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第93話 共闘、そして道
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「――どうやら、人形遊びも、そろそろ終わりのようだな」
天空神殿の最上階。
純白の玉座に座る、仮面をつけた大司教が、眼下の戦況を見下ろし、退屈そうに呟いた。
彼の傍らには、三人の男女が、恭しく控えている。彼らこそ、神聖教団が誇る、最高幹部【三天将】だった。
「お言葉ですが、大司教猊下。いささか、遊びすぎではございませんか?」
三天将の一人、筋骨隆々の巨漢の男――【剛力のヴォルフ】が、獰猛な笑みを浮かべて言った。
「あの小娘ども、なかなか楽しませてくれる。そろそろ、我らが出向いても、よろしいのでは?」
「焦るでない、ヴォルフ。獲物は、弱らせてから狩るのが、定石というもの」
そう言ったのは、妖艶な雰囲気をまとった女性――【幻惑のセレーネ】。彼女は、くすくすと笑いながら、自分の指先を見つめている。
「特に、あの勇者と魔王。なかなかに、美しい魂の輝きをしているわ。私のコレクションに、ぜひとも加えたいものね」
そして、三人目。ローブを目深にかぶり、その表情を窺わせない小柄な人物――【沈黙のノクス】は、何も言わず、ただそこに佇んでいるだけだった。
大司教は、玉座からゆっくりと立ち上がった。
「まあ、よい。前座は、もう十分だろう。――行け、三天将よ。あの忌まわしき混沌の象徴に、神の裁きを下すのだ。ただし、創世の遺物の器だけは、決して傷つけるな。あれは、我らが神判を執行するための、聖なる供物なのだから」
「「「御意に」」」
三天将は、深く一礼すると、その姿を光と共に、戦場へと転移させた。
その頃、地上の戦場では、アストレア連合軍が、天使の軍勢を圧倒していた。
だが、その優勢が、突如として覆る。
凄まじい衝撃波と共に、三つの影が、天から舞い降りた。
一つは、アリアの前に。
一つは、リリアの前に。
そして、一つは、連合軍の本陣、俺がいる場所の、目と鼻の先に。
「……っ!?」
剛力のヴォルフと名乗った巨漢は、アリアと対峙するなり、その巨大な戦斧を、大地に叩きつけた。大地が割れ、衝撃波だけで、周囲の兵士たちが吹き飛ばされる。その力は、アリアのそれとは質の違う、純粋な破壊の暴力だった。
「来たな、勇者! その聖剣、この俺が、叩き折ってくれるわ!」
幻惑のセレーネは、リリアの前に、妖しく微笑みながら現れた。
「あらあら、可愛い魔王様。あなたのその絶望、きっと、極上の味でしょうねぇ」
彼女の周囲の空間が歪み、リリアの放つ魔法が、虚空へと吸い込まれていく。幻術と、空間操作の使い手か。
そして、俺たちの本陣に現れたのは、沈黙のノクス。
彼は、何も言わず、ただそこに立っているだけ。しかし、その足元から、黒い影が、まるで生き物のように伸び、兵士たちの命を、音もなく刈り取っていく。即死系の、呪術か。
「ぐあっ!」
「な、なんだ、こいつら!」
連合軍の兵士たちが、次々と倒れていく。
三天将。その一人一人が、アリアやリリアに匹敵する、あるいは、それ以上の力を持っていた。
戦況は、一瞬にして、絶望的なものへと変わった。
「――ユウト!」
リリアの、悲鳴に近い声が聞こえた。
「こいつら、規格外だ! このままでは、全滅する!」
俺は、歯を食いしばった。
この状況を打開できるのは、もはや、あの二人しかいない。
俺は、通信用の魔道具に向かって叫んだ。
「リリア! アリア! 聞こえるか!」
「「っ!」」
「二人で、ヴォルフを叩け! セレーネとノクスは、俺たちが引き受ける!」
「なっ、無茶だ、ユウト! お前たちでは!」
「うるさい! 王の命令だ!」
俺は、リリアの反論を、一喝して黙らせた。
「いいか、これは賭けだ! だが、これしかない! 二人が力を合わせれば、必ず勝てる! 俺たちを、信じろ!」
俺の魂の叫びに、二人は、一瞬、戸惑った。
だが、すぐに、互いの顔を見合わせ、そして、力強く頷いた。
「……分かったわ、ユウト。必ず、仕留める」
「ユウト様! 絶対に、無事でいてくださいね!」
リリアが、空間転移の魔法を発動させた。彼女の姿が、光と共に消え、次の瞬間、アリアの隣に現れる。
魔王と、勇者。
アストレアが誇る最強の二人が、今、初めて、共通の敵を前に、並び立った。
「――さあ、覚悟しろ、脳筋勇者!」
「あなたこそ、足を引っ張らないでくださいね、ツンデレ魔王様!」
いつもの軽口を叩き合いながらも、二人の身から放たれる気配は、かつてないほどに、研ぎ澄まされていた。
聖剣の黄金の輝きと、深淵の闇の魔力が、互いに反発することなく、螺旋を描くように、一つに混じり合っていく。
共闘。
それは、神々のゲーム盤が、最も予期しなかった、最大のバグ。
世界の運命を賭けた戦いは、今、本当の意味で、その幕を開けた。
天空神殿の最上階。
純白の玉座に座る、仮面をつけた大司教が、眼下の戦況を見下ろし、退屈そうに呟いた。
彼の傍らには、三人の男女が、恭しく控えている。彼らこそ、神聖教団が誇る、最高幹部【三天将】だった。
「お言葉ですが、大司教猊下。いささか、遊びすぎではございませんか?」
三天将の一人、筋骨隆々の巨漢の男――【剛力のヴォルフ】が、獰猛な笑みを浮かべて言った。
「あの小娘ども、なかなか楽しませてくれる。そろそろ、我らが出向いても、よろしいのでは?」
「焦るでない、ヴォルフ。獲物は、弱らせてから狩るのが、定石というもの」
そう言ったのは、妖艶な雰囲気をまとった女性――【幻惑のセレーネ】。彼女は、くすくすと笑いながら、自分の指先を見つめている。
「特に、あの勇者と魔王。なかなかに、美しい魂の輝きをしているわ。私のコレクションに、ぜひとも加えたいものね」
そして、三人目。ローブを目深にかぶり、その表情を窺わせない小柄な人物――【沈黙のノクス】は、何も言わず、ただそこに佇んでいるだけだった。
大司教は、玉座からゆっくりと立ち上がった。
「まあ、よい。前座は、もう十分だろう。――行け、三天将よ。あの忌まわしき混沌の象徴に、神の裁きを下すのだ。ただし、創世の遺物の器だけは、決して傷つけるな。あれは、我らが神判を執行するための、聖なる供物なのだから」
「「「御意に」」」
三天将は、深く一礼すると、その姿を光と共に、戦場へと転移させた。
その頃、地上の戦場では、アストレア連合軍が、天使の軍勢を圧倒していた。
だが、その優勢が、突如として覆る。
凄まじい衝撃波と共に、三つの影が、天から舞い降りた。
一つは、アリアの前に。
一つは、リリアの前に。
そして、一つは、連合軍の本陣、俺がいる場所の、目と鼻の先に。
「……っ!?」
剛力のヴォルフと名乗った巨漢は、アリアと対峙するなり、その巨大な戦斧を、大地に叩きつけた。大地が割れ、衝撃波だけで、周囲の兵士たちが吹き飛ばされる。その力は、アリアのそれとは質の違う、純粋な破壊の暴力だった。
「来たな、勇者! その聖剣、この俺が、叩き折ってくれるわ!」
幻惑のセレーネは、リリアの前に、妖しく微笑みながら現れた。
「あらあら、可愛い魔王様。あなたのその絶望、きっと、極上の味でしょうねぇ」
彼女の周囲の空間が歪み、リリアの放つ魔法が、虚空へと吸い込まれていく。幻術と、空間操作の使い手か。
そして、俺たちの本陣に現れたのは、沈黙のノクス。
彼は、何も言わず、ただそこに立っているだけ。しかし、その足元から、黒い影が、まるで生き物のように伸び、兵士たちの命を、音もなく刈り取っていく。即死系の、呪術か。
「ぐあっ!」
「な、なんだ、こいつら!」
連合軍の兵士たちが、次々と倒れていく。
三天将。その一人一人が、アリアやリリアに匹敵する、あるいは、それ以上の力を持っていた。
戦況は、一瞬にして、絶望的なものへと変わった。
「――ユウト!」
リリアの、悲鳴に近い声が聞こえた。
「こいつら、規格外だ! このままでは、全滅する!」
俺は、歯を食いしばった。
この状況を打開できるのは、もはや、あの二人しかいない。
俺は、通信用の魔道具に向かって叫んだ。
「リリア! アリア! 聞こえるか!」
「「っ!」」
「二人で、ヴォルフを叩け! セレーネとノクスは、俺たちが引き受ける!」
「なっ、無茶だ、ユウト! お前たちでは!」
「うるさい! 王の命令だ!」
俺は、リリアの反論を、一喝して黙らせた。
「いいか、これは賭けだ! だが、これしかない! 二人が力を合わせれば、必ず勝てる! 俺たちを、信じろ!」
俺の魂の叫びに、二人は、一瞬、戸惑った。
だが、すぐに、互いの顔を見合わせ、そして、力強く頷いた。
「……分かったわ、ユウト。必ず、仕留める」
「ユウト様! 絶対に、無事でいてくださいね!」
リリアが、空間転移の魔法を発動させた。彼女の姿が、光と共に消え、次の瞬間、アリアの隣に現れる。
魔王と、勇者。
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「――さあ、覚悟しろ、脳筋勇者!」
「あなたこそ、足を引っ張らないでくださいね、ツンデレ魔王様!」
いつもの軽口を叩き合いながらも、二人の身から放たれる気配は、かつてないほどに、研ぎ澄まされていた。
聖剣の黄金の輝きと、深淵の闇の魔力が、互いに反発することなく、螺旋を描くように、一つに混じり合っていく。
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