4 / 101
第4話:氷の王都と灰色の食事
しおりを挟む
白い都、アスガルド。その威容を前にした私の心は、畏怖と絶望で塗りつぶされていた。馬車は巨大な城門をくぐり、整然と区画された大通りを進んでいく。
道行く人々の服装は質素だが、仕立てが良い。街には活気があるように見える。しかし、誰もが皆一様に無表情だった。すれ違う人々の顔に、笑顔というものが見当たらない。まるで感情をどこかに置き忘れてきたかのような、冷たい空気が街全体を支配していた。
やがて馬車は、都の中心にそびえるヴァイスフレア城の城門を通過した。城内は、外観の壮麗さとは裏腹に、華美な装飾が一切ない実用的な造りだった。磨き上げられた石の床を、役人や騎士たちが足早に行き交う。彼らは私を乗せた馬車に一瞥をくれるだけで、興味などないというようにすぐに視線を外した。
ここが、私の終の棲家になるかもしれない場所。
馬車が停まったのは、城の正面玄関ではなく、少し離れた小さな通用口の前だった。人質とは、つまりそういう扱いなのだ。私は騎士に促されるまま馬車を降り、冷たい石の階段を上った。
てっきり、すぐにでも皇帝陛下の前に突き出されるものと身構えていた。しかし、私を待っていたのは玉座の間の豪華な扉ではなく、小さな応接室と、一人の文官だけだった。
「リンドブルム王国のアリア王女殿下ですね。長旅、ご苦労様でした」
年の頃は四十代だろうか。眼鏡の奥の瞳は温度がなく、事務的な口調で彼は言った。
「私は宰相補佐のベルクと申します。陛下は政務でお忙しい。本日の謁見はございません」
その言葉は、私の存在など皇帝の関心の外だという事実を、容赦なく突きつけてきた。氷の皇帝は、敵国から送られてきた人質の顔を見ることさえしないらしい。やはり、噂通りの冷酷な人物なのだろう。
「あなたの住まいは、西の離宮『月影の宮』にご用意しております。世話係の者を一人つけますので、何かあればその者に。ただし、許可なく離宮から出ることは禁じます」
事務的な説明はそれだけだった。質問を差し挟む隙も与えられず、私は年配の侍女に引き渡された。侍女はマルタと名乗ったが、それきり口を開くことはなかった。彼女もまた、この都の住人らしく感情の読めない顔をしている。
マルタに連れられて、私は長い廊下を歩いた。王城の奥へ進むほど、人影はまばらになっていく。やがてたどり着いたのは、渡り廊下で本城と繋がった、古びた小さな離宮だった。蔦の絡まる石壁に、人気のない静けさ。忘れられた場所、という言葉がしっくりくる。
「こちらが、アリア様のお部屋になります」
案内された部屋は、驚くほど殺風景だった。掃除は行き届いているが、置いてある家具はどれも古く、傷が目立つ。王女の部屋というよりは、上級な使用人の部屋といった方が近い。窓の外には手入れのされていない小さな庭が見え、その向こうには高い塀がそびえていた。ここが私の牢獄なのだと、改めて実感させられた。
荷解きをするほどの荷物もない。私がトランクから母の形見の小箱を取り出すと、マルタが訝しげな視線を向けたが、何も言わずに部屋を出て行った。
一人きりになった部屋で、私はベッドに腰を下ろす。長い旅の疲れが、どっと体にのしかかってきた。同時に、空腹を覚える。そういえば、最後にあの硬いパンを食べてから、ずいぶん時間が経っていた。
ちょうどその時、控えめなノックと共にマルタが盆を運んできた。帝国での、最初の食事だ。
「お食事をお持ちしました」
盆がテーブルに置かれた瞬間、私は言葉を失った。
そこにあったのは、灰色のスープがなみなみと注がれた器。茹でただけと分かる、皮付きの芋が二つ。そして、旅の間ずっと食べてきたものと同じ、硬そうな黒パンが一斤。
これが、大国の王宮で出される食事なのだろうか。彩りというものが一切なく、食欲をそそる香りの一つもしない。それは、食事というより飼料に近い何かのように見えた。
リンドブルムの食事も決して豊かではなかった。しかし、ここまで生命感のない食事は初めてだ。
それでも、空腹には勝てない。私はおそるおそる、スプーンを手に取った。まずはスープから。器に鼻を近づけても、湯気が立つだけで何の匂いもしない。
一口、口に含む。
「……っ」
思わず、眉をひそめた。
味が、ない。
いや、違う。正確には、味がないのではない。素材が持つはずの味が、すべて消え失せているのだ。野菜を煮込んだはずなのに、その甘みも香りもどこにもない。ただ、ぬるま湯に得体の知れない繊維質が浮いているだけ。塩気さえ、ほとんど感じなかった。
次に、芋をフォークで刺す。ほろりと崩れるかと思いきや、妙な弾力があって上手く刺さらない。なんとか一口大に切り分けて口に運ぶと、水っぽく、土の味さえない虚無が口の中に広がった。
最後の希望だったパンも、やはり石のように硬くパサパサで、飲み込むのに水が必要だった。
人生で、最も味気なく、不味い食事。
私はスプーンを置いた。これ以上、喉を通らなかった。胃が受け付けようとしない。殺されるよりも前に、この食事で心が死んでしまう。そんな確信があった。
豊かなはずの帝国で、なぜこんなものが出されるのだろう。罰なのだろうか。人質である私への、見せしめなのだろうか。
いや、恐らく違う。あの文官も、侍女のマルタも、皆同じような覇気のない顔をしていた。もしかしたら、この国の人間は皆、ずっとこんな食事をしているのではないか。
そう思い至った時、恐怖よりも先に、深い疑問が湧き上がった。
こんな食事で、人は本当に生きていけるのだろうか。働く気力や、誰かを愛する気持ちが湧いてくるのだろうか。この国の冷たい空気は、この食事と無関係ではない気がした。
「……もう、限界」
ぽつりと呟いた声は、自分でも驚くほどか細く、震えていた。
このままでは駄目だ。このままこの灰色の食事を受け入れていたら、私の心は本当に空っぽになってしまう。色も、味も、生きる喜びも、何もかもを忘れてしまう。
絶望の淵で、私は無意識に胸元に手を当てた。服の下に隠した、母の形見の小箱の感触。
その硬い木の感触が、私に思い出させてくれた。
――『この小さな種の中にはね、アリア。未来が詰まっているのよ』
そうだ。私には、未来がある。私の手の中には、たくさんの美味しい記憶と、それを実現させるための種があるのだ。
誰かが与えてくれるのを待つ必要はない。与えてくれないのなら、自分で作ればいい。
この寂れた離宮で。この灰色の世界で。
私のための、生きるための食卓を。
そう決意した瞬間、私の背筋がすっと伸びた。瞳の奥に、小さな、しかし確かな光が灯る。
まずは、厨房を借りなければ。あの無口な侍女に、どう頼めばいいだろうか。いや、どんな手を使っても、必ず借りてみせる。
私は残された食事の盆を部屋の隅に押しやると、窓の外を見た。夕闇が迫る空は、まるで今日のスープのような灰色に染まっていた。
明日、この灰色の世界に、私が最初の色を灯すのだ。
温かいスープの、黄金色を。
私の戦いは、ここから始まる。氷の帝国で生き抜くための、たった一人の静かな革命が、今、幕を開けようとしていた。
道行く人々の服装は質素だが、仕立てが良い。街には活気があるように見える。しかし、誰もが皆一様に無表情だった。すれ違う人々の顔に、笑顔というものが見当たらない。まるで感情をどこかに置き忘れてきたかのような、冷たい空気が街全体を支配していた。
やがて馬車は、都の中心にそびえるヴァイスフレア城の城門を通過した。城内は、外観の壮麗さとは裏腹に、華美な装飾が一切ない実用的な造りだった。磨き上げられた石の床を、役人や騎士たちが足早に行き交う。彼らは私を乗せた馬車に一瞥をくれるだけで、興味などないというようにすぐに視線を外した。
ここが、私の終の棲家になるかもしれない場所。
馬車が停まったのは、城の正面玄関ではなく、少し離れた小さな通用口の前だった。人質とは、つまりそういう扱いなのだ。私は騎士に促されるまま馬車を降り、冷たい石の階段を上った。
てっきり、すぐにでも皇帝陛下の前に突き出されるものと身構えていた。しかし、私を待っていたのは玉座の間の豪華な扉ではなく、小さな応接室と、一人の文官だけだった。
「リンドブルム王国のアリア王女殿下ですね。長旅、ご苦労様でした」
年の頃は四十代だろうか。眼鏡の奥の瞳は温度がなく、事務的な口調で彼は言った。
「私は宰相補佐のベルクと申します。陛下は政務でお忙しい。本日の謁見はございません」
その言葉は、私の存在など皇帝の関心の外だという事実を、容赦なく突きつけてきた。氷の皇帝は、敵国から送られてきた人質の顔を見ることさえしないらしい。やはり、噂通りの冷酷な人物なのだろう。
「あなたの住まいは、西の離宮『月影の宮』にご用意しております。世話係の者を一人つけますので、何かあればその者に。ただし、許可なく離宮から出ることは禁じます」
事務的な説明はそれだけだった。質問を差し挟む隙も与えられず、私は年配の侍女に引き渡された。侍女はマルタと名乗ったが、それきり口を開くことはなかった。彼女もまた、この都の住人らしく感情の読めない顔をしている。
マルタに連れられて、私は長い廊下を歩いた。王城の奥へ進むほど、人影はまばらになっていく。やがてたどり着いたのは、渡り廊下で本城と繋がった、古びた小さな離宮だった。蔦の絡まる石壁に、人気のない静けさ。忘れられた場所、という言葉がしっくりくる。
「こちらが、アリア様のお部屋になります」
案内された部屋は、驚くほど殺風景だった。掃除は行き届いているが、置いてある家具はどれも古く、傷が目立つ。王女の部屋というよりは、上級な使用人の部屋といった方が近い。窓の外には手入れのされていない小さな庭が見え、その向こうには高い塀がそびえていた。ここが私の牢獄なのだと、改めて実感させられた。
荷解きをするほどの荷物もない。私がトランクから母の形見の小箱を取り出すと、マルタが訝しげな視線を向けたが、何も言わずに部屋を出て行った。
一人きりになった部屋で、私はベッドに腰を下ろす。長い旅の疲れが、どっと体にのしかかってきた。同時に、空腹を覚える。そういえば、最後にあの硬いパンを食べてから、ずいぶん時間が経っていた。
ちょうどその時、控えめなノックと共にマルタが盆を運んできた。帝国での、最初の食事だ。
「お食事をお持ちしました」
盆がテーブルに置かれた瞬間、私は言葉を失った。
そこにあったのは、灰色のスープがなみなみと注がれた器。茹でただけと分かる、皮付きの芋が二つ。そして、旅の間ずっと食べてきたものと同じ、硬そうな黒パンが一斤。
これが、大国の王宮で出される食事なのだろうか。彩りというものが一切なく、食欲をそそる香りの一つもしない。それは、食事というより飼料に近い何かのように見えた。
リンドブルムの食事も決して豊かではなかった。しかし、ここまで生命感のない食事は初めてだ。
それでも、空腹には勝てない。私はおそるおそる、スプーンを手に取った。まずはスープから。器に鼻を近づけても、湯気が立つだけで何の匂いもしない。
一口、口に含む。
「……っ」
思わず、眉をひそめた。
味が、ない。
いや、違う。正確には、味がないのではない。素材が持つはずの味が、すべて消え失せているのだ。野菜を煮込んだはずなのに、その甘みも香りもどこにもない。ただ、ぬるま湯に得体の知れない繊維質が浮いているだけ。塩気さえ、ほとんど感じなかった。
次に、芋をフォークで刺す。ほろりと崩れるかと思いきや、妙な弾力があって上手く刺さらない。なんとか一口大に切り分けて口に運ぶと、水っぽく、土の味さえない虚無が口の中に広がった。
最後の希望だったパンも、やはり石のように硬くパサパサで、飲み込むのに水が必要だった。
人生で、最も味気なく、不味い食事。
私はスプーンを置いた。これ以上、喉を通らなかった。胃が受け付けようとしない。殺されるよりも前に、この食事で心が死んでしまう。そんな確信があった。
豊かなはずの帝国で、なぜこんなものが出されるのだろう。罰なのだろうか。人質である私への、見せしめなのだろうか。
いや、恐らく違う。あの文官も、侍女のマルタも、皆同じような覇気のない顔をしていた。もしかしたら、この国の人間は皆、ずっとこんな食事をしているのではないか。
そう思い至った時、恐怖よりも先に、深い疑問が湧き上がった。
こんな食事で、人は本当に生きていけるのだろうか。働く気力や、誰かを愛する気持ちが湧いてくるのだろうか。この国の冷たい空気は、この食事と無関係ではない気がした。
「……もう、限界」
ぽつりと呟いた声は、自分でも驚くほどか細く、震えていた。
このままでは駄目だ。このままこの灰色の食事を受け入れていたら、私の心は本当に空っぽになってしまう。色も、味も、生きる喜びも、何もかもを忘れてしまう。
絶望の淵で、私は無意識に胸元に手を当てた。服の下に隠した、母の形見の小箱の感触。
その硬い木の感触が、私に思い出させてくれた。
――『この小さな種の中にはね、アリア。未来が詰まっているのよ』
そうだ。私には、未来がある。私の手の中には、たくさんの美味しい記憶と、それを実現させるための種があるのだ。
誰かが与えてくれるのを待つ必要はない。与えてくれないのなら、自分で作ればいい。
この寂れた離宮で。この灰色の世界で。
私のための、生きるための食卓を。
そう決意した瞬間、私の背筋がすっと伸びた。瞳の奥に、小さな、しかし確かな光が灯る。
まずは、厨房を借りなければ。あの無口な侍女に、どう頼めばいいだろうか。いや、どんな手を使っても、必ず借りてみせる。
私は残された食事の盆を部屋の隅に押しやると、窓の外を見た。夕闇が迫る空は、まるで今日のスープのような灰色に染まっていた。
明日、この灰色の世界に、私が最初の色を灯すのだ。
温かいスープの、黄金色を。
私の戦いは、ここから始まる。氷の帝国で生き抜くための、たった一人の静かな革命が、今、幕を開けようとしていた。
538
あなたにおすすめの小説
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~
サイコちゃん
恋愛
妹に裏切られたアナベルは聖女として娼館で競りにかけられていた。聖女に恨みがある男達は殺気立った様子で競り続ける。そんな中、謎の美青年が驚くべき値段でアナベルを身請けした。彼はアナベルをハーレムへ迎えると言い、船に乗せて隣国へと運んだ。そこで出会ったのは妹が執心してた隣国の王子――彼がこのハーレムの主人だったのだ。外交と称して、隣国の王子を落とそうとやってきた妹は彼の寵姫となった姉を見て、気も狂わんばかりに怒り散らす……それを見詰める王子の目に軽蔑の色が浮かんでいることに気付かぬまま――
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる