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11章 宿屋娘が憧れの先輩と一緒にとろとろえっちになってしまうお話
213:教育
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その夜も、夕食を終えた後の学習の時間がやってきました。
場所は、ユーノ様に与えられた、広々とした私室。壁一面の本棚には、彼が読破したであろう様々な分野の本がぎっしりと並んでいます。今日の授業担当はエレナさんで、リリアさんは「ギルドへの定期報告がありますので」と言い残し、一足先に自室へと戻っていきました。おそらく今頃、師であるアウレリウス様に、この一週間の出来事を、魔術通信で報告している頃でしょう。
「ですからユーノ様。こちらの地図をご覧くださいな。この大きな川を渡ると帝国で、山脈を越えたこちら側が共和国ですわ。アストリナは、そのちょうど中間にあるでしょう?」
エレナさんは、机の上に広げられた大きな羊皮紙の地図を、樫の木の杖で指し示しながら、根気よく説明を続けます。しかし、やはりユーノくんは、どうにも地理というものが苦手なご様子です。
「うーん…でも、おねえちゃん。この川って、船で渡ればすぐじゃないかな? なんで、こっちの国とこっちの国は、そんなに仲が悪いんですか?」
「それは、長い歴史の中で、色々なことがあったからですわ。そのお話は、また歴史の時間に、ゆっくりと…」
「じゃあ、この山って、鳥さんみたいに飛んで越えちゃえばいいじゃないかな!」
「……ユーノ様。普通の人間は、鳥さんのようには飛べませんのよ?」
そのあまりにも子供らしい、しかし魔術の天才ならではの発想に、エレナさんは、ふぅ、と深いため息をつきました。メイド服の胸元が、そのたびに豊かに揺れます。黒いレースの下着が肌に擦れる感触が、なんだか妙に意識されて、彼女の頬が微かに熱くなるのを感じました。
(いけませんわ、集中しないと…)
しかし、当のユーノくんは、もうすっかり飽きてしまったご様子で、椅子の背もたれにぐったりと寄りかかっています。その姿は、年相応の、可愛らしい子供そのものでした。
「…仕方ありませんわね。少し、休憩にしましょうか」
エレナさんがそう提案すると、ユーノ様の顔が、ぱあっと輝きました。
「ほんと!? やったあ! ねぇ、エレナおねえちゃん、ちょっと待ってて! 僕、とっておきのもの、持ってくるから!」
少年は、弾かれたように椅子から立ち上がると、ぱたぱたと可愛らしい足音を立てて、部屋から駆け出していきました。その背中を見送りながら、エレナさんは、やれやれと肩をすくめます。
(本当に、子供は気まぐれですわね…)
そんなことを考えていると、やがて、ユーノくんが、満面の笑みで戻ってきました。その小さな両手には、銀のトレイが、大切そうに抱えられております。
「お待たせ、エレナおねえちゃん!」
盆の上に置かれていたのは、見るからに食欲をそそる、つやつやとした飴色の焼き菓子と、大きなガラスの瓶。食堂にまで漂っていた甘い香りの正体は、この木苺のタルトだったのでしょう。こんがりと焼かれた生地の上には、粉砂糖が雪のように降りかかり、ミントの葉が愛らしく添えられています。その隣で、ルビーのように透き通った紅色の液体が、ランプの光をその内に閉じ込めて、きらきらと魅惑的に輝いておりました。
「まあ、なんて美味しそう。これを、ユーノ様がお作りになったのですか?」
エレナさんが感心したように尋ねると、ユーノくんは、えっへん、と得意げに小さな胸を張りました。
「うん! 料理長に少しだけ手伝ってもらったけど、僕が作ったんだ! こっちは、お庭で今朝採れた木苺のタルトだよ! それでね、こっちのお酒は、僕が、今年取れたお庭の葡萄で漬けた、特製の果実酒なんだ!」
少年は、少し照れたようにはにかみながら、紅色の液体が満たされたガラス瓶を指さします。その瓶は、ただのガラスではありません。よく見ると、表面には微細なルーン文字がびっしりと刻まれており、魔力を込めて醸造されたことが窺えます。おそらくは、酵母の働きを活性化させ、熟成を促進させるための古代魔術なのでしょう。
「僕は飲めないから、エレナおねえちゃんに、味見してほしくて…。だめ、かな?」
潤んだ大きな青い瞳で、上目遣いに見つめられて、断れる者など、この世にいるのでしょうか。そのあまりにも健気で、愛らしい申し出に、エレナさんの胸の奥が、きゅうう、と甘く疼きました。
(あぁだめよ、エレナ。アウレリウス様との約束を、もう忘れてしまったのですか…)
脳裏に、あのスラムのチンピラのような、しかしすべてを見透かすような師の呆れた顔が浮かびます。『絶対に、酒を飲むんじゃねえぞ』。その言葉が、耳の奥で木霊しました。しかし、目の前でキラキラと輝く期待に満ちた瞳を、裏切ることなど、到底できそうにありません。
なにより、そのルビー色の液体が放つ、芳醇で、蜜のように甘く、そして官能的な香りは、エレナさんの理性を、優しく、しかし確実に麻痺させていくのです。それは、ただの果実酒の香りではありませんでした。太陽の光をたっぷりと浴びた葡萄の甘酸っぱさの奥に、夜にだけ咲くという月光花のかすかな香りや、微量の妖精の蜜のような、人の心を惑わすための香りが、絶妙な配合で混ぜ込まれているかのようでした。
場所は、ユーノ様に与えられた、広々とした私室。壁一面の本棚には、彼が読破したであろう様々な分野の本がぎっしりと並んでいます。今日の授業担当はエレナさんで、リリアさんは「ギルドへの定期報告がありますので」と言い残し、一足先に自室へと戻っていきました。おそらく今頃、師であるアウレリウス様に、この一週間の出来事を、魔術通信で報告している頃でしょう。
「ですからユーノ様。こちらの地図をご覧くださいな。この大きな川を渡ると帝国で、山脈を越えたこちら側が共和国ですわ。アストリナは、そのちょうど中間にあるでしょう?」
エレナさんは、机の上に広げられた大きな羊皮紙の地図を、樫の木の杖で指し示しながら、根気よく説明を続けます。しかし、やはりユーノくんは、どうにも地理というものが苦手なご様子です。
「うーん…でも、おねえちゃん。この川って、船で渡ればすぐじゃないかな? なんで、こっちの国とこっちの国は、そんなに仲が悪いんですか?」
「それは、長い歴史の中で、色々なことがあったからですわ。そのお話は、また歴史の時間に、ゆっくりと…」
「じゃあ、この山って、鳥さんみたいに飛んで越えちゃえばいいじゃないかな!」
「……ユーノ様。普通の人間は、鳥さんのようには飛べませんのよ?」
そのあまりにも子供らしい、しかし魔術の天才ならではの発想に、エレナさんは、ふぅ、と深いため息をつきました。メイド服の胸元が、そのたびに豊かに揺れます。黒いレースの下着が肌に擦れる感触が、なんだか妙に意識されて、彼女の頬が微かに熱くなるのを感じました。
(いけませんわ、集中しないと…)
しかし、当のユーノくんは、もうすっかり飽きてしまったご様子で、椅子の背もたれにぐったりと寄りかかっています。その姿は、年相応の、可愛らしい子供そのものでした。
「…仕方ありませんわね。少し、休憩にしましょうか」
エレナさんがそう提案すると、ユーノ様の顔が、ぱあっと輝きました。
「ほんと!? やったあ! ねぇ、エレナおねえちゃん、ちょっと待ってて! 僕、とっておきのもの、持ってくるから!」
少年は、弾かれたように椅子から立ち上がると、ぱたぱたと可愛らしい足音を立てて、部屋から駆け出していきました。その背中を見送りながら、エレナさんは、やれやれと肩をすくめます。
(本当に、子供は気まぐれですわね…)
そんなことを考えていると、やがて、ユーノくんが、満面の笑みで戻ってきました。その小さな両手には、銀のトレイが、大切そうに抱えられております。
「お待たせ、エレナおねえちゃん!」
盆の上に置かれていたのは、見るからに食欲をそそる、つやつやとした飴色の焼き菓子と、大きなガラスの瓶。食堂にまで漂っていた甘い香りの正体は、この木苺のタルトだったのでしょう。こんがりと焼かれた生地の上には、粉砂糖が雪のように降りかかり、ミントの葉が愛らしく添えられています。その隣で、ルビーのように透き通った紅色の液体が、ランプの光をその内に閉じ込めて、きらきらと魅惑的に輝いておりました。
「まあ、なんて美味しそう。これを、ユーノ様がお作りになったのですか?」
エレナさんが感心したように尋ねると、ユーノくんは、えっへん、と得意げに小さな胸を張りました。
「うん! 料理長に少しだけ手伝ってもらったけど、僕が作ったんだ! こっちは、お庭で今朝採れた木苺のタルトだよ! それでね、こっちのお酒は、僕が、今年取れたお庭の葡萄で漬けた、特製の果実酒なんだ!」
少年は、少し照れたようにはにかみながら、紅色の液体が満たされたガラス瓶を指さします。その瓶は、ただのガラスではありません。よく見ると、表面には微細なルーン文字がびっしりと刻まれており、魔力を込めて醸造されたことが窺えます。おそらくは、酵母の働きを活性化させ、熟成を促進させるための古代魔術なのでしょう。
「僕は飲めないから、エレナおねえちゃんに、味見してほしくて…。だめ、かな?」
潤んだ大きな青い瞳で、上目遣いに見つめられて、断れる者など、この世にいるのでしょうか。そのあまりにも健気で、愛らしい申し出に、エレナさんの胸の奥が、きゅうう、と甘く疼きました。
(あぁだめよ、エレナ。アウレリウス様との約束を、もう忘れてしまったのですか…)
脳裏に、あのスラムのチンピラのような、しかしすべてを見透かすような師の呆れた顔が浮かびます。『絶対に、酒を飲むんじゃねえぞ』。その言葉が、耳の奥で木霊しました。しかし、目の前でキラキラと輝く期待に満ちた瞳を、裏切ることなど、到底できそうにありません。
なにより、そのルビー色の液体が放つ、芳醇で、蜜のように甘く、そして官能的な香りは、エレナさんの理性を、優しく、しかし確実に麻痺させていくのです。それは、ただの果実酒の香りではありませんでした。太陽の光をたっぷりと浴びた葡萄の甘酸っぱさの奥に、夜にだけ咲くという月光花のかすかな香りや、微量の妖精の蜜のような、人の心を惑わすための香りが、絶妙な配合で混ぜ込まれているかのようでした。
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