毎日無料10連ガチャスキルでスローライフのはずが、排出率0.0001%の【建国】スキルを引いてしまい、美少女魔王やポンコツ勇者が集まってきた

夏見ナイ

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第85話 逃げるか、戦うか

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「――以上が、俺たちが今、直面している全ての真実だ」

執務室に集まった幹部たち――フィーネ、リリア、アリア、ドルガン、そしてカゲツ――を前に、俺は古文書に書かれていた全てを、包み隠さず話した。
神々のゲーム盤、世界の「リセット」、そして、俺の命とスキルを狙う神聖教団の真の目的。
あまりにも荒唐無稽で、絶望的な話。誰もが、言葉を失っていた。

重い沈黙を破ったのは、ドルガンだった。
彼は、長い白髭を扱きながら、静かに、しかし力強く言った。
「……つまり、だ。王様の命が、この国、いや、この世界の命運そのものだ、というわけじゃな」
「……ああ。そういうことになる」
「ふん。話は、むしろ単純になったわい」

ドルガンは、その瞳に、職人としての、そして戦士としての炎を燃やした。
「守るべきものが、はっきりした。王様の命と、この国。それ以外に、何がある。神だろうが、教団だろうが、ワシの打った武具を、この国の民を、なめてもらっては困るわい」

彼の言葉に、カゲツも静かに頷いた。
「我が影は、王をお守りするために存在します。いかなる闇が迫ろうとも、この身を賭して、道を切り開いてみせましょう」

仲間たちの、揺るぎない覚悟。
その言葉が、俺の心を強く支えてくれた。

だが、俺には、まだ、彼らに伝えなければならないことがあった。
最後の、選択肢だ。

「……みんな、聞いてくれ」
俺は、一度、深く息を吸い込んだ。
「戦うだけが、道じゃない。逃げる、という選択肢も、まだ残されている」

俺の言葉に、皆が息を呑む。
「神聖教団の狙いは、俺一人だ。俺が、この国を捨てて、一人で、どこか遠くへ姿をくらませば……教団が、アストレアに固執する理由はなくなるかもしれない。そうすれば、この国は、皆は、戦火に巻き込まれずに済む」

それは、俺が、この国の王としてではなく、一人の人間として、考え抜いた、一つの可能性だった。
俺一人の犠牲で、この国が、百を超える国民の命が救われるなら。
それもまた、王としての、一つの責任の取り方ではないのか。

「……それが、俺にできる、最後の……」
俺が、そう言いかけた、その時だった。

バシン!

乾いた音が、執務室に響き渡った。
俺の頬に、熱い痛みが走る。
俺を、平手打ちしたのは、リリアだった。
彼女の紅い瞳には、怒りと、そして、悲しみが浮かんでいた。

「……ふざけるな」
リリアが、震える声で言った。
「貴様は、まだ、分かっていないのか。この期に及んで、まだ、全てを一人で背負うつもりか」
彼女は、俺の胸ぐらを掴み、その顔をぐいと近づけた。

「我らが、なぜ、貴様に従うと思っている? なぜ、この国のために戦おうとしていると思っている? それは、貴様が、ユウトだからだ! 国民のために立ち上がり、魔族である我らを受け入れ、勇者と魔王を和解させた、お人好しで、馬鹿で、どうしようもない、王だからだ!」

「貴様のいないアストレアなど、もはや、我らにとって、何の意味もない! それは、魂の抜け殻だ! それが、なぜ分からん!」

リリアの、魂からの叫びだった。
その言葉に、アリアも、フィーネも、力強く頷いている。

俺は、呆然と、彼女たちの顔を見つめた。
俺は、間違っていた。
逃げることなど、初めから、選択肢として存在しなかったのだ。
俺がアストレアを捨てれば、アストレアは、アストレアでなくなる。
俺たちがこれまで築き上げてきた、この温かい場所は、その瞬間に、消えてなくなるのだ。

「……ごめん」
俺の口から、自然と、謝罪の言葉がこぼれた。
「俺が、馬鹿だった。みんなの気持ちを、分かっていなかった」

俺は、頬の痛みを感じながら、顔を上げた。
もう、迷いはない。
俺の瞳には、この国を、この仲間たちを、絶対に守り抜くという、最後の決意が、燃え上がっていた。

「戦おう。みんなで」

俺がそう言うと、皆が、待ってましたとばかりに、力強く、そして温かく、微笑んだ。
アストレアの運命は、決まった。
逃げも、隠れもしない。
俺たちは、この地で、神々の悪意に、そして、世界の運命そのものに、真っ向から立ち向かう。
そのための、最後の戦いが、始まろうとしていた。
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