【二度目の異世界、三度目の勇者】魔王となった彼女を討つために

南風

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終章Ⅱ 三度目の勇者

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 私が覚えている、最初の記憶。
 それは広くて、黒い空でした。
 でも、水面が反射したような煌めきが、空を明るくしていました。

 次に、戦士の里。
 ゴンとヴァルガンと一緒に走り回っていると、彫金師さんがやってきました。
 私のブローチを見て、驚きの表情をあげていました。

 彼に連れられて、私はメルキセデク王の前に立っていました。
 王様は、私の掌に置いたブローチを眺めて、頬に涙を流しました。
 王妃様も、王姫様も、泣いていて。
 私は訳が分からなくて、首を傾げます。
 皆様は、私をそっと、抱きしめてくれました。
 『それは君の物だ。そして君は、私たちの家族だよ』と。


 少しだけ大きくなった私は、お父様――いえ、王の為に、国を護ると誓いました。
 訓練場で、毎日剣を振ります。

 貴族の子どもたちが、私に石を投げました。
 私の角にぶつかって、そして次に、おでこに当たりました。
 血が出て、怖くて、痛くて、泣きたくて。
 なんでこんな角があるんだろう。なんでこんな尻尾があるんだろう。
 悔しくなりました。
 でも、我慢します。
 強くならなきゃ。

 そんなとき、子どもたちに怒る男の子がいた。
 私を護ろうとした、男の子がいた。
 すごく嬉しかった。

 でも、なんて言えばいいか、分からなかった。
 お部屋の中で、彼のことをずうっと考えていた。

 だから、男の子とまた会えて、嬉しかったのを覚えています。
 男の子は、私の角と尻尾を見ても、何も言いませんでした。


 もう少し大きくなった頃。
 私は騎士団の陰で、爪弾きにされていました。
 そんな中、クラッド様を迎えに来たエリーナさんと出会いました。彼女は私を怖がらず、友だちになってくれた人でした。
 周りにどう言われようと、何度も私をお茶に誘ってくれました。
 普通の女の子が、どんな格好をするのか分からないものですから、彼女にはたくさんお世話になりました。
 私は独りだ、なんて思ってしまって、ごめんなさい。
 貴女が、私の友だちになってくれましたね。


 ――沢山の記憶が、思い出が増えていきました。

 メルル――私のお姉さんみたいな人。
 ゴンザレス――私に人らしさを教えてくれた人。
 バルムンク――私の、愛する人。
 イサム――私たちを導いてくれた人……私が、迷惑をかけた人。

 みんな、私の姿形を見ても、何も言いません。
 楽しかった。嬉しかった。

 でも、その仲間たちがやられちゃう。
 私の仲間たちが負けてしまう。
 私の愛する人が、死んじゃう。

 この戦いで、私が一番、役に立ててない。
 ――ううん、違う。今までもそうだった。護られてばっかりで!

 だから! 私はいま、跳ぶんだ――!

 ブローチが、空に散らばる星のように砕かれて。
 胸にある『結束の紐飾り』が、輝いた。

□ □ □

 オレたちの目の前に、彼女のブローチが落ちてきた。音を立てて砕け散ったそれは、既に輝きを喪っている。

 立ち上る黒煙が四散して、そのからリリス様が姿を現した。
 光を纏って。
 星が瞬く夜のように。

 ――彼女の名前を呼ぶ。
「リリス様!!」

 名を呼ばれた少女は、一度振り向いて、笑った。

「アノ女ノ、ブローチ――! 生命ヲ肩代ワリスル、『犠牲の魔導器』カ――!」

 竜魔王は驚愕の咆哮を上げる。
 リリス様は、静かに口を開いた。

「お母様は、自分に使うこともできた。なのに、私に託してくれた。私を、生かすために」

 瞳に、決意の光が煌めく。
 そして彼女は、聖剣に手を伸ばした。
 それを見つめながら、イサムは微笑する。

「はは――ああ、よかった」

 彼女の指が、聖剣に触れる。
 瞬間、勇者一行の『結束の紐飾り』が一層強く輝いて、綺麗な尾を引くように、光が繋がった。

 リリス様がその手で、柄を握り絞めると、聖剣から炎が噴き出した。
 聖剣から炎が噴き出す。
 魔を灼く聖なる炎――聖炎は、彼女の身体を包み、灼いた。
 だがそれは、『結束の紐飾り』に吸い込まれていく。

 輝く炎は収束し、弾ける。

 聖炎が――星光と成った。

 剣から溢れ出す光が、天を塗り替える――!

現レルカ――勇者ァァァァァァ!!」

 竜魔王の雄叫び――その腕に、黒炎が収束し、渦を巻く。
 筋力を凝縮し、奴は飛ぶように地を蹴った。

 そして、リリス様もまた、星光の剣を携えソラへと舞う。

 中空で、二人は激突した。

「世界に、あなたはもう必要ありません!」
「抜カセ!! 吾ハ、マダ――!!」
「さようなら、竜魔王――!」

 星の光が煌めく。
 白く、眩い光が爆発した。

 竜魔王の巨躯が、別たれる――!
 ――そして、中空に散った黄金の大双角が、地に墜ちた。
 それは、灰となっていく。

 いつの間にか、天から星が顔を覗かせていた。
 夜風に乗って、灰は消えていった。

 リリス様は着地し、聖剣を払う。
 もう一度振り返って、オレたちに、国花のような笑顔を見せた。

□ □ □

 俺の右腕が回復していく。
 リリスが、上級回復魔術を掛けてくれている。
 バルムンクは既に回復し、その腕の調子を確かめていた。
 傍らには、聖剣が突き刺さっている。

「ありがとう、戦姫」

 腕が全快した。
 聖剣を見つめながら、礼を言う。
 彼女が居なければ、負けていた。彼女が『勇者』になったから、勝てた。

「…………」

 リリスは目を細め、頬を膨らませている。

 どうしよう。
 そう困って、助けを求めるようにバルムンクを見た。
 彼は眉尻を上げて、肩を竦める。

「イサム。彼女の名前を呼んでやってくれ。お前だけだぞ、呼んでいないのは」
 と、溜息をついた。

 そういえば、いつの間にか名前呼びになってるな。

 だけど、緊張する。
 前の世界の出来事があったから。

 でも、聖剣の隣に立つリリスの姿を見て、その考えは捨てた。
 もう、大丈夫だ。

「――ありがとう。リリス……様」

 俺は、彼女の名前を呼んだ。呼べたのだ。

 『勇者』は、
「――どういたしまして!」
 と、笑って言った。

 俺は立ち上がり、バルムンク、リリス、ゴンザレス、メルルの顔を見て、頭を下げる。
「みんな、本当にごめん。黙っていて、ごめん」

 きっと、彼らは許してくれる。
 ――と思ったが、
「許しませんって! 言い方ってものがあったと思います!」「流石に心が折れたぞ、喉を枯らしたほどだ。断じて許さん」「……イサム、死ぬ気で聖剣を使おうとしただろ。私を置いて? 酷い奴だな、キミは」「わ、私はそこまで言いませんけど……もっと信じてくれても……」
 許してくれなかった。

「ごめんなさい……」

 その場で正座し、俯いた。
 俺を罵倒する声――勿論、傷付けるような言葉じゃない――が続く。

 そんな中、メルルがそっと、俺を抱きしめた。
 彼女の頬には、一筋の涙が伝っている。

「良かった……良かったよ、生きてて」

 メルルの言葉に胸が締め付けられて、鼻の奥がツンとする。
 死んでいたら、こうして彼女に触れられなかった。それは、嫌だ。

「メルルにも、迷惑をかけた……ありがとう。ずっと、助けてくれて」
「――迷惑は、掛け合うモノだろ。私たちの仲じゃんか」

 俺も、彼女を、強く抱きしめ返す。

「うん。そうだね」

 嬉しくて、俺たちは笑い合う。
 仲間たちが、安心したような表情を浮かべてくれた。

 ……あ。思い出した。

「てか、ゴンとリリスにも記憶を共有して、本当に良かったのか? その……ほら、恥ずかしい事とか……俺はいいんだけどさ」

 思い浮かぶのは、俺とメルルがベッドの上で――。
 バルムンクが、目線を斜め上に移動させながら、頬をポリポリと掻いた。

「まあ……そうだな、すまん。仲が良いとは思っていたんだが、そこまでとは」
「魔力風の影響だからな……バルムンクはそうだよな……」

 リリスとゴンは、目を丸くして、
「え? なんの話ですか?」「バルムンク、どういうこと?」
 ジリジリとバルムンクに詰め寄っていた。
 どうやら、彼らに共有されたのは、一部分を抜かした記憶らしい。

 俺の腕にいるメルルが、顔を真っ赤にして「おい、バル! 忘れろよ!」と、瓦礫を投げつけて怒鳴った。

 ――ああ。なんだか、懐かしかった。
 ただ嬉しかった。この光景を、取り戻せて。

 さて、そろそろ時間だ。
 腕を解いて、彼女から離れる。

「イサム?」
「ああ――嫌だな、みんなと別れるの。ずっとここに居たい。どうして、それを許してくれないんだろう」

 俺の末端は、消え始めていた。

 仲間たちの息を呑む声がした。
 直ぐにバルムンクが俺の眼前に出る
 そして、肩を掴んだ。

「――心配するな。オレたちは、もう大丈夫だ」

 その声が、小さくなっていく。
 彼の目を見ると、目尻には涙が溜まっていた。

「寂しくなったら、同じソラを見よう。バルムンク」
「ああ……!」
「あとごめんな、顧問官になれなくて。良い領主になれよ」
「ふん、任せろ。誰に向かって言っているんだ?」

 笑って、彼の腕に触れる――もう、触れられなかった。

 俺は、視線をゴンを向けた。
「なあ、ゴン。里のみんなによろしくな。それで余裕が出来たら、バルムンクたちをまた、護ってやってくれ」
「……はい! 勿論です!」

 ゴンは、力強く胸を叩いた。大きな音が鳴り、空気を少し和らげてくれた。
 続いて、裾を両手で握って俯いているリリスに声を掛ける。

「リリス様。バルムンクを頼むよ。こいつ、意外と何するか分からないからさ……サポートが必要だ」

 苦笑したバルムンクが、割り込んでくる。

「おい……そんなことは無いだろう」
「はは! まあ、そういうことだ。王様たちにもよろしく。あと、バルムンクと幸せになってくれ」

 リリスは鼻を一度啜って、
「……分かりました!」
 と、声を上げた。

 最後に、メルルの顔を見ようとした。
 愛する彼女の顔を。
 言おうとしたことが沢山あった。俺を忘れて生きてほしいとか、復興を手伝ってやってくれとか、幸せになりまくってくれ、とか。

 いざ、その時が来ると、全部吹き飛んでしまった。
 目から溢れるものが止まらなくて、声が出ない。
 眼を合わせられない。合わせたらそれこそ、ここに残りたくなってしまう。

「メルル――俺、君に会えて良かった」
 喉から絞り出した声と同時に、止めどなく、涙が溢れた。

 俺の身体が消えていく。
 耳鳴りが襲ってきて、視界は白く塗りつぶされる。

 仲間たちが、俺を呼んでいた。その声が、遠くなっていく。

 最後に、彼女の声が、聞きたかった――――――――。
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