毎日無料10連ガチャスキルでスローライフのはずが、排出率0.0001%の【建国】スキルを引いてしまい、美少女魔王やポンコツ勇者が集まってきた

夏見ナイ

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第64話 勇者、出撃す

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リリアの広範囲殲滅魔法によって、ゼノン王国軍は開戦わずかにして、その戦力の三分の一を失った。残った兵士たちは、目の前で繰り広げられた地獄絵図に完全に戦意を喪失し、ただ怯えて立ち尽くすばかりだった。

「ひ、ひぃぃ……。化け物だ……。あいつは、悪魔だ……」
「逃げろ! こんな奴らに勝てるわけがない!」

軍の統率は完全に崩壊し、後方の兵士たちの中には、武器を捨てて逃げ出そうとする者まで現れ始めた。

「う、うろたえるな! 立て直せ! 陣形を立て直さんか!」
アルフォンス侯爵が必死に叫ぶが、その声は兵士たちの恐怖の前に、もはや何の力も持たなかった。

その、混乱の極みにある敵軍を、城壁の上から見下ろしていたアリアが、大きく息を吸い込んだ。
「ユウト様!」
「……ああ。行ってこい」

俺の許可を得て、アリアは満面の笑みを浮かべた。
「はいっ! お任せください!」

彼女は、城壁から、躊躇なく身を躍らせた。
高さ十メートル以上。常人ならば、ただでは済まない高さだ。
しかし、アリアは美しい放物線を描いて軽やかに着地すると、その衝撃を完全に殺し、大地を蹴った。
そのスピードは、もはや人間のそれではない。まるで一陣の突風のように、一直線に敵軍の本陣――アルフォンス侯爵がいる場所目掛けて、突き進んでいく。

「な、なんだ、あの小娘は!?」
「止めろ! 何としても食い止めろ!」

侯爵の護衛をしていた騎士たちが、慌てて槍を構える。
だが、アリアの動きは、彼らの動体視力を遥かに凌駕していた。
彼女は、迫りくる槍の穂先を、最小限の動きでひらりひらりと躱していく。それはまるで、嵐の中を舞う蝶のようだった。

そして、あっという間に騎士たちの懐に潜り込むと、背負っていた大剣を、鞘に収めたまま、横薙ぎに一閃した。
その一撃は、騎士たちの鎧に直接触れることすらなかった。
しかし、大剣が巻き起こした衝撃波だけで、屈強な騎士たちが、まるで木の葉のように宙を舞い、地面に叩きつけられたのだ。

「……嘘だろ」

その光景を見ていたゼノン王国の一兵士が、絶望に染まった声で呟いた。
「鞘に収めたままだぞ……? あの黄金の髪……碧い瞳……まさか、あの伝説は本当だったのか……?」

勇者アリア。
数年前に魔王を討伐し、世界を救ったとされる伝説の英雄。多くの者は、それをただのおとぎ話だと思っていた。しかし、今、目の前で繰り広げられる圧倒的なまでの力は、その伝説が紛れもない事実であることを、雄弁に物語っていた。

「ま、待て! 話せば分かる! 私はゼノン王国の侯爵だぞ! 貴様に危害を加えれば、どうなるか……」

ついに、アルフォンス侯爵の眼前にたどり着いたアリア。
侯爵は、命乞いとも脅迫ともつかない、情けない言葉を喚き散らす。
しかし、アリアはそんな彼の言葉など、一切聞いていなかった。

彼女は、にっこりと、天使のように無垢な笑顔を浮かべると、大剣の柄を、軽く、本当に軽く、侯爵の兜にコツン、と当てた。

「えいっ」

その、可愛らしい掛け声とは裏腹に。
ゴシャッ、と鈍い音が響き、アルフォンス侯爵の意識は、そこで完全に途絶えた。
馬上で白目を剥き、崩れ落ちていく総大将。

その光景は、ゼノン王国軍の兵士たちの心を、完全に、そして決定的に、折った。
最強の魔法使いに、最強の剣士。
このアストレアという国は、自分たちが手を出していい相手ではなかった。
それを、彼らは骨の髄まで理解した。

アリアは、気絶した侯爵を小脇に抱えると、何事もなかったかのように、鼻歌交じりで城門へと引き返してくる。
残されたゼノン王国軍は、もはや軍隊ではなかった。ただの、烏合の衆だった。
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