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1章 ギルドの受付嬢とお金持ち冒険者のお話
3:宿
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私は、かろうじて平静を保とうとしながらも、潤んでしまう瞳で彼を見つめ返しました。
「あ、あのぉ~オジさま?わ、わたし、け、結婚しているんですけど。。。」
私の声は、自分でも情けないほど上擦っていました。夫であるグンナルの顔が脳裏をよぎります。彼を裏切るなんて、そんなこと…。
すると、オジさまは無言のまま、ずしりと重そうな革袋を取り出し、その中身をカウンターの上に無造作にばらまきました。チャリン、チャリン、と硬質な音を立てて転がったのは、目も眩むような純金製の金貨の山でした。ギルドの受付嬢として長年働いてきた私は、優秀な冒険者の財布事情というものを、それなりに熟知しています。しかし、これほどの額の金貨を一度に目にするのは、初めてのことでした。グンナルの病気の治療費が、まるで底なし沼のように我が家の家計を圧迫し続けている今、目の前に広がるこの黄金の輝きは、まるで旱魃に苦しむ大地に降り注ぐ慈雨のように、抗いがたい魅力を持って私の目に映ったのです。
私が言葉を失い、ただ茫然と金貨の山を見つめていると、オジさまは表情一つ変えずに、さらにもう一つ、同じように金貨が詰まった革袋を取り出し、こともなげに机の上に置きました。先ほどのものと合わせれば、いったいどれほどの価値になるのでしょうか。想像もつきません。ギルドの受付には、相変わらず彼と私の二人きり。彼の射るような視線が、私の肌を突き刺すように感じられます。胸の高鳴りは、もはや抑えようもなく、まるで嵐の中の小舟のように激しく揺れ動いていました。 私は、深く、深くため息をつくと、震える手で受付カウンターの引き出しを開け、一本の古びた鍵を取り出しました。
「ふぅ…。承知、いたしましたです。 はい。この鍵をどうぞ。南東地区3番街にあるホテルの、324号室でございますです。 サービスは、夕刻以降となりますので、それまで、どうぞごゆっくりお待ちくださいませ。」
彼は、まるで獲物を仕留めた獣のように、にやりと口元を歪めて笑うと、有無を言わさぬ力強さで私の細い腰を抱き寄せ、その唇を奪いました。突然のことに、私は抵抗する間もありませんでした。誰かに見られたらどうしよう、という羞恥と恐怖が、一瞬にして私の思考を支配します。私は必死に彼を押し返そうとしましたが、まるで鋼鉄の檻に閉じ込められた小鳥のように、彼の逞しい腕の中で、まったく歯が立ちませんでした。
「ぁ゛、っ♡ん、っ♡…んぁ…♡♡」
彼の熱い舌が、私の口内を蹂躙し、敏感な粘膜という粘膜を執拗に味わい尽くします。頭が真っ白になり、思考が停止し、ただただ彼の与える熱に翻弄されるしかありませんでした。彼は、混乱し、抵抗する気力さえ失った私の全てを味わい尽くした後、まるで何事もなかったかのようにゆっくりと唇を離すと、満足げに踵を返し、重々しい音を立ててギルドを後にしたのでした。 残された私は、ただその場に立ち尽くすことしかできませんでした。膝がガクガクと震え、腰が砕けそうになるのを、必死でカウンターに手をついて支えました。頬は燃えるように熱く、唇にはまだ彼の生々しい感触が残っています。これから起こるであろう出来事を想像すると、期待と不安と、そしてほんの少しの罪悪感が入り混じった、甘美な痺れが全身を駆け巡るのでした。
***
夕闇がアストリナの石畳を紫紺に染め上げる頃、わたしは目的の宿の一室の前に立っていました。昼間の喧騒が嘘のように静まり返った裏通り。この「宵闇の宿」は、表向きはしがない旅籠ですが、その実、アストリナの裏社会に通じる者たちが密やかに利用する逢瀬の場所。ギルドの古株ならば誰もが知る、しかし誰も口にしない公然の秘密。その中でもこの三階の角部屋は、特に「訳あり」の客が好んで使う、そういった部屋です。
扉は重厚な黒鉄の木製で、表面には魔除けか、あるいはただの装飾か、奇妙な獣の顔が彫り込まれています。その獣の目が、まるで生きているかのように、わたしをじっと見つめているような気がして、背筋がぞくりとしました。昼間のギルドでの出来事が、まるで昨日のことのように思い出されます。あの金貨の山。グンナルの治療に必要な、莫大な費用。そして、オジさまの、有無を言わせぬ力強い唇の感触…。
わたしは、震える指先で、そっと扉を叩きました。コツ、コツ、と乾いた音が、やけに大きく響きます。心臓が、まるで警鐘のように激しく鼓動し、呼吸が浅くなるのを感じました。夫であるグンナルには、「古い友人と食事会で、少し遅くなるの」と、ありきたりな嘘をついて家を出てきました。優しい彼は、何も疑うことなく、「楽しんでおいで」と笑顔で送り出してくれたのです。その笑顔が、今になって鋭い棘のように胸に突き刺さります。でも、もう後戻りはできません。
『入れ』
低く、それでいて部屋全体に響き渡るような声。オジさまの声です。わたしは唾を飲み込み、意を決して重い扉を押し開けました。
「あ、あのぉ~オジさま?わ、わたし、け、結婚しているんですけど。。。」
私の声は、自分でも情けないほど上擦っていました。夫であるグンナルの顔が脳裏をよぎります。彼を裏切るなんて、そんなこと…。
すると、オジさまは無言のまま、ずしりと重そうな革袋を取り出し、その中身をカウンターの上に無造作にばらまきました。チャリン、チャリン、と硬質な音を立てて転がったのは、目も眩むような純金製の金貨の山でした。ギルドの受付嬢として長年働いてきた私は、優秀な冒険者の財布事情というものを、それなりに熟知しています。しかし、これほどの額の金貨を一度に目にするのは、初めてのことでした。グンナルの病気の治療費が、まるで底なし沼のように我が家の家計を圧迫し続けている今、目の前に広がるこの黄金の輝きは、まるで旱魃に苦しむ大地に降り注ぐ慈雨のように、抗いがたい魅力を持って私の目に映ったのです。
私が言葉を失い、ただ茫然と金貨の山を見つめていると、オジさまは表情一つ変えずに、さらにもう一つ、同じように金貨が詰まった革袋を取り出し、こともなげに机の上に置きました。先ほどのものと合わせれば、いったいどれほどの価値になるのでしょうか。想像もつきません。ギルドの受付には、相変わらず彼と私の二人きり。彼の射るような視線が、私の肌を突き刺すように感じられます。胸の高鳴りは、もはや抑えようもなく、まるで嵐の中の小舟のように激しく揺れ動いていました。 私は、深く、深くため息をつくと、震える手で受付カウンターの引き出しを開け、一本の古びた鍵を取り出しました。
「ふぅ…。承知、いたしましたです。 はい。この鍵をどうぞ。南東地区3番街にあるホテルの、324号室でございますです。 サービスは、夕刻以降となりますので、それまで、どうぞごゆっくりお待ちくださいませ。」
彼は、まるで獲物を仕留めた獣のように、にやりと口元を歪めて笑うと、有無を言わさぬ力強さで私の細い腰を抱き寄せ、その唇を奪いました。突然のことに、私は抵抗する間もありませんでした。誰かに見られたらどうしよう、という羞恥と恐怖が、一瞬にして私の思考を支配します。私は必死に彼を押し返そうとしましたが、まるで鋼鉄の檻に閉じ込められた小鳥のように、彼の逞しい腕の中で、まったく歯が立ちませんでした。
「ぁ゛、っ♡ん、っ♡…んぁ…♡♡」
彼の熱い舌が、私の口内を蹂躙し、敏感な粘膜という粘膜を執拗に味わい尽くします。頭が真っ白になり、思考が停止し、ただただ彼の与える熱に翻弄されるしかありませんでした。彼は、混乱し、抵抗する気力さえ失った私の全てを味わい尽くした後、まるで何事もなかったかのようにゆっくりと唇を離すと、満足げに踵を返し、重々しい音を立ててギルドを後にしたのでした。 残された私は、ただその場に立ち尽くすことしかできませんでした。膝がガクガクと震え、腰が砕けそうになるのを、必死でカウンターに手をついて支えました。頬は燃えるように熱く、唇にはまだ彼の生々しい感触が残っています。これから起こるであろう出来事を想像すると、期待と不安と、そしてほんの少しの罪悪感が入り混じった、甘美な痺れが全身を駆け巡るのでした。
***
夕闇がアストリナの石畳を紫紺に染め上げる頃、わたしは目的の宿の一室の前に立っていました。昼間の喧騒が嘘のように静まり返った裏通り。この「宵闇の宿」は、表向きはしがない旅籠ですが、その実、アストリナの裏社会に通じる者たちが密やかに利用する逢瀬の場所。ギルドの古株ならば誰もが知る、しかし誰も口にしない公然の秘密。その中でもこの三階の角部屋は、特に「訳あり」の客が好んで使う、そういった部屋です。
扉は重厚な黒鉄の木製で、表面には魔除けか、あるいはただの装飾か、奇妙な獣の顔が彫り込まれています。その獣の目が、まるで生きているかのように、わたしをじっと見つめているような気がして、背筋がぞくりとしました。昼間のギルドでの出来事が、まるで昨日のことのように思い出されます。あの金貨の山。グンナルの治療に必要な、莫大な費用。そして、オジさまの、有無を言わせぬ力強い唇の感触…。
わたしは、震える指先で、そっと扉を叩きました。コツ、コツ、と乾いた音が、やけに大きく響きます。心臓が、まるで警鐘のように激しく鼓動し、呼吸が浅くなるのを感じました。夫であるグンナルには、「古い友人と食事会で、少し遅くなるの」と、ありきたりな嘘をついて家を出てきました。優しい彼は、何も疑うことなく、「楽しんでおいで」と笑顔で送り出してくれたのです。その笑顔が、今になって鋭い棘のように胸に突き刺さります。でも、もう後戻りはできません。
『入れ』
低く、それでいて部屋全体に響き渡るような声。オジさまの声です。わたしは唾を飲み込み、意を決して重い扉を押し開けました。
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