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第72話 影のスペシャリスト
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「さあ、来い……! スパイでも、忍者でも、アサシンでもいい! とにかく、隠密行動のプロフェッショナルを……!」
玉座の間で、俺はこれまでにないほど具体的な願いを込めて、ガチャのスクリーンを睨みつけていた。
アストレアの命運は、この10連で排出される「人材」にかかっている。防衛兵器やアイテムではない、「人」を狙って引くガチャは、これが初めてだった。
俺の後ろでは、フィーネ、リリア、アリアが固唾を飲んで見守っている。
意を決して、ボタンを押す。
光の玉が十個、スクリーンに踊る。
白、白、銀、白、白……。
平凡な光が続く。俺の心臓が、嫌な音を立て始める。
人なんて、そう簡単に出るものではないのかもしれない。
そう、諦めかけたその時。
八番目に現れた玉が、鮮やかな金色の輝きを放った。
「来た……!」
俺は、祈るように結果の表示を見つめた。
そして、金色の玉が弾け、召喚の光が人の形を成していく。
光が収まると、そこに立っていたのは、小柄で、しなやかな体つきの青年だった。
黒い軽装の革鎧に身を包み、その背中には二本の短剣が交差して差されている。そして、何よりも特徴的なのは、彼の頭から生えた、ぴんと張った犬のような耳と、腰から伸びるふさふさとした尻尾だった。
彼は、獣人族。それも、その俊敏そうな雰囲気から、犬か狼の系統だろう。
青年は、鋭い、しかし冷静な目で周囲の状況を瞬時に把握すると、俺の姿を認め、音もなく片膝をついた。その動きには、一切の無駄がない。
「我が名はカゲツ。影に生きる者。――王よ、何なりとご命令を」
その声は静かだったが、確かな自信に満ちていた。
【SR:隠密行動が得意な獣人斥候 カゲツが仲間になりました】
脳内に響くシステムメッセージ。
俺は、心の中でガッツポーズをした。まさに、俺が求めていた通りの人材だった。
「カゲツ、と。顔を上げてくれ」
俺がそう言うと、カゲツは滑らかな動作で立ち上がった。
「早速で悪いんだが、君に任せたい任務がある。極めて危険な任務だ」
俺は、ゼノン王国との現状、そして情報収集の必要性を、彼に手短に説明した。
俺の話を黙って聞いていたカゲツは、全てを理解すると、静かに頷いた。
「承知いたしました。ゼノン王国の王都に潜入し、軍の動向、そして『神聖教団』なる組織の情報を探って参ります」
彼は、こともなげにそう言った。まるで、隣町に買い物にでも行くかのような口調で。
「か、簡単におっしゃいますけど、すごく危ないんですよ!? 敵の国のど真ん中なんですから!」
アリアが、心配そうに声を上げる。
「ご心配には及びません、勇者殿」
カゲツは、アリアの方を向くと、ふっとその姿を揺らがせた。
次の瞬間、彼の姿は、まるで煙のようにかき消えていた。
「「「!?」」」
俺たちが驚いて周囲を見回すと、カゲツはいつの間にか、リリアの背後に音もなく立っていた。リリアでさえ、その気配を全く察知できなかったようだった。
「……これが、我が技『影潜み』。影から影へと渡り、気配を完全に断つ。これがあれば、いかなる城塞であろうと、潜入は容易いことです」
カゲツは、再び静かな声で言った。
その神業のようなスキルに、俺たちは言葉を失った。
「では、王よ。早速、任務に取り掛からせていただきます。三日、いえ、五日もあれば、何らかの情報をお持ちできるかと」
彼はそう言うと、再び深く一礼し、部屋の隅の影へと足を踏み入れた。
そして、その姿は、影の中に溶け込むように、完全に消え去った。
後に残されたのは、俺たち四人の、驚愕と、そして大きな期待だけだった。
斥候カゲツ。その影のような男がもたらす情報が、この不気味な静寂を打ち破る、最初の光となるだろう。
俺は、彼の無事を祈りながら、吉報を待つことにした。
玉座の間で、俺はこれまでにないほど具体的な願いを込めて、ガチャのスクリーンを睨みつけていた。
アストレアの命運は、この10連で排出される「人材」にかかっている。防衛兵器やアイテムではない、「人」を狙って引くガチャは、これが初めてだった。
俺の後ろでは、フィーネ、リリア、アリアが固唾を飲んで見守っている。
意を決して、ボタンを押す。
光の玉が十個、スクリーンに踊る。
白、白、銀、白、白……。
平凡な光が続く。俺の心臓が、嫌な音を立て始める。
人なんて、そう簡単に出るものではないのかもしれない。
そう、諦めかけたその時。
八番目に現れた玉が、鮮やかな金色の輝きを放った。
「来た……!」
俺は、祈るように結果の表示を見つめた。
そして、金色の玉が弾け、召喚の光が人の形を成していく。
光が収まると、そこに立っていたのは、小柄で、しなやかな体つきの青年だった。
黒い軽装の革鎧に身を包み、その背中には二本の短剣が交差して差されている。そして、何よりも特徴的なのは、彼の頭から生えた、ぴんと張った犬のような耳と、腰から伸びるふさふさとした尻尾だった。
彼は、獣人族。それも、その俊敏そうな雰囲気から、犬か狼の系統だろう。
青年は、鋭い、しかし冷静な目で周囲の状況を瞬時に把握すると、俺の姿を認め、音もなく片膝をついた。その動きには、一切の無駄がない。
「我が名はカゲツ。影に生きる者。――王よ、何なりとご命令を」
その声は静かだったが、確かな自信に満ちていた。
【SR:隠密行動が得意な獣人斥候 カゲツが仲間になりました】
脳内に響くシステムメッセージ。
俺は、心の中でガッツポーズをした。まさに、俺が求めていた通りの人材だった。
「カゲツ、と。顔を上げてくれ」
俺がそう言うと、カゲツは滑らかな動作で立ち上がった。
「早速で悪いんだが、君に任せたい任務がある。極めて危険な任務だ」
俺は、ゼノン王国との現状、そして情報収集の必要性を、彼に手短に説明した。
俺の話を黙って聞いていたカゲツは、全てを理解すると、静かに頷いた。
「承知いたしました。ゼノン王国の王都に潜入し、軍の動向、そして『神聖教団』なる組織の情報を探って参ります」
彼は、こともなげにそう言った。まるで、隣町に買い物にでも行くかのような口調で。
「か、簡単におっしゃいますけど、すごく危ないんですよ!? 敵の国のど真ん中なんですから!」
アリアが、心配そうに声を上げる。
「ご心配には及びません、勇者殿」
カゲツは、アリアの方を向くと、ふっとその姿を揺らがせた。
次の瞬間、彼の姿は、まるで煙のようにかき消えていた。
「「「!?」」」
俺たちが驚いて周囲を見回すと、カゲツはいつの間にか、リリアの背後に音もなく立っていた。リリアでさえ、その気配を全く察知できなかったようだった。
「……これが、我が技『影潜み』。影から影へと渡り、気配を完全に断つ。これがあれば、いかなる城塞であろうと、潜入は容易いことです」
カゲツは、再び静かな声で言った。
その神業のようなスキルに、俺たちは言葉を失った。
「では、王よ。早速、任務に取り掛からせていただきます。三日、いえ、五日もあれば、何らかの情報をお持ちできるかと」
彼はそう言うと、再び深く一礼し、部屋の隅の影へと足を踏み入れた。
そして、その姿は、影の中に溶け込むように、完全に消え去った。
後に残されたのは、俺たち四人の、驚愕と、そして大きな期待だけだった。
斥候カゲツ。その影のような男がもたらす情報が、この不気味な静寂を打ち破る、最初の光となるだろう。
俺は、彼の無事を祈りながら、吉報を待つことにした。
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