剣と魔法の世界で冒険はそこそこにして色々なお仕事の女の子達がはちゃめちゃにえっちなことになるお話

アレ

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1章 ギルドの受付嬢とお金持ち冒険者のお話

2:窓口

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不意にギルドの扉が、まるで古の巨人が溜息をつくような重々しい音を立てて開かれました。蝶番の軋む音は、長年風雨に晒されたオークの大樹が風に揺れる音にも似て、このアストリナの喧騒に慣れた耳にもどこか異質な響きを届けます。扉の向こうから差し込む日の光が、舞い上がる埃を黄金色の粒子のようにきらめかせ、一瞬、時間が止まったかのような錯覚に陥りました。

現れたのは、この辺境の港湾都市アストリナではまず見かけることのない、異国情緒あふれる不思議な意匠の衣服を身にまとった男性でした。その生地は、まるで月光を練り込んだかのように滑らかで、どのように作ったのか、折り目がほとんどありません。彼が纏う雰囲気は、歴戦の傭兵とも、高位の魔術師とも異なる、どこか捉えどころのない、それでいて圧倒的な存在感を放っていました。その男性が、ゆっくりとした、しかし迷いのない足取りで、私が立つ受付カウンターへと歩み寄ってきます。

この方は、モブ=オジさん。ええ、わたしは親しみを込めて、オジさま、とお呼びしています。

彼がこのアストリナの街に姿を現したのは、もう二年ほど前のことです。初めてギルドにいらっしゃった時は、まるで言葉の通じない異邦の旅人が迷い込んだかのようで、周囲はただただ困惑するばかりでした。でも、オジさまは驚くべき速さで私たちの言葉を、そしてこの世界の常識を吸収していきました。その学習能力の高さは、まるで古代図書館の賢者のようです。
最近では、ようやく打ち解けて、色々なことをお話ししてれるようになりました。なんでも、オジさまの故郷とは全く異なる理を持つ「いせかいてんせー」なる現象によって、この世界へとやってきたのだそうです。その影響なのか、他の冒険者の方々には到底真似のできない、まるで不可思議な力をお持ちだと、そう言っていました。正直、私にはよくわかりません。ただ一つ確かなことは、オジさまは筆舌に尽くしがたいほど、とてつもなく強い、ということです!

そのオジさまが受付に近づくにつれ、先ほどまで賑わっていたギルド内の他のスタッフたちが、まるで潮が引くように、そそくさと持ち場を離れていくのが分かりました。あれほど騒がしかった酒場の喧騒も、いつの間にか水を打ったように静まり返っています。あの人も、いつの間にか姿が見えなくなっていました。どうやら、皆、オジさまの纏う独特の雰囲気と、その底知れない力に対して、畏怖の念を抱いているようです。でも、私は違うんですよ。私は、オジさまのその強さも、ミステリアスなところも、全部含めて尊敬しています。だから、私はいつものように、とびっきりの笑顔を彼に向けました。 
「オジさま!おかえりなさいませ!今回もご無事にご帰還されて、わたし、本当に安心いたしましたですよ。」 
『ああ。問題ない。』
オジさまは短くそう答えると、その深い色の瞳でじっと私を見つめ、ほんの少しだけ目を細めました。あの瞳、吸い込まれそうなほど深淵で、見つめられると、まるで全身の血が沸騰するみたいに、ぞくぞくとした痺れるような感覚が背筋を駆け上るんです。どうしてなのでしょうか?まるで、魂の一番奥深いところを見透かされているような、そんな不思議な感覚に襲われるのです。

気が付けば、広大なギルドの受付には、オジさまと私の二人だけになっていました。先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返り、壁に掛けられた巨大な熊の剥製の影が、床に長く伸びています。心臓が、まるで早鐘のようにドキドキと高鳴っているのが、自分でもよく分かりました。
『依頼されていたワイバーンの討伐は完了した。東の農場からの証文はここに。報酬は、既に現地で受け取っている。』 
オジさまはそう言って、古びた羊皮紙の巻物をカウンターの上にこともなげに置きました。そこには、ワイバーンの爪で押印された証文と、依頼主である農場主の震える文字で書かれた感謝の言葉が記されていました。

「はい!確かに拝受いたしましたです。流石はオジさまですね!あの凶暴なワイバーンを、いとも簡単に…。 それで、次のご依頼はどうされますか?ちょうど今朝方、南の鉱山からダイヤモンドスネークの討伐依頼が舞い込んでますですよ!あ、でも、オジさまにとっては、少々物足りない相手かもしれません…」
ダイヤモンドスネーク。その名の通り、全身がダイヤモンドのような硬い鱗で覆われ、その牙には強力な麻痺毒を持つとされる、非常に危険な魔物です。並の冒険者パーティーでは、まず太刀打ちできないでしょう。

『受けよう。少しばかり休息を取ってから出発するとしよう。』 
オジさまは少しの間、何かを考えるように沈黙した後、再び口を開きました。
『。。。』 
そして、ほんの少し間を置いて、低い、それでいて有無を言わせぬ響きを持った声で、こう続けたのです。 
『今日だけの、特別な宿の手配を頼む。』

「っ!」 
その言葉を聞いた瞬間、私の心臓が大きく跳ね上がりました。特別な宿。それは、私たちギルドの受付嬢と、一部の特別な顧客との間で交わされる、暗黙の了解を伴う言葉。全身の血が逆流するような感覚と共に、顔がカッと熱くなるのを感じました。 私は、努めて平静を装いながら、しかし震える声を抑えきれずに、慎重に言葉を選んで問い返しました。
「『どのような、サービスを、ご希望されますでしょうか?』」
『『最高のサービスを。』』 

オジさまの声は、まるで古井戸の底から響いてくるように低く、それでいて私の鼓膜を甘く震わせました。 
「『お食事の、ご希望を、承りますです。』」
『『長い耳のウサギを。』』 
「っ!」 長い耳のウサギ。それは、私たち耳長族の女性を指す隠語。オジさまのその言葉は、まるで熱い鉄の杭のように、私の胸の奥深くに突き刺さりました。
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