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第88話 呪詛VS代償転嫁
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ヴラドが放った渾身の即死級呪詛『魂魄腐蝕の呪詛』。
それは紫黒色の光線となり、回避する間も与えず、俺の胸の中心へと正確に突き刺さった。
「リアム様!」
セレスティアの悲鳴が広場に響き渡った。
「リアム!」
「リアムさん!」
ルナリエルやアイリスたちも、血の気が引いた顔で俺の名前を叫ぶ。
王宮のバルコニーから見ていた国王やアルフォンス騎士団長も息を呑んだ。人類の最後の希望が、今、目の前であまりにも呆気なく潰え去ろうとしていた。
ヴラドは勝利を確信していた。
その顔には傲慢な笑みが浮かんでいる。
(終わりだ、小僧。我が究極の呪詛をその身に直接受けたのだ。お前の魂は一瞬で塵となり、その存在そのものがこの世から消え失せる。我が呪詛を無効化するなどというふざけた真似をしたこと、冥府で後悔するがいい)
呪いの光線は俺の身体を完全に貫通し、背後にある王宮の壁にまで到達していた。
勝敗は決した。誰もがそう思った。
だが。
俺は倒れなかった。
「……なんだ?」
俺は自分の胸を見下ろした。服には焦げたような穴が開いている。だが、その下の身体には傷一つない。
それどころか。
身体の奥から、経験したことのないほどの凄まじい力が湧き上がってくるのを感じていた。
ヴラドが放った凝縮された『死』の概念。それは俺のスキル【代償転嫁】にとって、過去最高のご馳走だったのだ。俺の体内で、そのおぞましい負のエネルギーは凄まじい勢いで純粋な正の魔力へと変換されていく。
まるで乾ききった大地に、恵みの豪雨が降り注ぐように。
俺の全身の細胞が歓喜の声を上げているかのようだった。
「……ふう」
俺は一つ息を吐いた。
そして、ゆっくりと顔を上げる。
俺は上空で固まっているヴラドに向かって、にやりと笑って見せた。
「……なんだ。その程度か?」
そのあまりにも平然とした、そして挑発的な一言。
その場にいた全ての者の時が止まった。
「……ば」
ヴラドの口から間抜けな声が漏れた。
「……馬鹿な」
彼の顔から勝利の笑みが急速に消え失せていく。代わりに宿ったのは、信じられないものを見たかのような純粋な、そして根源的な『驚愕』だった。
「な……ぜ……? なぜ生きている……? 我が『魂魄腐蝕の呪詛』をその身に受けて、なぜ無傷なのだ……!? ありえん! そんなこと、あってたまるか!」
彼は狂ったように叫んだ。
彼の数千年に及ぶ生の中で、彼の絶対的な力が全く通用しなかったのはこれが初めてだった。彼のプライドが、彼の常識が、目の前の現実によって粉々に砕かれていく。
俺はそんな彼をただ静かに見上げていた。
そして俺は、この戦いの本当の『勝ち方』を完全に理解した。
仲間たちはまだ何が起こったのかを完全には理解できていないようだった。ただ、俺が無事であるという事実に安堵の息を漏らしている。
「リアム様……! ご無事で……!」
「……心臓が止まるかと思ったわ……」
俺はそんな彼女たちに振り返ることなく、静かに、しかし力強く告げた。
「みんな、心配するな。……見ていてくれ。ここからが俺の戦いだ」
俺は再びヴラドに向き直った。
その顔にはもう何の感情も浮かべていない。ただ機械のように淡々と自分の役割をこなすだけだ。
俺は彼に向かって、挑発するように手招きをした。
「どうした、魔将ヴラド。その程度で終わりか? お前のその自慢の『呪い』とやらは、そんなものなのか?」
「……き、さま……!」
ヴラドの顔が屈辱に真っ赤に染まった。
俺の挑発は彼の冷静さを完全に奪い去った。
「……いいだろう。ならば思い知らせてやる! お前がどれほど愚かな相手に喧嘩を売ったのかを!」
彼はソフィアの重力魔法の束縛を力任せに引きちぎった。そして、その身に宿す全ての呪詛の力を解放し始めた。
「死ね! 死ね! 死ねぇぇぇぇぇっ!」
彼は狂ったように、ありとあらゆる呪いを俺一人に向かって乱射し始めた。
魂を凍らせる氷結の呪い。
肉体を内側から腐らせる腐敗の呪い。
精神を狂わせる幻惑の呪い。
無数の呪詛が色とりどりの光となって、嵐のように俺へと殺到する。
だが、その全てが俺の身体に届いた瞬間、シュンと音を立てて消滅していく。
そして、その度に俺の体内の魔力はさらに増大していく。
「なぜだ!? なぜ効かん!?」
ヴラドは叫びながら、さらに強力な呪いを放つ。
その光景は、もはや戦いではなかった。
それは底なしの器を持つ男に、無駄な水を注ぎ続ける滑稽な茶番だった。
仲間たちはその異様な光景をただ呆然と見つめていた。
自分たちが、あれほどまでに恐れていた呪詛の嵐がリアムという一人の男の前で完全に無力化されている。
「……すごい」
アイリスがぽつりと呟いた。
「リアムさん……。全部、吸い込んでる……」
「これこそが、リアムの真価……」
ルナリエルもまた、戦慄にも似た感動をその声に滲ませていた。
俺のスキル【代償転嫁】と、魔将ヴラドの『呪詛』。
その相性は最悪であり、そして最高だった。
俺は、この世界で唯一彼の力を完全に封じ込めることができる天敵だったのだ。
ヴラドはまだその事実に気づいていない。
彼はただ自分のプライドを守るためだけに、無駄な攻撃を繰り返し続けていた。
その姿はもはや魔王軍幹部の威厳はなく、ただ癇癪を起こした子供のようにさえ見えた。
それは紫黒色の光線となり、回避する間も与えず、俺の胸の中心へと正確に突き刺さった。
「リアム様!」
セレスティアの悲鳴が広場に響き渡った。
「リアム!」
「リアムさん!」
ルナリエルやアイリスたちも、血の気が引いた顔で俺の名前を叫ぶ。
王宮のバルコニーから見ていた国王やアルフォンス騎士団長も息を呑んだ。人類の最後の希望が、今、目の前であまりにも呆気なく潰え去ろうとしていた。
ヴラドは勝利を確信していた。
その顔には傲慢な笑みが浮かんでいる。
(終わりだ、小僧。我が究極の呪詛をその身に直接受けたのだ。お前の魂は一瞬で塵となり、その存在そのものがこの世から消え失せる。我が呪詛を無効化するなどというふざけた真似をしたこと、冥府で後悔するがいい)
呪いの光線は俺の身体を完全に貫通し、背後にある王宮の壁にまで到達していた。
勝敗は決した。誰もがそう思った。
だが。
俺は倒れなかった。
「……なんだ?」
俺は自分の胸を見下ろした。服には焦げたような穴が開いている。だが、その下の身体には傷一つない。
それどころか。
身体の奥から、経験したことのないほどの凄まじい力が湧き上がってくるのを感じていた。
ヴラドが放った凝縮された『死』の概念。それは俺のスキル【代償転嫁】にとって、過去最高のご馳走だったのだ。俺の体内で、そのおぞましい負のエネルギーは凄まじい勢いで純粋な正の魔力へと変換されていく。
まるで乾ききった大地に、恵みの豪雨が降り注ぐように。
俺の全身の細胞が歓喜の声を上げているかのようだった。
「……ふう」
俺は一つ息を吐いた。
そして、ゆっくりと顔を上げる。
俺は上空で固まっているヴラドに向かって、にやりと笑って見せた。
「……なんだ。その程度か?」
そのあまりにも平然とした、そして挑発的な一言。
その場にいた全ての者の時が止まった。
「……ば」
ヴラドの口から間抜けな声が漏れた。
「……馬鹿な」
彼の顔から勝利の笑みが急速に消え失せていく。代わりに宿ったのは、信じられないものを見たかのような純粋な、そして根源的な『驚愕』だった。
「な……ぜ……? なぜ生きている……? 我が『魂魄腐蝕の呪詛』をその身に受けて、なぜ無傷なのだ……!? ありえん! そんなこと、あってたまるか!」
彼は狂ったように叫んだ。
彼の数千年に及ぶ生の中で、彼の絶対的な力が全く通用しなかったのはこれが初めてだった。彼のプライドが、彼の常識が、目の前の現実によって粉々に砕かれていく。
俺はそんな彼をただ静かに見上げていた。
そして俺は、この戦いの本当の『勝ち方』を完全に理解した。
仲間たちはまだ何が起こったのかを完全には理解できていないようだった。ただ、俺が無事であるという事実に安堵の息を漏らしている。
「リアム様……! ご無事で……!」
「……心臓が止まるかと思ったわ……」
俺はそんな彼女たちに振り返ることなく、静かに、しかし力強く告げた。
「みんな、心配するな。……見ていてくれ。ここからが俺の戦いだ」
俺は再びヴラドに向き直った。
その顔にはもう何の感情も浮かべていない。ただ機械のように淡々と自分の役割をこなすだけだ。
俺は彼に向かって、挑発するように手招きをした。
「どうした、魔将ヴラド。その程度で終わりか? お前のその自慢の『呪い』とやらは、そんなものなのか?」
「……き、さま……!」
ヴラドの顔が屈辱に真っ赤に染まった。
俺の挑発は彼の冷静さを完全に奪い去った。
「……いいだろう。ならば思い知らせてやる! お前がどれほど愚かな相手に喧嘩を売ったのかを!」
彼はソフィアの重力魔法の束縛を力任せに引きちぎった。そして、その身に宿す全ての呪詛の力を解放し始めた。
「死ね! 死ね! 死ねぇぇぇぇぇっ!」
彼は狂ったように、ありとあらゆる呪いを俺一人に向かって乱射し始めた。
魂を凍らせる氷結の呪い。
肉体を内側から腐らせる腐敗の呪い。
精神を狂わせる幻惑の呪い。
無数の呪詛が色とりどりの光となって、嵐のように俺へと殺到する。
だが、その全てが俺の身体に届いた瞬間、シュンと音を立てて消滅していく。
そして、その度に俺の体内の魔力はさらに増大していく。
「なぜだ!? なぜ効かん!?」
ヴラドは叫びながら、さらに強力な呪いを放つ。
その光景は、もはや戦いではなかった。
それは底なしの器を持つ男に、無駄な水を注ぎ続ける滑稽な茶番だった。
仲間たちはその異様な光景をただ呆然と見つめていた。
自分たちが、あれほどまでに恐れていた呪詛の嵐がリアムという一人の男の前で完全に無力化されている。
「……すごい」
アイリスがぽつりと呟いた。
「リアムさん……。全部、吸い込んでる……」
「これこそが、リアムの真価……」
ルナリエルもまた、戦慄にも似た感動をその声に滲ませていた。
俺のスキル【代償転嫁】と、魔将ヴラドの『呪詛』。
その相性は最悪であり、そして最高だった。
俺は、この世界で唯一彼の力を完全に封じ込めることができる天敵だったのだ。
ヴラドはまだその事実に気づいていない。
彼はただ自分のプライドを守るためだけに、無駄な攻撃を繰り返し続けていた。
その姿はもはや魔王軍幹部の威厳はなく、ただ癇癪を起こした子供のようにさえ見えた。
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