
「――は?」

 口に出てしまった。

「だってさ――」

 勇者は剣を振るう。剣圧が、十メートルは離れている俺にまで届いた。

「国一番の騎士と戦えるなんて、光栄すぎるだろ」

 ――――。

「……呆れて物も言えんな」

 剣を構える。こいつに、力の差を教えてやらないといけない。
 勇者となるべきだったのは――オレだ。それを身に分からせてやろう。
 脚を、踏み出す。

「フッ――」

 一息を吐き出す瞬間、オレは勇者の眼前に立っている。
 首と身体を別れさせる――その勢いでオレは剣を真横に振った。が、剣は空を斬る。

「なに!?」

 すぐに首を振る。だが勇者はいない。
 となると――!

「上か!!」
「その通り!」

 上空から襲いかかる剣の重みを、両手持ちで受け止める。

「こ……のッッ!!」

 渾身の力で振り払い、勇者は地に降り立つ。

「さすがだな!」

 そのまま、オレたちは剣戟を交わすことに移行する。
 こいつの太刀筋。素人ではない。そして、王国騎士に近いのだ。
 剣戟を捌き、攻めながらオレは問いかける。

「貴様の剣の師は、王国の者だな!?」
「それはどうかな!」

 振り合った剣がぶつかり、オレたちはそれぞれ、数歩分後方に飛ばされる。

「聞かねばならんことが増えた。そもそも【ニホン】……とかいう国から来たというのが疑わしいと、オレは思っていたのだ!」

 再び剣を構える。

「……ん?」

 剣が軽い。模擬剣は木製とはいえ、魔術によって実剣と同等の重さを持つ。
 それがおおよそ、半分程度の重さになっている。
 オレは構えた剣を見る。
 剣は、折れていた。剣身の真ん中から叩き折られていたのだ。

「ここまでだな」

 勇者は剣を下ろす。
 こいつは、オレの剣だけを集中的に狙っていたのか。
 ……臓物に襲いかかるは不快。心底から湧き上がるは憎悪。
 黒く染み渡るそれらは、オレの判断力を奪っていく。
 勇者になるのはオレだ。ならばこいつから、奪ってやれば良い――。
 そうしてオレはようやく、ことができるのだ。

「……抜かせ」

 構える。
 剣が折られていようと、オレの心は決して折れない。
 口を開けて放心する勇者。だが彼も、戦意を纏い、構えた。
 お互いが、脚を強く、前に踏み込ませた――瞬間。

「バルムンクー! イサム様ー!」

 姫様のお声が聞こえた。
 とっくに勇者は戦意を放出し、構えを解いていた。
 彼は微笑み、姫様を一瞥する。

「……」

 クソ……。オレは心の中で呟く。
 今日の一日で、上級貴族教育の賜物は崩れ落ちた。
   姫様がオレたちに近づいてくる。どうやら、何か用件があるようだ。

「どうかなさいましたか?」

「エリーナ様が、良ければお家に寄らないか、ですって!」

 姫様は嬉しいのか、ぴょこぴょこと飛び跳ねている。

 エリーナ。
 かつてオレの同期だったクラッドの妻だ。姫様と何処で知り合ったのかは分からんが、仲が良いらしい。そして、クラッドというのはこの国で最も優秀な鍛治職人。王国製の武器のほとんどは、彼の工房から生み出されたものだ。

「ですが、お呼ばれしたのはあなた様でしょう? 我々――オレがお邪魔してもいいのですか?」

 勇者を頭数から外す。

「ええ! クラッド様は、バルムンクに会いたいって!」

 ほっとした。勇者は頭数に含まれていないらしい。

「イサム様もいらしてください! 聖剣を見せろ、とのことですよ!」

 そんなことはなかった。ガックシと、オレは項垂れる。

「ええ? 聖剣って勝手に見せびらかしてもいいのか?」

 今ばかりはこいつに同意する。

「お父……王様に確認したところ、もうイサム様の所有物なので好きにして欲しい、ですって!」

 再び項垂れる俺。
 というより、姫様を伝書鳩扱いするのは如何なものか? 彼女が王家の血筋だということが明かされていないことを加味しても、王国騎士団の戦姫ヴァルキリーだぞ?

「んじゃ、クラッドさんに一言挨拶して、寝床に戻るとするかな」

 と、勇者は荷物をまとめ始める。

 今は早くこいつから離れたい、その気持ちしかオレにはなかった。
 自分の浅さを見透かされそうだったから。
 どちらが闇で、どちらが光かが、ハッキリしそうだったから。
 それを、姫様にだけは知られたくなかった。

□ □ □
「あーあーあー! どこの素材なんだこの聖剣って奴はよぉ!?」

 髪を乱雑に後ろに束ねている細身の男、クラッドが聖剣を舐め回すように見ている。ギリギリ触れない程度の距離でだ。このままの勢いだと、本当に舐め回しそうで肝が冷える。
 勇者はそれを見て苦笑い。
 姫様とエリーナは同じテーブルで談笑をしている。

「……なあ、クラッド。それは神から与えられた聖剣だ。素材だって、神由来のものだろう。お前が知らないのも無理はない」

 かつて同期だった男にそう言い捨て、目の前にある酒をあおる。今日は酒を飲みたい気分だった――とは言っても、酒なんてほとんど飲んだことがない。
 酒が喉を焼いている最中、ふた席は離れている――オレが離れたのだが――勇者を一目見る。彼も酒をちびちびと飲んでいる。どうやら、酒が苦手なようだな。
 すでに酒が回っているのか、オレはそんな小さなことですら優越感を感じていた。

「バカ言えよバル。オレっちはこれでも王直々に認めらた鍛治職人だぜ? 騎士団を早々に辞めるほどの才能を持っているくらいのな? そんなオレが神なんてものを信じるわけねえだろ。世界にあるものは、世界にあるものからしか作られねんだよ。お前ェんとこの銀山とかな」

 天罰が下るぞ。

「そうだったな。お前、騎士団はふた月も保たなかったものな」

 過去を思い出す。クラッドは王国騎士団の鍛錬に耐えきれていなかった。あの時は俺が手を貸してやって、それで――

「へえ! 王に認められたってすごいな。じゃあ、今は装具のためならなんでもできるぜって感じか?」

 勇者、いや凡愚に思考を遮られた。
 クラッドは喜色満面の笑みを見せる。

「その通り! お前さん、よく分かってんな。その通りよ! 王は、優秀な人間には潤沢な資源を投入してくださる! ありがてえ話だぜ!」

 勇者の盃になみなみと酒を注ぐ鍛治職人。こいつ、酔いすぎている。

「んじゃさ、俺たちの装具を作ってもらうことって可能か?」

 俺は持っていた盃を落としかける。
 クラッドは顎に指を置き、考え込む。
 勇者は前のめりに、広げた掌をクラッドに突きつける。

「それも五人分だ。ここにいる騎士団長と戦姫さん、そして俺。あと二人は多分、明日にでも王に選定されるだろう。だから大きさの調整は後日ってところだな」
「おーう。俺っちは構わねえが、まだ竜魔王征伐戦に向かうメンツは決まっていないだろう? 当然人数もだ。なんでだ?」
「勇者に選ばれたからかな? 勘だよ」

 クラッドは、鼻を鳴らして笑う。

「お前ぇ、面白い奴だな。良いだろう、いつまでに欲しい?」
「だいたいひと月後までに。この期間があれば、堅く、軽い物が作れるか?」
「余裕よ。おい、エリーナ! 準備を始めるぞ!」

 談話している姫様とエリーナに向かって大声を上げるクラッド。
 突然、交渉が始まり、終わった。
 頭の回らない俺は、眺めるしかできなかった。

「おま、勇者、貴様! 何を意味の分からないことを! クラッド、聞かなくていい。しかも今夜から作業なんてバカみたいだろう。ああ――エリーナ。腕まくりをするな。姫様も腕まくりしてないで止めてください――」

 すっかり仕事モードとなってしまったこの夫婦を止めることはできず、そしてオレたちはクラッド家を放り出された。
 顔肌に突き刺さる冷たい夜風に吹かれていても、酔いが覚めることはなかった。

「どういうことだ勇者……貴様に振り回されるのはもうウンザリ――おい!? どこへ行く!?」

 路地裏に入っていく勇者の片脚が見えて、消える。

「この……知らんぞ、オレは! 姫様、王城までお送りいたします!」

 姫様に言い放つオレ。

「付いていきましょう!!」

 顔を真っ赤にしている姫様はそう笑顔で走り出す。

「ちょ……」

 姫様、飲み過ぎですよ。
 オレはそう呟いて、彼女を追いかけた。

□ □ □
 勇者は路地裏を練り歩く。奴の後方十五歩を維持して、姫様が追いかけている。オレが姫様に追いついたのは数秒後だ。

「何してるんでしょう? イサム様は」
「姫様……それ……オレの……セリフです……」

 心肺機能に異常をきたしている。そうか、オレは酒に弱いのか。
 思い返せば、こうして酒の席に座ったことは少なかった。
 部下に誘われたこともあった。だが、そんなものよりオレは鍛錬を優先していた。
 まだ、何も成し遂げていないのだから。

 あのとき、部下の誘いに乗っていたら、今日のような醜態は晒さなかったのだろうか。 先行する勇者を、息も絶え絶えに睨む。
 奴が魔王軍に属する間者なのだとしたら、この意味不明な行動にも理由がつくのではないか? それに、今の奴は聖剣持ちだ。聖剣を手離す可能性すらある。
 良いだろう。奴が聖剣を手放した瞬間、オレが奪い取り、斬ってやろう。たとえこの腕が爛れ落ちても、だ。

 ふふふ、楽しみだ。

「バルムンク……邪悪な顔……」

 姫様がオレの顔を見て、表情を引き攣らせていた。



 変わらず、勇者は裏路地を練り歩いている。たまに表通りを出てからは、また裏路地に戻る。それを繰り返している。
 オレの不満が蓄積されていく。比例して、姫様の好奇心は抑えきれないようで、爆発しそうだった。
 そして勇者は立ち止まる。右の裏路地を見ているようだ。

「?」

 オレと姫様は、物陰から様子を見る。
 勇者は、長身の女性と対面していた。
 ふんわりと柔らかそうな銀髪、それを肩まで乱雑に切り揃えている。陶器のような肌で、憂いをひそめた垂れ目。おそらく魔導書であろう書物で、自らの肩を叩いている。
 唇で挟んだパイプから烟る赤紫の煙が、どことなく淫靡な雰囲気を醸し出す。

 その正体は、間者か? ただの娼婦であれば良いが。
 オレは念のため、腰の短剣に手を伸ばす。
 ――人を殺す覚悟は、まだ持っていない。

「きゃー! バルムンク、あの方はイサム様の誰なんですか!?」

 姫様は顔を赤くしながら、オレの肩を揺する。
 酒に浸かった脳が揺れ、胃酸が上がってくる――こんなに俗な方だったろうか。ああ、オレはこの尊きお方のことを、全く知らなかったのだな。
 揺れる視界。
 背後から耳に滑り込む妙声を無視し、勇者と女の会話に集中する。だが、見つめ合っているだけだ。
 そして、彼らは笑い出す。
 女は、俺たちが隠れている物陰を一瞥し、言い放つ。

「そこのお二人。安心しなよ。私は怪しいものではない」
「いや、怪しいだろ」

 突っ込む勇者。どうやら、知り合いのようだが? やはり、間者――?
 ひょっこりと顔を出して、えへへと笑う姫様は二人に近寄ろうとする。
 オレはそれを制止して、護るように前へ出た。

「勇者。その女は何者だ。答えによっては、貴様の首を斬ることになる」

 オレは短剣を勇者の首に狙い定める。

「知らないよ。ただ、ここに来れば会えると思っていたんだ」

 勇者はケロリとそういった。
 女は眉を歪め、勇者の顔を覗き見る。

「ま。追いかけられているのは感じていたが、悪い気配ではなかったしね。そうか、君が勇者か? はあん、なにか違和感を感じる……なんだ?」

 勇者の顔をベタベタと触る女。

「わ、うべべ」

 勇者はされるがままだ。
 そのまま、女は首だけをオレたちの方に向ける。

「騎士団長殿。そして、姫様――いや、戦姫と呼ぼうか」

 こいつ、姫様の素性を知っている。
 そうなると、王国内部の者……? だがしかし、それを知っているのはオレと王家のみ……どうなっている。
 勇者の顔を触り続けている女。

「私は預言者だ。預言者メルル。……アリアスタ村の予言者と言えば通りは良いか。この度、竜魔王征伐戦に賢者として参加する者。……参加することになると言っていいのかな? おそらく、王命は明日にでも発令されるだろう」

 預言者。アリアスタ村の。

「……それを証明するものは――いや、十分か」

 短剣を腰に戻した。
 メルルと名乗る女は、姫様の正体を見破っていた。そして、彼女が勇者と呼んだというからには、奴が勇者なのも間違いがないのだ。
 あ。と、メルルが声を小さく漏らす。
 彼女は、勇者の頭を両手で掴んでいた。勇者は彼女を見つめている。

「……ああ。これは、神の――いえ、違うか。そっか――」

 メルルは、奴の頭上付近の中空をぼんやりと眺めてから、そう呟いて、

「よろしくね、勇者!」

 勇者を抱きしめた。
 奴は、彼女の胸に顔を埋めている形だ。
 慌てふためてやがる。が、しばらくして動かなくなった。

「……死んだのか?」

 脳裏に浮かんだ言葉を、俺はそう口に出してしまった。

「死ぬか!」

 勇者がメルルから離れる。顔は赤く涙目になっていやがる。ふん、経験は薄いと見た。
 オレは幼少期から女性に困ることはなかった。
 当然、少年期もだ。自分で言うのも恥ずかしいが、家柄が家柄だからな。寄ってくる女は多い。
 だが、オレはたった一人のお方だけを――姫様が俺に耳打ちする。
 そのお声で、脳を酒に任せて暴れさせていた思考は停止した。

「やはり殿方は、彼女のようなお身体が良いものでしょうか? さっきからずっと見てますもんね?」

 胸に手を添えた姫様が、じろりと横目でオレを見る。
 あなたも負けていませんよ。と言いたいところだが、

「…………」

 オレの口は開かれなかった。


□ □ □
 次の日。
 オレと姫様が王に呼ばれると、そこには既に、勇者とメルルが居た。

「おお、騎士団長と戦姫。話は聞いたぞ。先日、予言者に会ったそうじゃな」

 メルルはひらひらと手を振る。

「ええ。そこの予言者には随分良くしていただきました」

 と、オレはメルルに一睨みを聞かせる。
 おお、怖いとでも言いたげな顔をして、肩を竦めた。
 苦笑いする勇者。

「それではな。まずは彼を紹介せねばなるまい。騎士階級の他で唯一、『戦う者』として認められた男。入って参れ」

 王が部下に合図をすると、彼らが両扉を開く。
 そこには、巨漢の男が立っていた。背には巨大な斧。衣服は農民に近い。だが、腕には煌びやかな腕輪が装着されている。

「王よ。彼は?」

 オレは王に問う。が、答えたのは姫様だった。

「彼は、『戦士の里』出身の猛者です。かの村は代々、強大な戦士を輩出していて――少し、メルル様のご実家と似てますね――私も物心つく前までは、『戦士の里』で過ごしていたのです。彼とも一緒に遊んでいましたよ」
「ああ――」

 そうだった。彼女が王国にやって来るまでは、『戦士の里』で過ごしていたのだ。なぜ『戦士の里』に居たのかは、様々な事情があるのだが……。
 王が言葉を引き継いだ。

「そこでな。この度の竜魔王征伐戦に、彼にも参加してもらおうと招集したのだ」

 おどおどとした巨漢の男が、オレたちに近づく。
 ……見た目に対して、精神性が不安なのだが、大丈夫だろうか?

「お、オイラは『戦士の里』から来ました、ゴンザレス・ザ・ウォリアー! 儀式により、当代の戦士に選ばれた者です。力は誰よりも強いです。どうぞ、よろしくお願いしますです!」

 頭を下げる。
 話には聞いたことがある。『戦士の里』での戦士の儀式で勝ち残った者は、例外的に『戦う者』として認められると。彼は、成し遂げた側の人間なのだ。
 勇者は、まるで華のような笑顔を向ける。

「ああ! よろしくな、ゴンザレス!」

 戦士は気合いを入れるかのように、脇を締めた。

 いま、この場に集まったのは五人。
 先日、勇者がクラッドに作らせる装具の数と同じだ。メルルが勇者に何か言っていたが、その予言めいた力も、神の恩寵なのか。
 ごほん、と王が咳払いをする。
 オレたちは改めて王に向き合い直し、空気を引き締めた。

「これより、竜魔王征伐戦について説明する。目的は、魔王軍による王国領土の侵攻を阻止することである。故に、竜魔王の首を斬る。それが最終目的である」

 そのお言葉には、揺るぎない決意が込められていた。

「予言者メルルによる予言で、我々は『勇者』の転移をいち早く確認した。聖剣は魔に特攻があるため、彼を中心として隊を組む。そのため、勇者を援護するに相応しい面々を揃えた。まずは、予言者メルル。其方に賢者の位を授ける。その知性で、彼らを助け、導いてくれ」
「は。謹んでお受けいたします」

 メルルは静かに跪き、優雅に頭を垂れる。
 続けて、

「戦士ゴンザレス。その曇りなき力と肉体で、彼らの盾となってほしい。『戦士の里』が誇る力を、見せて欲しい」
「は、はい!!」

 ゴンザレスは力強く胸を叩く。大きな音が鳴り、緊張した空気を少し、和らげた。

「そして我が騎士団長バルムンク。勇者の良き相棒、そして半身として、前線を共に戦って欲しい」

 ――オレが、こいつの相棒だと?

「……はっ」

 内心の動揺を押し殺す。納得できなくとも、王命とあれば従うほかない。それが、騎士なのだから。

「最後に……戦姫。おぬしは、彼らの背中を守り、援護に徹してほしい」
「承知いたしました」

 王が彼女を見つめる眼差しは、父が愛する娘を見守るそれだった。
 その役割は、オレにとっても都合が良かった。
 姫様が前線に出さえしなければ良い。
 本音を言うと、征伐戦にすら参加しないで欲しいが、彼女は騎士団の中でも随一の実力を持つ。参加させないという方が違和感だろう。

「頼むぞ。勇者たちよ。この世界の命運は、お前たちに託された」

 王の言葉に応じて、オレたちは最敬礼をする。

「この月が終わる日に、出立いたします。必ず、国に平和を」

 勇者は強い眼でそう告げた。
 普通であるなら、転移したばかりで右も左も分からない状況のはずだ。
 それなのにこいつは、まるで使命を全うするために生まれたかのように、曇り無い覚悟を示している。
 だが、オレはどうしても奴を認められなかった。
□ □ □
「さて、俺たちは俺たちで、結束を固めるとしますか」

 ここは酒場。すでに時間帯は夜だ。
 仕事を終えた労働者が立てる騒音と、怒声を放つ看板娘の声の中。
 オレたち四人は一つの円卓を囲う。言い出しっぺの奴は、開始から早々に何処かへ去って行ったのだ。
 賢者メルルはもう酒に酔っている。

「んだからさぁ、私は言ったんだよ? 『この魔術はアンタの手に負えない。去れ』ってさぁ?」

 なにやら武勇伝を語っている賢者。
 王国に来るまでに起きた一悶着の話のようだ。
 戦士ゴンザレスは酒に強いのか、彼の前には空いた杯がいくつも置かれている。今でも酒を喉に流し込みながら、賢者の武勇伝に頷いている。
 オレは先日の轍を踏まないように、水しか飲んでいなかった。

「スッゲぇなぁ。里じゃ、魔術を使える子は一人も居なかったですからなぁ」

 姫様に視線を向けると、彼女は鼻息を荒くしながら賢者の話を聞いていた。

 一方のオレは、一言も声を発していない。
 集めるだけ集めておいて、姿を消した勇者に胃を痛めているからだ。
 一体何の時間なのだ、これは。

 戦士が突如立ち上がる。賢者がそれに驚いたのか、椅子ごとひっくり返った。姫様が慌てふためき、上着で賢者の下半身を隠す。

「オ! 勇者さん! どこ行ってたんですか?」

 チラリとみると、確かに勇者が酒場の入り口から現れたところだった。

「よう、離席しちまってごめんな。てか、イサムって呼んでくれよ」
「ンダ……外は魔王軍の人が何処に居るか分からないから、役職で呼び合えって騎士さんが……。これって、『ボレアス川に溺れる者、救われぬ』です……」
「どういう意味?」

 肩を竦める勇者。
 戦士は横目でオレをちらりと見る。

「ああ。その通りだ。何処に魔王軍の間者が紛れ込んでいるか分からん……そんなことはいい。結束を固めると言いながら、お前は一体何処に行っていたんだ?」

 ふぅと息を吐いた勇者は、大股で椅子に跨がる。
 そして、一つの袋を出した。中からじゃらりとした音がする。
 軽い何かが入っているようだ。

「ま、王国にいる間は大丈夫だよ。間者がいるのならもう遅いだろ。出立してからでいいよ、名前は。それに、俺たちはこれから命を預ける仲間として過ごす。だろ? 名前くらい呼び合わなきゃ」

 勇者は袋を開ける。中は、紐飾り……か? 編み込まれた紐の中心に、玲瓏な水晶が飾られている。数は五つ。
 彼はそれをオレたちに、一つずつ配った。
 姫様は、紐飾りを優しく両手で受け取る。

「これは?」

 勇者は頭を掻いて、照れくさそうにはにかんだ。

「へへ、まあ、なんというか? 俺たち一行の? 証? 的な?」

 馬鹿らしい、こんなもの……。オレはそれを捨てる気でいた。だが――。
 姫様は、紐飾りをしばらく見つめて、驚くほど晴れやかな笑顔を見せた。
 彼女が大切にしているブローチの隣に、紐飾りを付ける。

「似合ってるじゃん。俺たち仲間の、結束の証だ」
「へえ、洒落たことをするもんだね」
「感謝するです! どこに付けようかなぁ?」

 賢者と戦士も、各人各様に紐飾りを付けている。
 賢者は、それを魔導書の背表紙に引っかけた。

「ゴン。それって大切な腕輪なんでしょ? 腕輪に付けろよ、綺麗なものに綺麗なものを付けると縁起が良さそうだ」

 そうだろうか?

「おお! 流石メルルさんだ。そうします」

 戦士は見せつけるかのように、腕を振り上げる。
 組んだ脚膝の上に肘を置き、手の甲に顎を乗せた賢者が問う。

「良いじゃん」
「へへ」

 勇者はどうしてか無言だ。親愛ではない、言うなれば、慈愛。――そんな目で、彼女たちのやり取りを見つめていた。

「私はこちらに!」

 ウキウキとした笑顔で、戦士に紐飾りを見せる姫様。
 ――姫様は幼少期から、父がメルキセデク王だということを周りに隠していた。
 来る日も来る日も鍛錬に勤しむ。それは、父王の――国のためにだ。
 親という存在に甘えることがなかった。物をねだることもなかったはずだ。だから、誰かから何かを贈られるというのはきっと、嬉しいものなのだろう。

 オレは手放そうとしていた紐飾りを見つめた。姫様に倣って、心臓の位置に紐飾りをつける。
 彼女の国花のような愛らしい笑顔。今回ばかりは勇者に感謝をした。
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