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6章 メイドとして潜入したら当然の如くぐちょぐちょえっちになってしまうお話
105:紅
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若きご主人様であるユーノくんとの、甘くも激しい秘密の儀式から三日後のことです。
小雪さんに身も心も、そして魔力の最後の一滴までこってりと絞られたユーノ様は、翌日こそ真っ赤な顔でもじもじと恥ずかしがっていましたが、その純粋な魂はすぐに立ち直り、今ではすっかり元の、いえ、以前にも増して懐いた子犬のように、小雪さんの後をついて回るようになっていました。
今日も今日とて、朝から領主邸が誇る広大な農園を一日がかりで案内してくれたのです。ガラス張りの温室に満ちる、南国から取り寄せられたという花々の甘い香り。蜜蜂の羽音が優しく響く果樹園。そして、夕日にきらきらと輝く小麦畑。その一つ一つを、ユーノ様は目を輝かせながら、少し得意げに説明してくれました。その生き生きとした横顔を見ていると、小雪さんの胸の奥も、ふわりと温かくなるのを感じます。
そして今、小雪さんはユーノ様の私室で、二人きりのお茶の時間を楽しんでいました。テーブルの上には、厨房の料理人が腕によりをかけて作ったであろう、色とりどりの焼き菓子が宝石のように並んでいます。銀食器の放つ冷たい輝きと、温かい紅茶から立ち上るベルガモットの爽やかな香りが、午後の穏やかな空気を満たしていました。
「あのね、おねえちゃん。この前の失敗を踏まえて、隣の実験室であれこれしたら、これができたんだ!」
そう言ってユーノ様が、ことり、とテーブルの上に置いたのは、小さなガラス瓶でした。
その瞬間、穏やかだった部屋の空気が、ぴりりと微かに緊張します。瓶の中から漏れ出す、うっすらとした魔術の気配。言うまでもありません。ポーションです。
瓶に貼られたラベルには、彼の拙い文字で【ちゃんとげんきになるぽーしょん】と書かれていました。どうやらユーノ様は、まったく懲りていないご様子です。あの壮絶な魔力暴走事件からわずか三日で、次の謎ポーション合成を完了させていたのでした。
その液体は、前回のものとは違い、ルビーのような美しい紅色をしています。瓶を軽く揺らすと、中の液体はとろりとしていて、まるで上質な蜂蜜のようです。
小雪さんは、思わず眉根を寄せました。
「ユーノ様…そのお薬を、どうするおつもりですか?」
その声には、隠しきれない警戒の色が滲みます。
「この前の失敗を踏まえて、効果の出方をちゃんと調整したんだ! 大丈夫だよ!」
ユーノくんは胸を張ります。
「前のは、古代語の解読が不十分で、触媒の活性化手順を間違えちゃったみたいなんだ。だから生命力だけが暴走しちゃったけど、今回は「月光草の露」を安定剤に使って、魔力の循環効率を高める方に重点を置いたから! これで、おじいちゃんもきっと元気になるはず!」
そう言って、彼は自分が飲むために瓶の栓に手をかけます。
「当然、僕が飲んで確かめ…あっ!」
その手がポーションに届くより早く、小雪さんのしなやかな指が、ひらりとそれを奪い去っていました。
「ユーノ様。あのような失敗を繰り返されては、こちらも顎が持ちません。それに、領主様のご子息であるユーノ様が万が一のことになれば、わたくしの命がありません」
凛とした声で言い放つと、小雪さんは真剣な眼差しで緑色の液体を見つめます。
「今回の毒見は、このわたくしが行います。」
そう言って、彼女はコルクの栓を抜き、瓶の縁にそっと唇を寄せました。そして、中の液体を、ちびり、と警戒しながら舌に乗せます。
その瞬間、小雪さんの黒い瞳が、驚きに見開かれました。
「お、おいしい…」
想像していた薬草の苦味や、魔術的な薬品特有の金属臭は一切ありません。それどころか、まるで妖精が作った花の蜜のような、濃厚で上品な甘さが舌の上でとろけたのです。鼻に抜けるのは、若草と果実が混じり合った、どこまでも爽やかな香り。
「でしょ~。おねぇちゃん。僕、お料理は得意なんだよ! ポーション作りだって、材料の組み合わせは料理と一緒だからね! 今回のポーションも味付けには自信があ」
「おかわりっ!」
「ぇ?」
ユーノくんの言葉を遮って、小雪さんは空になった小瓶をずいっと突き出しました。その頬は興奮で微かに上気し、瞳は潤んで輝いています。
「ユーノ様! おかわり!」
「あ、あの、毒見っていうのは、普通一口だけ…」
「おかわりっ!」
「そ、そのポーションは薬効成分を凝縮してあるから、薄めて使うもので…」
「おかわりっ!」
「は、はいぃ!」
ユーノ様の制止も耳に入らないほど、その味は小雪さんを虜にしてしまいました。故郷の里でも、これほどまでに美味な飲み物を口にしたことはありません。
あまりの美味しさに、我を忘れた小雪さんは、ユーノ様が用意していた【ちゃんとげんきになるぽーしょん】の原液を、立て続けに五瓶も飲み干してしまったのです。
げふぅ、と小さく満足げな吐息を漏らし、小雪さんはぽっこりと膨れた自分のお腹を優しく撫でました。
「あ、あの、おねぇちゃん。本当に大丈夫? 体調は…?」
心配そうに尋ねるユーノ様に、小雪さんはふふん、と得意げに胸を反らせます。
「私は鍛えているので、この程度でどうこうなることはないのです。ごちそうさまでした」
「へ、へ~、すごいや! おねぇちゃん流石だね!」
尊敬の眼差しを向けるユーノ様に、すっかり満腹で得意満面になった小雪さんは、優雅にお辞儀をすると、彼の部屋を後にしました。
「おかしいな~。前のお薬より、何十倍も強力なはずなのに…。おねえちゃんって、本当にすごいんだなぁ…」
背後で響いたユーノ様のつぶやきは、幸福な満腹感に満たされた小雪さんの耳には、もう届いていませんでした。
小雪さんに身も心も、そして魔力の最後の一滴までこってりと絞られたユーノ様は、翌日こそ真っ赤な顔でもじもじと恥ずかしがっていましたが、その純粋な魂はすぐに立ち直り、今ではすっかり元の、いえ、以前にも増して懐いた子犬のように、小雪さんの後をついて回るようになっていました。
今日も今日とて、朝から領主邸が誇る広大な農園を一日がかりで案内してくれたのです。ガラス張りの温室に満ちる、南国から取り寄せられたという花々の甘い香り。蜜蜂の羽音が優しく響く果樹園。そして、夕日にきらきらと輝く小麦畑。その一つ一つを、ユーノ様は目を輝かせながら、少し得意げに説明してくれました。その生き生きとした横顔を見ていると、小雪さんの胸の奥も、ふわりと温かくなるのを感じます。
そして今、小雪さんはユーノ様の私室で、二人きりのお茶の時間を楽しんでいました。テーブルの上には、厨房の料理人が腕によりをかけて作ったであろう、色とりどりの焼き菓子が宝石のように並んでいます。銀食器の放つ冷たい輝きと、温かい紅茶から立ち上るベルガモットの爽やかな香りが、午後の穏やかな空気を満たしていました。
「あのね、おねえちゃん。この前の失敗を踏まえて、隣の実験室であれこれしたら、これができたんだ!」
そう言ってユーノ様が、ことり、とテーブルの上に置いたのは、小さなガラス瓶でした。
その瞬間、穏やかだった部屋の空気が、ぴりりと微かに緊張します。瓶の中から漏れ出す、うっすらとした魔術の気配。言うまでもありません。ポーションです。
瓶に貼られたラベルには、彼の拙い文字で【ちゃんとげんきになるぽーしょん】と書かれていました。どうやらユーノ様は、まったく懲りていないご様子です。あの壮絶な魔力暴走事件からわずか三日で、次の謎ポーション合成を完了させていたのでした。
その液体は、前回のものとは違い、ルビーのような美しい紅色をしています。瓶を軽く揺らすと、中の液体はとろりとしていて、まるで上質な蜂蜜のようです。
小雪さんは、思わず眉根を寄せました。
「ユーノ様…そのお薬を、どうするおつもりですか?」
その声には、隠しきれない警戒の色が滲みます。
「この前の失敗を踏まえて、効果の出方をちゃんと調整したんだ! 大丈夫だよ!」
ユーノくんは胸を張ります。
「前のは、古代語の解読が不十分で、触媒の活性化手順を間違えちゃったみたいなんだ。だから生命力だけが暴走しちゃったけど、今回は「月光草の露」を安定剤に使って、魔力の循環効率を高める方に重点を置いたから! これで、おじいちゃんもきっと元気になるはず!」
そう言って、彼は自分が飲むために瓶の栓に手をかけます。
「当然、僕が飲んで確かめ…あっ!」
その手がポーションに届くより早く、小雪さんのしなやかな指が、ひらりとそれを奪い去っていました。
「ユーノ様。あのような失敗を繰り返されては、こちらも顎が持ちません。それに、領主様のご子息であるユーノ様が万が一のことになれば、わたくしの命がありません」
凛とした声で言い放つと、小雪さんは真剣な眼差しで緑色の液体を見つめます。
「今回の毒見は、このわたくしが行います。」
そう言って、彼女はコルクの栓を抜き、瓶の縁にそっと唇を寄せました。そして、中の液体を、ちびり、と警戒しながら舌に乗せます。
その瞬間、小雪さんの黒い瞳が、驚きに見開かれました。
「お、おいしい…」
想像していた薬草の苦味や、魔術的な薬品特有の金属臭は一切ありません。それどころか、まるで妖精が作った花の蜜のような、濃厚で上品な甘さが舌の上でとろけたのです。鼻に抜けるのは、若草と果実が混じり合った、どこまでも爽やかな香り。
「でしょ~。おねぇちゃん。僕、お料理は得意なんだよ! ポーション作りだって、材料の組み合わせは料理と一緒だからね! 今回のポーションも味付けには自信があ」
「おかわりっ!」
「ぇ?」
ユーノくんの言葉を遮って、小雪さんは空になった小瓶をずいっと突き出しました。その頬は興奮で微かに上気し、瞳は潤んで輝いています。
「ユーノ様! おかわり!」
「あ、あの、毒見っていうのは、普通一口だけ…」
「おかわりっ!」
「そ、そのポーションは薬効成分を凝縮してあるから、薄めて使うもので…」
「おかわりっ!」
「は、はいぃ!」
ユーノ様の制止も耳に入らないほど、その味は小雪さんを虜にしてしまいました。故郷の里でも、これほどまでに美味な飲み物を口にしたことはありません。
あまりの美味しさに、我を忘れた小雪さんは、ユーノ様が用意していた【ちゃんとげんきになるぽーしょん】の原液を、立て続けに五瓶も飲み干してしまったのです。
げふぅ、と小さく満足げな吐息を漏らし、小雪さんはぽっこりと膨れた自分のお腹を優しく撫でました。
「あ、あの、おねぇちゃん。本当に大丈夫? 体調は…?」
心配そうに尋ねるユーノ様に、小雪さんはふふん、と得意げに胸を反らせます。
「私は鍛えているので、この程度でどうこうなることはないのです。ごちそうさまでした」
「へ、へ~、すごいや! おねぇちゃん流石だね!」
尊敬の眼差しを向けるユーノ様に、すっかり満腹で得意満面になった小雪さんは、優雅にお辞儀をすると、彼の部屋を後にしました。
「おかしいな~。前のお薬より、何十倍も強力なはずなのに…。おねえちゃんって、本当にすごいんだなぁ…」
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